有限会社 三九出版 - 《自由広場》          「竹の子医者」の日々 その2


















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               「竹の子医者」の日々 その2
                 星 康夫(東京都世田谷区)

 ○3Fか?4F?○……ビルのフロアーの話ではありません。本誌「本物語」30号でお話しました「胆石症の3F ?Female(女性) ?Fatty(肥満) ?Fifty〜Forty(40〜50歳台の年齢)」の事です。「中年」「デブ」「オバン」,優しい表現をすれば「中年の小太りの女性」と記したのですが,友人から「4F」が正しいのではないかとの指摘がありました。確かに「4F」と記してある教科書もあります。
 さて4番目のFとは何でしょうか。「Fair」です。健やかなとか,元気な,という意味です。私流の言い方に変えさせて頂くならば「ヤッカマシィ,ニギヤカナ」とでもなりましょうか。「中年,デブ,ヤッカマシィ,オバン」,これが4Fです。「My Fair Lady」という映画がありました。またN社からは「フェアレディー」というスポーツカーも売り出されていました。どちらもすばらしい作品だと思います。今,私の周囲にすばらしい4人の女性がおります。Four Fair Lady(正しくはLadiesでしょうか)。3番目のF(Forty〜Fifty)は少しサービスで,正しくは「S」かもしれません(Sixty〜Seventy)。私の妻を含む4人組です。「食事会」と称しては,連れ立ってお出かけになります。会の名前は「Flowers」。正にこれも「F」です。反撃が怖いので,この4人の場合の「F」は次のように訳させて頂きます。「ふくよかで,健やかで,妙齢の御婦人方」と。そして最後につけ加えますが,この4名の方々は「胆石症」ではありません。
 ○陰嚢と睾丸○……今回は自分の入院の話をしましょう。医者になって10年目の頃,入浴中に陰嚢の中の睾丸に「しこり」を触れました。翌日,泌尿器の先輩に相談し診察を受けました。「最も考えられるのは結核性の副睾丸炎だな。気になるのなら切除しよう」と。「お願いします」という事で,数日後に入院し,腰椎麻酔での手術となりました。しばらくして手術室の中が騒がしくなり,一番親しくして頂いていた泌尿器の先輩が手術室に入ってきました。  「痛そうだな。全身麻酔に変えようか?」。碓かに腰椎麻酔はしていても,睾丸が引っ張られる感じで苦しかったので,「お願いします」という事で全身麻酔に変更となりました。当然その後の事は覚えておりません。実は腫瘍が副睾丸でなく睾丸にあったため,そして睾丸の腫瘍には非常に悪性度の高い腫瘍があるために,術中の迅速病理検査が必要となったのです。結果は良性の腫瘍だったのですが,今度は手術方法で意見が分かれたとの事でした。一つは良性の腫瘍だから部分切除でよい,もう一つは少しでも悪性の可能性があるなら全摘除すべきだ,片方が残っていれば子供も出来るし全く心配ない,否,もしも精神的なダメージでインポテンツにでもなったら一生顔を会わせずらいぞ,と色々と相談がなされたとの事です。結果は部分切除でした。現在のわたしの睾丸は右は十八金で左は二十四金です。最近歩行中にバランスを崩しよろける事が多くなりました。片方が重いためかなあ〜。いやいや単に年齢による変化だよ,というのが正解のようです。
 ところで,「陰嚢」いわゆる「袋」は何故お腹の下の方にぶら下がっているのかご存じですか?睾丸は熱に弱いのです。睾丸は出生時には陰嚢まで下りてきて中におさまるのですが,これが途中で留まってしまって,鼠径管(そけいかん)という部分から下がらないことがあります。「停留睾丸」といって,悪性腫瘍に変化する事があるので,手術をして陰嚢内まで下げる事もあります。陰嚢が垂れ下がっているのは,畢丸の温度を下げるためです。又陰嚢の表面がしわしわなのは,ラジェ一夕ーと同じで表面積を大きくして放熱効果を高めるためです。これで何故睾丸が陰嚢の中に下っているのか,お分かりになりましたね。では今度は睾丸が上方に挙上する話をしましょう。危険が迫ったり,緊急時に「玉が縮み上がる」と言いますが,これは事実です。冷たい水に入った時に経験された男性は多いのではないでしょうか。これは自然に備わった防禦反応で「挙睾筋反射」といわれています。危ないと思ったら亀は急いで頭を引っ込めますが,これも同じです。――この表現は誤解されるかもしれませんので次のように訂正します。→ハリネズミ等が危急に際し身体を小さくして身を守る,これと同じ事で,しばしの間小さくなって大事な我が身を守るのです。
 〇本日休診○……今日は明後日からの5泊6日の人生3度目の入院を前にこの原稿を書き上げました。「休診」の掲示を見て患者さんが「癌の手術じゃないんですネ。白内障の手術ですか。安心しました。でも,手術後ははっきりと見えるようになるんですね。今度は念入りにお化粧してこなくちゃ」とおっしゃいました。「大丈夫ですよ、美人の方はより美しく,そうでない人も少しでも美人に見えるようなレンズを担当医にお願いしてありますから,ご心配なく」とお答えしておきました。
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