有限会社 三九出版 - ☆特別企画☆――東日本大震災       東日本大災害医療派遣に参加して


















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                 東日本大災害医療派遣に参加して
                         浅倉 禮治(東京都府中市)

 北多摩医師会(東京都の北多摩地区十市医師会で構成)の東日本災害医療派遣チームに手を挙げて,5月5日から5月8日まで,石巻市湊地区に行って来た。
 この地区への医療救援は、3月下旬に、武蔵野市,三鷹市,調布市,多摩市と北多摩の各医師会が交代で継続して行う協力体制をつくった。それは東京都医師会活動の一環でもあった。移動,宿舎,食事等は,すべて自己完結型での方針であった。
 一方,石巻市の医療救助受け入れ体制は、被害を免れた石巻日赤病院が統括コーディネーターとなり,市内を14エリアに分け,それぞれの拠点救援診療所を設け,各地からの日赤災害医療チームがエリアリーダーとなって,全国からの救援チームの業務を指示する組織図になっていた。
 私達のチームは、国分寺市の医師2人,看護師2人,国立市の医師2人,薬剤師1人の7人構成で,出発前に2回ミーティングをもち,情報収集や装備品のチェック,役割分担,活動内容等を話し合った。即席のチームだったが,皆目的は同じ思い,意気の合ったすばらしいチームで活動できた。
 移動手段は,直前に得た情報から,NPOのモビリティ21にお願いした。車輌2台とボランティアの運転担当者2人が協力してくれることになった。このNPOと往復と現地移動の運転をしてくれた2人には,心から感謝している。2人共プロのドライバーで,その人柄と知識,骨身を惜しまぬ活躍には,拍手,拍手であった。
 被災地の被害状況は甚大で,テレビ画像や新聞写真で見ていたより目に入るものは強烈で,一面の瓦礫や押し流された車の山,土台だけの家跡,電柱や木々が折れていたり引き倒されたり,塩害による竹林の立ち枯れ等々、そして又異臭。自然の猛威と被害の甚大さを胸に刻み込まされた。そして自衛隊の黙々とした活動状況には,思いを新たにした。
 石巻日赤で到着報告と登録をすると,突然,2班に分かれて避難所になっている渡波小学校と湊小学校で活動するようにとの指示。私は、医師2人,看護師1人,薬剤師1人のチームになり,湊小学校に行き,エリアリーダーの指示を受けた。
 小学校内の仮診療所での診療と避難所の巡回診察をすることになった。避難所環境は,場所によって差があり,まだ電気がなかったり,トイレが機能してないところもあった。
 受診者は,高血圧症や糖尿病等の慢性疾患が多く,常用していた同名薬がないことが間々あり,同効薬を渡し,その説明に労することが何回もあった。薬剤のないときは,処方箋を石巻日赤に届けて配達してもらったが,届くまで3日位要していた。湿布剤の不足が目立っていた。又瓦礫の片付け等で釘を踏んでみえる人もあり,破傷風予防に気を遣った。咳を訴える人は多かったが,幸いインフルエンザはみられず,下痢嘔吐症の流行は,私達がいたときは下火になっていた。
 避難所は,衛生管理上土足は禁止で上履きに替え,居住区域に入るときは上履きも脱ぐことになっていた。巡回では,血圧を測りながら傾聴に心がけた。被災時の状況を詳しく話されて,命辛々津波から抜け出したと,表情は和やかに話してくれる人がいる一方で,語気が荒かったり,抑うつ的で話に乗ってくれない人もいた。が,3日間続けて巡回したら,最後には笑顔がみえるようになった人もいてホッとしたこともあった。避難所意外で,1階は被災しても2階は免れた自宅で避難生活をしている人達もいた。この中に要医療者がいるかどうか,掌握しきれなかったのは心残りであった。
 災害の時系列の中で,短期間の経験であったが,被災地での連絡網と手段が十分でなく,情報を共有することの困難さを痛感した。避難所以外に居る人達の医療ニーズはどうなのか,心配のまゝ帰ることになったことは悔まれる。多忙のせいなのかもしれないが,行政と地元医師会の顔が見えなかったことも気になった。
 私は普段の生活に戻った今,多摩地域もそうだが,津波の心配はない地域も大地震とそれに伴う火災等に備えて,机上のことではなく,町内会・市町村・警察・消防・医療を含めた総合的実地訓練を,色々な状況をシュミレーションしながら,繰り返し行っていく必要性を痛感している。


《お知らせ》あの忌まわしい大地震の発生から約4ヶ月。様々なことがマスコミをはじめとする多くの媒体で語られています。小誌もほんの僅かでも何かを残したいものと思い,この「特別企画」を設けました。3回連載の予定です。ご一読ください。

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