有限会社 三九出版 - 何事も実践しないと分からない


















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☆〔新作●現代ことわざ〕

            何事も実践しないと分からない

            武田 喜治(東京都杉並区)

私は四国遍路を続けている。長い道のりを歩くことは,どうしても自分と向き合うことが多くなり,その結果普段気づかない多くのことに気づかされる。とりわけ「何事も実践しないと分からない」ということに気づかされた。実践していろいろなことが分かるのだから,人生とはとにかく実践することが大事であるというのである。
「歩き遍路」は連日25㎞前後の長い道のりをお大師様と「同行二人」,つまり専ら一人で歩くことになる。夕方遍路宿に到着する頃にはへとへとになって身体的疲労は極限に達している。早速風呂に入って汗と疲れを落とせば,気分は爽快,夕食はお代わりを三杯いただくこともある。体内に滞っている悪い要素を体外にはきだし,新鮮な要素を取り入れる。自然治癒力が回復する。そしてそれは精神的な面にも通じる。雄大な自然の中を一人で歩いていると小さなことが気にならなくなる。イライラやクヨクヨが消えていく。「歩く」ことが体の新陳代謝を促し,人間に本来備わっている元気を回復するのに如何に役立つかを示している。そして「歩く」ことはまさに実践することであり,何かを思いついたり,知恵が生まれたりする。思いがけずにヒントやアイデアが浮かんだりする。
我々は頭の中で考えるばかりで,ああすればこうなる,こうすればああなると考えて,結局行動に移さないことが多い。そうしているうちに時間は足早に過ぎ去って行き,後になってあの時さっさと行動しておけばよかったと後悔することが少なくない。しかし,後悔しても始まらない。時間は一方的に過ぎ去ってしまうばかりだから。
たとえ頭の中で良い考えが浮かんだとしても,実行に移さなければ何にもならない。何事につけても重要なことは実践すること。そうすれば当初できないと思っていたことが案外簡単にできたり,反対に簡単にできると考えていたことが予想外の困難にぶつかったりする。いずれにしても実践してはじめていろいろなことが分かるのだから,とにかく動き出すことが何よりも重要になってくる。頭に浮かんだことは,あれこれ思案することなしにさっさと実践に移すと,心は思いのほか軽くなるものである。
「歩き遍路」を体験したことによって「何事も実践しないと分からない」と素早く実践する知恵を身に付けることができたことは,何よりもありがたいことであった。
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