有限会社 三九出版 - 家康の人生訓のもと,今を大事に


















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                 家康の人生訓のもと,今を大事に

                           大野 寛機(愛知県名古屋市)

  「古希」というと,融通性のない「頑固ジジイ」のイメージであったが,いつの間にか自分がなっていた。振り返ってみると学生時代の4年間は長かったが,定年退職後,気楽な仕事となった60代の10年は速く感じた。そして毎日家にいるこれからの10年はもっと速いに違いない。
 1941年生まれの我々の時代は戦後の復興が進み,そして高度経済成長を迎え、人々はバラ色の未来に向かって,死に物狂いで働いた。かつて夢見た生活が手に入り,カラーテレビ,自動車,エアコンが当たり前の生活となった。だが,それでも人々は満足しなかった。バブルがやってくると,ゴルフの会員権やリゾートマンションを夢見た。そして,バブル崩壊だ。人々は将来が不安だと言いながら,蓄えもできずにいる。いつになったら,理想の生活に手が届くというのか。更には3.11の震災時には日本沈没になりかけた。不安が日本を覆い尽くしている。
 日本の自殺者数は14年連続3万人超といわれ,世界でも最悪レベルの自殺大国だそうだ。我々の子供時代と比べ物質的には豊かな社会になっているが,精神的には欠陥社会のようだ。こんな状況に対しての意見が雑誌に載っていた。自殺者のなかにはうつ病患者が多いというが,うつ病の場合,周囲の人が「がんばれよ」と声をかけると,その言葉が病人を傷つけ,自殺することもある。このような場合,希望を持つことは逆効果になり,むしろ希望を持たないほうがいい。それから金持ちになりたいと思っても,普通のサラリーマンは一生懸命努力しても金持ちにはなれない。それは収入が少ないからだ。だから金持ちになろうといった希望を持たずに,貧しくてもいいから,未来のことをあくせく考えるより,現在の生活を大事にしようということである。
 60歳の定年時には,控えめに生きようとスローライフを目指していたが,懲りもせず,株に手を出し,損をしたりしている。欲は簡単には抜け切らない自分である。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し……勝つことばかりを知って,負くることを知らざれば,害,其の身に到る……及ばざるは過ぎたるに優れり」。家康の人生訓をもとに,70代は多くを欲張ることなく,今を大事にする。頑固ジジイでなく,孫と戯れる好々爺になろうと思っている

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