有限会社 三九出版 - 古希過ぎて,直木賞読破 ⑴


















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☆《自由広場》 

           古希過ぎて,直木賞読破 ⑴ 

             伊藤 晃(埼玉県所沢市) 

私は平成25年9月19日に古希を迎えました。そしてこの機会に思い切って蔵書を整理しました。私が好きな吉村 昭と浅田次郎の小説以外はすべて「ブックオフ」へ持ち込み,2000冊を処分し1万円強をゲットしました。代金は寿司になってその日のうちにカミさんと私の腹中に消えました。
ガラガラになった本棚を見ていると,残った浅田次郎の小説「鉄道員(ぽっぽや)」の帯に「直木賞受賞作品!」と書いてあるのに気がつきました。ああ「鉄道員」は直木賞作品だったな,と思った時にひらめきました。「そうだ,昔好きだった小説を読もう。せっかくの機会だから直木賞作品を全部読んでみよう!」
直木賞(正式には「直木三十五賞」)とは昭和10年(1935年)に文藝春秋社社長の菊池 寛が友人の直木三十五を記念して芥川賞とともに創設し,以降年二回発表される文学賞です。発足当初は「無名・新人及び中堅作家による大衆小説作品」に与えられる趣旨でしたが,最近はむしろ中堅・ベテランの作家の受賞が多いようです。受賞者数は「該当者なし」の回もあるので平成27年7月現在,183人です。
直木賞の選考はいくつかの候補作品の中から,主に過去の直木賞受賞者である複数の選考委員から成る日本文学振興会「直木賞選考委員会」の合議で選考・決定されます。発表に当たっては芥川賞とともにマスコミにも取り上げられ話題になるのはご承知のとおりです。
直木賞に関する情報としては,インターネットに「直木賞のすべて」という優れたサイトがあります。その中の「選評の概要」では毎回,各選考委員の選考意見の概要が掲載されています。本稿の中で私の意見以外のものは全てこのサイト他のインターネット情報に拠っています。
作品を読むにあたっては私の住んでいる市の図書館にお世話になることにしました。最初は図書館に出向き,自分で書庫に行って探していましたが,途中から知恵がついてインターネット予約に切り替え,手間が省けるようになりました。
読む順序は新しいものからスタートし,入手できたものから概ね時代をさかのぼって読んでいくことにしました。作品リストをチェックしたら183人の対象作品のうち,すでに読んでいる作品が31作品ありましたが,それらの作品も今回改めて全部読むことにしました。読むスピードは月に10冊を基本にしましたが結果的には月11冊のペースで読み,1年半で読み終えました。
作品を読むについて,ただ読むのではつまらないのでパソコン上に読書記録を残しました。内容は作品・作者の属性のほか,小説のあらすじ・読後の感想と私なりの評価です。評価はまず次の三要素を各々五段階評価しました。
①その小説は面白いか(面白くなければ小説とは言えない!)
②文学性があるか(文学性がなければ小説の価値がない!)
③文章は日本語として美しいか,説得力があるか。
 これらを総合して全作品について次のような五段階評価をしました。
  Ⅴ:「素晴らしい,感動した! もう一度読んでみたい」
  Ⅳ:「良かった! この作品は直木賞作品の中でもレベルが高い」
  Ⅲ:「直木賞作品としては平均的」
  Ⅱ:「なんでこれが直木賞作品? おかしいよ」
  Ⅰ:「これはひどい! 読まなければよかった」
 素人の私が,大作家先生たちの傑作を五段階評価するのは僭越,という感もありましたが最近の私の信条である「七十にして心の欲する所に従えども矩をこえず」という孔子の教えに従いました。
ところで,先に①「面白くなければ小説とは言えない」②「文学性がなければ小説の価値がない」ということを評価の主要テーマにしたといいましたが,実はこの二つは矛盾することが多いようです。物語が面白く筋がどんどん展開する小説では人間の深刻なテーマに迫ることは難しく,逆にハナから人間存在の深淵に肉薄しようなんて言う小説は理屈が多く面白くなりにくいものです。
まず,「面白さ」についていえば,最近の直木賞作品は手練れの有力作家が書く作品が多く,概して「面白い」作品が多いと思いました。
今度は「文学性」ですが,この定義は難しいのでここでは簡単に「人間がよく書けているか」とか「人間どう生きるべきかを問うているか」というようなこととしました。要するに読んでみて,「感動した!」と思わせる何かがあるということです。 
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