有限会社 三九出版 - 止まない雨はない、「塞翁が馬」の信念で


















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☆〔新作●現代ことわざ〕 

        止まない雨はない、「塞翁が馬」の信念で

            小松 亮二郎(新潟県新潟市)

約37年証券会社に勤めたが,山あり谷ありのサラリーマン生活を送った。今,平穏な悠々自適の老後を送れるのも当時の体験のお陰としみじみ思う。証券投資は俗に言う「大底買いの天井売り」を理想としているが,私の就職時そして離職時は「大底買いだがさらにその下の大底売り」だった。8店舗で営業の後に本社の事務部門に転勤となり,全国を股に掛けての渡り鳥生活も漸く終わった,これで暫く落ち着けると思ったがそれも束の間,生来の臍曲がりが祟りある事で部長と大喧嘩,因果応報,結局は子会社へ放り出された。
この子会社は親会社の損失の隠し先として後に有名になる所なのだが,それはさておき,子会社で命じられた仕事はゴルフ会員権の仲介を行うことであった。当時はバブルの後遺症で各ゴルフ場の経営は悪化しており,それに伴いゴルフ会員権市場も低迷していた。畑違いの仕事でもあり当時はガックリきたのだが,そうは言っても給料分は働かなくちゃぁと一念発起した。が,またまた苦難の営業の連続であった。遣ってみて解ったことだが,この業界には統一されたルールが無きに等しく,それぞれの当事者が双方の裁量でその都度話し合って条件を決めるという,いわばかなりいい加減な業界であるということだった。そこで原点に立ち返りゴルフ会員権とは一体何なのかを,有価証券には該当しないので民法の債権編から始めてかなり深く勉強をし直した。そんな時に突然起きたのが親会社の自主廃業である(後に破産)。首脳部の不正経理による莫大な損失隠しが原因である。廃業実施のため所有していた全財産を処分することになり,急遽財産処分班が編成され在京者を中心に専門家が集められた。このチームの一員にと参加を打診され,ゴルフ会員権の部門の処分に当たることになった。当時廃業会社は簿価ウン十億円のゴルフ会員権を保有していた。実務で鍛えた法知識も活用し,足掛け5年に亘って回収に当たり,初期の回収目標を大幅に上回って回収業務を完遂した。一旦は破産解雇の身になったのだが長期間の再雇用を得て,奇禍とはいえ,サラリーマン生活の最終近くに腰を据えての活躍の場を得ることができた。確かに意気消沈した時期はあったが,「人間万事塞翁が馬」の生活信条を掲げて精進したことが現在の安寧な生活に繫がっていると思っている。
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