有限会社 三九出版 - 「竹の子医者」の日々その15


















トップ  >  本物語  >  「竹の子医者」の日々その15
☆《自由広場》 

          「竹の子医者」の日々その15 

             星 康夫(東京都世田谷区) 

○夏の旅○……恒例となった夏休みの旅行,一昨々年は三陸の震災の跡を巡り(本誌45号),一昨年は長崎の五島列島(本誌48号),そして昨年は東北地方の青森,秋田を巡りました。昨年の旅の目的は①東北新幹線のグランクラスに乗ってみること,②恐山を中心に下北半島を回ること,③五能線に乗ること,です。
まず目的①達成のため8月19日午前7時36分東京駅発の「はやぶさ3号」に乗車。そのグランクラスは先頭車両で横3列,縦6列の18席。ゆったりと座り,さて飲み物,食べ物,全て無料だったな。何にしようかな,と考えた。が,大きな誤算は,これが旅行の初日で,11時には青森に着き,その後に観光が待っているということ。こんなに朝早くから,たっぷりと飲めるわけもなく,また腹いっぱい食べられるわけもなく,早起きの「つけ」で車中は殆んど睡眠時間となりました。
青森着後「ねぶたの家」見学。昼食後にバスで下北半島に向け出発。浅虫温泉(ここは学生時代に東北大学の研究所で合宿したことがあり,大変懐かしい思い出のある場所です)を経由し,野辺地から陸奥湾に沿って下北半島を北上,大湊を経て恐山に到着。比叡山,高野山と共に日本三大霊山に数えられる恐山は「宇曽利湖」を中心に「釜臥山」等八峰に囲まれ「八葉の蓮華」にたとえられる地で,火山ガスの噴出する岩肌は地獄に,湖を取り巻く白砂の浜は極楽にたとえられるとのこと。皆さんよくご存知の「イタコ」は祭りの時季でなかったので居りませんでした。「むつ斗南温泉」泊。
翌日,先ずはあのマグロで有名な「大間」へ。岬からは函館の山や街が見えました。しかし今,大間も原発建設問題で大変とのこと。又マグロは本当に良いものは東京に出荷され,地元には残らないということでした。次に佐井から観光船に乗り「仏ケ浦」に渡りました。前日は荒天で船が出なかったとのこと,幸運でした。2㎞に及ぶ凝灰岩の白い崖は絶景でした。下北半島の旅を終わり津軽半島に渡りましたが,この「陸奥湾フェリー」は小さな船で,前日も荒天で欠航したとのこと。その際は再び下北半島を南下し青森を経由して津軽へと,大変な迂回になるのだそうです。無事,津軽半島に渡り,その夜は岩木山麓の鯵ヶ沢温泉泊。翌朝,あの有名な秋田犬「わさお君」に会えなかったのは残念でしたが,③の目的,五能線に乗るために南下。白神山地の十二湖をハイキング後に,五能線「リゾートしらかみ号」に乗車。僅かな距離,時間でしたが,景色のよい所は徐行して走行,目的は達しました。その後,角館の街を観光し,田沢湖駅より秋田新幹線に乗り,無事東京駅へ帰着しました。
○猫ジャラシと三国一の富士の山○……75歳,後期高齢者になったのを機に,籐(ラタン)のベッドを購入しました。以前から私はベッドが好きでなく,畳の部屋で布団を敷いて寝ていました。しかし元来大変な汗かきで,夏には朝起きると畳が湿気を帯びていることがありました。今回のこのベッドは風通しが良く,汗もかかず,又起き上がるのも楽です(最近,加齢による腰痛に悩まされています)。ベッドの下は風通しが良いので,2年前から飼っている猫(本誌48号で紹介しました)が涼しいのと頭上の高さが適当なのか,いつの間にか,下にもぐって寝ています。呼べば返事をするのですが,決してベッドの上には上がってきません。ちょっと可愛くないゾー。以前に飼っていた猫は,私が寝る時に「メイちゃん,寝るヨ」と声を掛け,寝室のある2階へ階段を昇り始めると,居間で寝ていても起き上がってついてきました。「まったく,1人で寝られないのか」とでも言いたげに,布団に一緒に入り,5分ほど静かにしていてから,「もう一人で大丈夫ね」と出て行きました。今飼っている猫(ミミちゃん)は,私が入浴のため脱衣室のドアを開けると,気配で分るのか,走って飛び込んできます。浴室に入るとタイルを流れる水をジーッと見ていたと思うと,ときどき私のほうをジーッと見ています。その視線の先は……。私はこう話しかけます。「これはネ,ミミがいつも遊んでいる〝猫ジャラシ″じゃないんだヨ。分ったかな。そうか,君はメス猫だから分らないかナ。そしてその後は出口の足ふきマットの上でじっと私の出てくるのを待っています。お風呂の中で私が倒れていないか,心配しているのでしょうか。本当に君は優しい猫だネ。――そういえば,この猫は富士山がきれいに見える静岡県から来ました。この富士山,最近,世界遺産に登録されて大変な人気のようです。どこから見る富士山が一番きれいなのか,太平洋岸からか富士五湖からか。昔からお国自慢で自分の方が一番だと言い争ったようです。学生時代に通った飲み屋の親父さんに教えてもらった「下ネタ」を紹介してこの章を終わりましょう。「三国一の富士の山、甲斐で見るより、駿河良い、相模だ」とお国自慢を互いに譲らなかったと。このお話のオチは「三国一の富士の山、カイでみるより、スルが良い、サーガミだ」。漢字変換しましょう。「三国一の富士の山、嗅いでみるより、するがよい、サー紙だ」。終了。 
投票数:12 平均点:10.00
前
詠歌友達との再会
カテゴリートップ
本物語
次
「竹の子医者」の日々その15

ログイン


ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失