本物語
第66号 2020.2.29
一人で悩まないで 認知症
児玉 洋子
農村の高齢化は都市に比べ急速に進んでいます。農家の平均年齢は67歳。他産業で定年退職となる層がトラクターを操作し,牛を飼ったり,トマトを栽培したりと現役で働いています。
私が勤務している日刊の全国紙である「日本農業新聞」はこうした農家が購読しています。新聞社には読者の声が毎日届けられます。「義母が認知症で、介護に苦労している」「自分もそろそろ年だし、認知症になったらどうしよう」――そんな悩みが増えたことに気付いたのが,認知症の取材を始めたきっかけでした。農業と家事をしながらの家族介護や老々介護が深刻な課題となっていることを感じてもいました。
手始めに読者モニターを対象に行ったアンケート調査で,「老後最も不安に思う病気」を尋ねました。結果は,死因1位のがんを抜いて認知症がトップでした。理由は「どんな病か分からない」「看病の仕方、向き合い方が分からない」「家族や周囲に迷惑を掛ける」「介護してくれる人がいない」など。介護する家族は電話で切々とつらさを訴えてくるのに,いざ取材に伺おうとすると尻込みされるのがほとんど。農村社会にあって,「声を上げられない」人が一人で悩まず,むやみに恐れることを解決できないか,手探りの中で取材を始めました。
認知症の終末期は寝たきりになっているのがほとんどですが,在宅医療を行う医師は「家ならではの雰囲気が良い薬になる」といいます。天井の色や畳の匂い,隣から聞こえる家族の声,こうしたなじみの環境が有効で,食欲がでたり,よく眠れるようになったりするそうです。ある医師は「死が敗北でなく、人生の集大成ととらえること」とインタビューに応えてくれました。最期は医療関係者がいなくても, 家族や友人で温かく見送ってあげることが本人にとって幸せなのかもしれません。
連載記事に対し読者から次のような反響が届きました。「認知症は人生最後の最高のプレゼントと私は思っています。一生懸命生きてきた人だけに与えられる最後のわがままな時間だと思います。母を通してそれを今、すごく思っています」。家族が葛藤を乗り越え互いが理解し合える――認知症はそんな力を秘めていると思います。
私が勤務している日刊の全国紙である「日本農業新聞」はこうした農家が購読しています。新聞社には読者の声が毎日届けられます。「義母が認知症で、介護に苦労している」「自分もそろそろ年だし、認知症になったらどうしよう」――そんな悩みが増えたことに気付いたのが,認知症の取材を始めたきっかけでした。農業と家事をしながらの家族介護や老々介護が深刻な課題となっていることを感じてもいました。
手始めに読者モニターを対象に行ったアンケート調査で,「老後最も不安に思う病気」を尋ねました。結果は,死因1位のがんを抜いて認知症がトップでした。理由は「どんな病か分からない」「看病の仕方、向き合い方が分からない」「家族や周囲に迷惑を掛ける」「介護してくれる人がいない」など。介護する家族は電話で切々とつらさを訴えてくるのに,いざ取材に伺おうとすると尻込みされるのがほとんど。農村社会にあって,「声を上げられない」人が一人で悩まず,むやみに恐れることを解決できないか,手探りの中で取材を始めました。
認知症の終末期は寝たきりになっているのがほとんどですが,在宅医療を行う医師は「家ならではの雰囲気が良い薬になる」といいます。天井の色や畳の匂い,隣から聞こえる家族の声,こうしたなじみの環境が有効で,食欲がでたり,よく眠れるようになったりするそうです。ある医師は「死が敗北でなく、人生の集大成ととらえること」とインタビューに応えてくれました。最期は医療関係者がいなくても, 家族や友人で温かく見送ってあげることが本人にとって幸せなのかもしれません。
連載記事に対し読者から次のような反響が届きました。「認知症は人生最後の最高のプレゼントと私は思っています。一生懸命生きてきた人だけに与えられる最後のわがままな時間だと思います。母を通してそれを今、すごく思っています」。家族が葛藤を乗り越え互いが理解し合える――認知症はそんな力を秘めていると思います。