本物語
第50号 2015.7.30
忘れないこと・忘れること
菊池 健介
○忘れてしまったことがいけなかった
2011.3.11の東日本大震災は,東北地方の太平洋沿岸が日本でも際立った津波地帯でることを我々に再認識させると同時に,予見をはるかに超えた地震・津波であったことは,被害の大小の違いはあっても何度となく地震・津波に襲われたということが過去の記録にあるにもかかわらずそれを忘れていたことへの大きな反省を促した。年月の経過とともに現在のあらゆる科学的知見をもってしてもいつ発生するか全く不明の地震・津波の襲来を忘れたことが,大被害に遭遇してしまった最大の要因であると言ってもよいのではなかろうか。“忘れる”ということは「人」という動物のよい面であるとともに悪い面でもあるが,悪い面が惹起した結果であると思う。
これらの事例からも言えることは,地震学者や地質学者があらゆる手段を駆使しても,現時点では地震と津波の正確な予知は不可能なのであるから,万が一の対策をしっかり確立しておき,役所等から発信される情報・指針を待ったり,鵜呑みにすることなく,各自が最大の叡智と,動物が持っている生物本能を発揮することが重要不可欠ということである。これを忘れることなく今後に生かされなければならない。
○忘れることもしなければ
今年4月,ネパール国でも大震災が起きた。私はこの30年来,ボランティアとしてネパールで研修農場と,2校の学校運営に関わってきたが,その学校も残念なことに被災した。現在,修復費用を捻出する義援金を募って自力で復旧する計画を立てているが,ネパールは国自体も市民も貧しいので,被災者への支援は国からも一般市民からも無いに等しい。そのため彼らは親戚・知人に頼りながらも,自らの手で復旧作業に取り組んでいる。土と日干し煉瓦で造られている家屋が崩れた被災者は,家族総出で,自らの手で瓦礫の中から煉瓦を拾い出し,家を建て始めている。しっかり前を向いて生活の再構築をしているのである。彼らの話を聞くと,「地震は予想外のことで怖かった。しかし私たちは生きて行かねばならない。起きた地震は過去のこと,忘れる(・・・)こと(・・)にした。但し地震が起きた時のことや、地震の恐怖は子供達へしっかり教える。そして今度の経験を活かして家を急斜面に建てることはせず,さらに丈夫な安全に配慮した建物にする」と明るい顔で答えるのである。「忘れる」と言っても記憶をなくすることではなく,「過去を引き摺らない」ということであろう。
「忘れることも大事」ということも忘れてはならないと思うのである。
2011.3.11の東日本大震災は,東北地方の太平洋沿岸が日本でも際立った津波地帯でることを我々に再認識させると同時に,予見をはるかに超えた地震・津波であったことは,被害の大小の違いはあっても何度となく地震・津波に襲われたということが過去の記録にあるにもかかわらずそれを忘れていたことへの大きな反省を促した。年月の経過とともに現在のあらゆる科学的知見をもってしてもいつ発生するか全く不明の地震・津波の襲来を忘れたことが,大被害に遭遇してしまった最大の要因であると言ってもよいのではなかろうか。“忘れる”ということは「人」という動物のよい面であるとともに悪い面でもあるが,悪い面が惹起した結果であると思う。
これらの事例からも言えることは,地震学者や地質学者があらゆる手段を駆使しても,現時点では地震と津波の正確な予知は不可能なのであるから,万が一の対策をしっかり確立しておき,役所等から発信される情報・指針を待ったり,鵜呑みにすることなく,各自が最大の叡智と,動物が持っている生物本能を発揮することが重要不可欠ということである。これを忘れることなく今後に生かされなければならない。
○忘れることもしなければ
今年4月,ネパール国でも大震災が起きた。私はこの30年来,ボランティアとしてネパールで研修農場と,2校の学校運営に関わってきたが,その学校も残念なことに被災した。現在,修復費用を捻出する義援金を募って自力で復旧する計画を立てているが,ネパールは国自体も市民も貧しいので,被災者への支援は国からも一般市民からも無いに等しい。そのため彼らは親戚・知人に頼りながらも,自らの手で復旧作業に取り組んでいる。土と日干し煉瓦で造られている家屋が崩れた被災者は,家族総出で,自らの手で瓦礫の中から煉瓦を拾い出し,家を建て始めている。しっかり前を向いて生活の再構築をしているのである。彼らの話を聞くと,「地震は予想外のことで怖かった。しかし私たちは生きて行かねばならない。起きた地震は過去のこと,忘れる(・・・)こと(・・)にした。但し地震が起きた時のことや、地震の恐怖は子供達へしっかり教える。そして今度の経験を活かして家を急斜面に建てることはせず,さらに丈夫な安全に配慮した建物にする」と明るい顔で答えるのである。「忘れる」と言っても記憶をなくすることではなく,「過去を引き摺らない」ということであろう。
「忘れることも大事」ということも忘れてはならないと思うのである。