有限会社 三九出版 - 凛としたつわぶきのような詩たち


















トップ  >  本物語  >  凛としたつわぶきのような詩たち
<BOOK REVIEW>『詩集 つわぶき』 
                  ◉読者の声 ◉ 
      凛としたつわぶきのような詩たち  

             河村 双葉(東京都府中市) 

 本書は,長年の友人である永嶋智子さんが日々の生活の中で触れたこと,感じたことを詩で表わし,それをまとめたものです。著者独特の瑞々しい,生き生きとした感覚でとらえたものを,素直な文で綴り,読む人の心に温かい感動を与えます。
 毎日目にする雲の流れ,木々の緑,可愛らしい花々,そして優しい人々に感動し,でもふと,自分の老いを感じ……。そんな数編の詩に,同じ年代の者として,とても共感します。
 幼い頃の思い出を詠ったもの。戦後の貧しい困難な生活の中にも温かい家庭がありました。昭和気質の無口な父上,家族を支える優しい母上,やんちゃな子供たち。
 懐かしい風景が思い起こされます。
 その後,智子さんは,上京して学校を卒業,ボランティアの仕事をして,結婚。
 でも,若くして御主人を亡くし,二人のお嬢さんを育て上げ,お弁当屋さんを切り盛りして,遂に長年の夢であるデイサービスを立ち上げて今日に至ります。智子さんとは30年前の子供達の高校入学からのお付き合いです。新鮮な感覚で物事をとらえ,思ったことを実行する,でも気負いはなく,その明るい頑張りに感心していました。
 このデイサービスに通所する方々―「愛しき人たち」という詩の数々。長い人生を生きてきた人達に,温かい尊敬をもって接し,元気に明るく,そしてユーモアをもってお世話する姿が目に浮かびます。
 自然を愛し,旅を愛し,人や人生を愛する詩が最後に続きます。こんなにもあふれるばかりの豊かなものが詩で表わせるのかと感動します。
 その智子さん,昨年の12月に急逝なさいました。この詩集の出版記念パーティーに大勢の方が集まって,3か月後のことです。4月に病気が見つかり,治療。でも,その間も闘病中とは思えないほど元気で,今まで通り,おしゃべりを楽しみました。今でもひょっこり,元気な声で笑顔で現れるような気がします。寂しくなりました。
 この詩たちの中に「遠い日 手が大きくて恥ずかしいといった 私に
      幸せがいっぱいつかめていいじゃないか といった彼」という私が好きな詩があります。本当に,大きな手でたくさんのもの,たくさんの幸せをつかみ,私達周りの者にも分けて下さった充実した人生でしたね。ありがとう智子さん。 
投票数:12 平均点:10.00
前
『詩集 つわぶき』
カテゴリートップ
本物語
次
二つのお願い

ログイン


ユーザー名:


パスワード:





パスワード紛失