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本物語

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第60号 2018.3.30

バッバに聞け

石附 成二

 バッバとは,かつて“NHK朝ドラ「あまちゃん」に出てくる夏バッバ”で知れたこと,“おばあちゃん”のことである。
 今は昔,仙台空港地元対策の責任者として,滑走路と運用時間の延長に汗を流していたころ。 地元説明会を開けば反対派の声ばかり。 いつも吊し上げを喰らう。
 そこで,からめ手から攻略するため戸別訪問をすることにした。 もちろん反対派を賛成派へと説得するためである。 “然るべき人”からの紹介があっての訪問だが,志操堅固な反対者から門前払いされることもしばしばあった。
 うまいこと招き入れられれば,先ずは一安心。お茶を飲みながら,時候の挨拶,世の中の景気の話,孫の教育の話などをする。昼間に訪問するので,兼業農家の跡取り息子は働きに出て,大概,実権を握っているジッジとバッバが対応してくれる。お茶受けは決まってバッバ自慢の“漬物”が出される。これを“旨いうまい”と平らげると,バッバは喜んでおかわりを出してくれる。帰りに漬物のお土産を貰ったこともある。 また,お茶と漬物で腹を下して苦しんだことも何度かある。 その家に孫がいると分かれば,孫の話題は重要である。孫は目の中に入れても痛くないらしいから。
 こういった戸別訪問の甲斐もあってか,地元説明会での反対派の声は回を追う毎に小さくなり,ついには地元承認を取り付けることができたのである。
 それからおよそ十数年後,NHK朝ドラ「あまちゃん」が始まり,宮本信子の“夏バッバ”が大活躍した。夏バッバに相談し,夏バッバの言うことを聞けば,諸事うまく行くのである。 まさに,“わが意を得たり”のドラマであった。 
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