有限会社 三九出版 - ☆特別企画☆  東日本大震災


















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                     二冊の本
                           小野 紘一(北海道札幌市)

 手元に二冊の本があります。一冊は仙台の地元紙河北新報社発行『巨大津波が襲った』と題する特別報道写真集で,3.11から28日後の発刊です。かつてデスクを並べていた仙台在住の元同僚から,見舞はがきに対し丁寧な礼状を添えて送ってきたものです。あれから1年,テレビは津波映像を繰り返し放映してその恐怖を訴えています。しかしこの写真集には津波による悲惨さと併せ元気な笑顔もありほっとします。
 もう一冊は私が神戸に住んでいた17年前,お付き合いのあった神戸新聞社社会部記者から頂いた『神戸新聞の100日』です。平成7年1月17日未明,下から強烈に突き上げる激しい揺れに私は起こされました。阪神淡路大震災の発生でした。生存者がいるかもしれない倒壊した家屋やビルの間を縫い,水道水が吹き上げガス臭の漂う惨状を目の当たりにし,徒歩で1時間半,何とか出社したのを鮮明に記憶しています。
 この本は,本社ビルが壊滅的被害を受け新聞発行が不可能と思われたが提携関係各社の協力のもと1日の休刊もなく発行した,1345名の神戸新聞社社員の戦いのドキュメントです。更に救助に当たった消防,警察,自衛隊等々関係機関の活動は,ジャーナリストの目線で的確な,時に被災者への思いを込めた記録であり,東日本大震災のそれと重なります。 改めてこの本を読み返し,二つの大震災の惨状が胸に迫ってきます。
 この二冊はテレビ報道と並んで,いやそれ以上に震災の実態を訴える力があり,時間の経過とともに一層強く脳裏に刻まれる思いがします。活字や写真は映像とは違った記憶に残る強さを私は感じます。 いつも目の届く手元に保管しようと思っています。
 二度と逢えない悲しい永久の別れが沢山あった中で,『よかったね!』と言えるいい話もありました。生後0歳の赤ちゃんが一家を救ったのです。私の家の隣のご夫人からのお話です。仙台に嫁いだ姪御さんが,二人目のお子さんの出産で札幌の実家に帰っていました。3月12日に仙台に戻るはずが,家は津波で流出し,一人仙台に残っていたご主人は? 何と妻子を迎えに札幌に来ていたのです。
 私は岩手県出身の歌人で北海道とも縁が深い石川啄木が好きです。震災後1年,故郷を離れ,家族バラバラで暮らす方々に思いを馳せ,1日も早く故郷に戻られることを念じ,啄木の歌を添えて北国からのメッセージといたします。
 ふるさとの 山に向かひて言うことなし ふるさとの山は ありがたきかな

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