有限会社 三九出版 - 大震災で深まった絆


















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☆東日本大震災私は忘れない 

             大震災で深まった絆 

              白井 榮一(千葉県流山市) 

 あの日の私が住んでいる街の空は真っ青で風もなく,暖かくて活動するには最高の気候でした。地域の小学校の下校時の安全見守りボランティアのために自転車で家を出たところ,自転車が激しく蛇行しだして運転が不能になりました。酒も飲んでいないし二日酔いでもないので急に血圧でも上がって眩暈をしたのではないかと思いましたが,電線が激しくブランコを始め周囲の木々が大きく揺れるのを見て,大きな地震と解りました。急いで自宅に戻ってみましたが我が家は全く被害がなく,一先ず安心して“見守り”に向かいました。途中,数件の家のブロック塀が倒れていましたが小学生は皆校庭に避難しておりました。怪我人もいない様子で先生方も落ち着いてコース別集団下校の指示をしており,迎えに来た保護者の態度も冷静でしたので,大きな被害はなかったと安心して“見守り”を続けることができました。
 しかし,帰宅してテレビの報道を見て東日本,特に東北地方の被害の大きさは目も当てられないほどの大災害で,津波で多くの住宅が流される様は凄まじいもので筆舌に尽くし難く,人々の嘆き悲しむ姿には只々見守るだけで言葉も出ませんでした。
 これが2011年3月11日の東日本大震災でした。日が経つにしたがって,その物的人的被害の規模の広範囲なことがニュースとして報道され驚きを禁じ得ませんでした。
 さらに原子力発電の事故が追い討ちをかけ,人々は避難生活はじめ,風評被害や間違った情報のために塗炭の苦しみを味わうことになりました。

 当市は福島県相馬市と1977年1月に姉妹都市の盟約を締結しました。その関係で1987年より両市の少年少女のスポーツ交流事業が始まり,少年野球・少年剣道・少年サッカーが一年ごとに相互訪問による姉妹都市交流大会を開催し,私が関係しているサッカーは一度も中止することがなく,今年で32回大会を迎え,相馬市の子供達がバス4台で我が街にやって来ます。
 震災直後, 少年サッカーの関係者の安否が心配で, 確認のために相馬市の役員の方々に電話をしましたが混線していて連絡がなかなか取れませんでした。それでもやっと連絡が取れ,少年サッカーの子供達と役員の方々は物的被害はあったが皆無事であることが確認でき,一安心をしました。
 そして直ちに理事会を開催して相馬支援を話し合った結果,少年サッカーに携わっ
ている複数の市の職員が行政支援で相馬支援に行くことになりました。そこで私達は市少年サッカー連盟の子供,保護者,役員全員に呼びかけて募金活動を実施することを決定しました。 沢山の人々のご協力により 当初計画した金額が集まりましたので,相馬市のサッカー協会に届けるために福島市から山越えで相馬市に向かいました。到着してすぐ,被害現場を見て驚きました。見慣れた松川浦をはじめ,海側の景色の変わり果てた情景はテレビで報道されていた姿より以上に凄まじいもので,子供達がいつも楽しみにしていた海水浴場は関連施設と共に跡形もなく,沢山有った住宅も一軒もなく更地のようになっており,田畑であった場所は沼地と化し,自動車や壊れた舟,沢山の漂流物で埋まり,豊かな農地であった昔の面影は全くなく,津波の力の恐ろしさはテレビで放映されている映像よりも想像を遥かに超えた現実でした。
 相馬の人達は言葉に絶する大被害に遭ったのに,明るくて逞しく復興に向けて力強く行動しておられました。その姿に,慰めるために行った私達が反対に元気をもらうことになりました。
 この年は私達が相馬を訪問する年になっておりましたが,このような状態を見て相馬の受け入れ態勢が出来ないのではと思っておりました。しかし,相馬に来ることも復興の助けになるので是非来てほしいと言われて安心することができました。また,それまで宿泊していたホテルも被災して宿泊が出来なくなりましたが,幸いにも街から少し離れた宿泊施設を確保でき,子供達には楽しい夏休みの想い出になりました。
 翌年は相馬の子供達が遠征してくる年でしたが,このような事態なので無理ではと思っておりましたところ,反対に,子供たちを元気づけるためにも交流を進めたいとのありがたい話を頂きました。翌年になって,元気な相馬の子供達に接することができ,大いに交流を深めることができました。

 相馬に限らず,被災地には全国は勿論,世界各国から国レベルと民間人まで,多数の支援の手が差し伸べられ,人間の心の温かさに触れて感動しました。一方,あの震災から8年が経過しましたが風評問題で輸出にも障害が出ています。間違った情報がなくなり,一日も早く元通りの元気な東北6県になることを願ってやみません。 
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