有限会社 三九出版

ハーモニカの魅力
小宮　孝志（千葉県千葉市）

ハーモニカは，あらゆる楽器の中でいちばん魅力的であると信じている。だれでも自分の選んだ楽器のことはそう考えているようだが，ハーモニカは特にそうであると確信している。
第一に音色が素晴らしい。奏者の個性がそのまま出てくる。小型だが，クロマチックハーモニカは，フルートやオーボエと同じ音域で3オクターブある。
それにとても健康的である。腹式呼吸で演奏するので，メタボになりにくい。唾液を多量に必要とするので，逆流性胃炎もすぐに治る。規則正しい練習が必要なので，規則正しい生活が不可欠である。したがって長寿が保証されることとなる。また，演奏中は精神統一が要求されるので，雑念や妄想は禁物である。また，人前に於いて演奏するには暗譜するまで何回も練習するので，脳の活性化が自然に行われることから，老人性痴呆症の予防になる。
さらに重要なことは，練習環境である。日本には，崎元譲先生をはじめ優れた指導者がおられる。教則本，練習曲集なども揃っている。ハーモニカのためのオリジナル曲も作曲されている。レパートリーも豊富に選べる。ピアノ伴奏で共演できる。仲間との合奏も楽しめる。他の楽器と同じように，音楽が学べ，そして楽しめる。
このようなたくさんの魅力に引かれて，私はあるハーモニカクラブに入り，練習を重ねている。この私たちの仲間の年齢層は，十代から八十代までが揃っている。交流がきわめて健全な仲間たちである。そして，独りでプカブカ自己満足の演奏には限界があるが，ここには目標が無限に存在する。私は，この良き環境で学びながら，ある書物に「音の世界の基礎は，正しい速度を規準するメトロノームに支配されている。しかし何故それが重要視されるか？それは人体の中枢を成す心臓の鼓動のようにその個々の曲のテーマの脈搏に他ならないから」（即ち判断の究極の規準なのであるということ）とあることを心根にもって，若い時に得られなかった夢を追い求めている。