本物語
第45号 2014.5.25
風 呂 当 番
原田 健作
父のことを書こうとすると,真っ先に思い浮かぶのが,奇妙なことに風呂場である。
父は,こよなく風呂を愛し,こよなく酒を愛した。しかし家族風呂以外に銭湯や温泉の愛好者であったかどうかは,定かではない。サラリーマン時代,毎日欠かさず,家の風呂に入り,休日になると,自分で風呂掃除をし,掃除が終わるとひと風呂浴びて気持ち良くなったところで一杯やるのが,無上の楽しみであった。休日には一日に何回も入浴するのが常であった。
時は巡り,私も数年前に定年退職し,背の高くない妻と二人暮らしをしている。我が家の風呂当番をやっているのは勿論私だ。私は父より長身なのだ。親子二代で風呂当番をするのも満更ではない。最近,家をリフォームしてユニットバスにした。とても気に入っている。お湯の量も湯加減も自分で調節することは一切必要なくなった。沸けば入れば良いし,時間がたっても冷めない。「もうすぐ,お風呂が沸きます」というコール音を耳にする度に「お前の風呂当番は反則だ。もっと他の用もやれ」と父が怒鳴り出しそうな気がしてならない。
父のことを思い出そうとすると,いつも風呂当番をやっている姿が目に浮ぶ。
どうしてそうなるのか,いまだに分からない。
父は,こよなく風呂を愛し,こよなく酒を愛した。しかし家族風呂以外に銭湯や温泉の愛好者であったかどうかは,定かではない。サラリーマン時代,毎日欠かさず,家の風呂に入り,休日になると,自分で風呂掃除をし,掃除が終わるとひと風呂浴びて気持ち良くなったところで一杯やるのが,無上の楽しみであった。休日には一日に何回も入浴するのが常であった。
時は巡り,私も数年前に定年退職し,背の高くない妻と二人暮らしをしている。我が家の風呂当番をやっているのは勿論私だ。私は父より長身なのだ。親子二代で風呂当番をするのも満更ではない。最近,家をリフォームしてユニットバスにした。とても気に入っている。お湯の量も湯加減も自分で調節することは一切必要なくなった。沸けば入れば良いし,時間がたっても冷めない。「もうすぐ,お風呂が沸きます」というコール音を耳にする度に「お前の風呂当番は反則だ。もっと他の用もやれ」と父が怒鳴り出しそうな気がしてならない。
父のことを思い出そうとすると,いつも風呂当番をやっている姿が目に浮ぶ。
どうしてそうなるのか,いまだに分からない。