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本物語

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第71号 2021.11.20

我輩は老人である(その2)

木下 勝一

我輩〝老人〟には週4~5回メールのやりとりをする50年来の友人がいる。愛校心や信条が同じで長く続いている。それと毎年6月に同級生が集まる同年老人集会がある。前回は19名が集まったが,同年齢だけに話題が直ぐに通じるのは有難いことだと思う。これら〝メル友〟も〝同年老人会〟も傘寿近いこの齢の〝老人〟にとっては何にもまして掛け替えのないものになっている。
それにしても,50年前は100歳以上の老人は500人超程度であったが,現在は86000人となっており,日本は超高齢化社会となった。傘寿だからといって老人ぶっていてよいのかどうか?という時代になったような気がしないでもない。しかし肉体的にも頭脳的にも〝若い時〟のようには行かず,衰えが目立つことは事実で,仕事に在り付くなどは到底不可能。いきおい「年金」頼りの日々となるのが大方であろう。そして「年金」といえば国の経済事情と切り離して考えることはできない。そこで,〝一老人〟から見た最近の日本経済とそれにまつわる諸状況だが……。
企業利益主導型経済で日本は20年間実質国民賃金は上がらず停滞している。契約社員制度が浸透し,若者が結婚し難い状況を招いている。現在出生人数は90万人程度であるが,70歳~80歳の世代は200万人から240万人である。その昔,これらの人々が年金受給者になると積立金が破たんすると言われていた。しかし当初は年金積立金の運用は国内債券が3分の2だけで他は銀行定期預金という状態であった。しかしその後,国内債券25%,国内株式25%,外国株式25%,外国債券25%に配分して運用することによりGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の過去20年間の運営利益は100兆円となり,社会不安も起こさず経過している。為替が安定し,国内株式及び外国株式が高水準を維持しているため,達成されている。ただ,岸田政権が発足後より米金利が上昇傾向にあり,外国株安および日本株安の同時進行が進めばGPIFの資金は素早い行動に移せないため,大幅な減損が発生するものと想定される。これはGPIFにとって深刻な問題を引き起こす発火点になりかねない。
もう一つの世界経済を揺るがす問題として,中国の不動産会社「恒大集団」の問題がある。 現在GPIFは56.7億円の投資をしているが,不良債権化しても総運用資産193兆円の0.003%弱なので問題はないと思う。日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)は時価で45兆603億円で,含み益は約10兆円弱になる。日経平均株価が29年ぶりに高値を更新したお陰だ。但し20年3月末には3000億円程度しかなかったことを思うと急騰の後には急落も覚悟しなくてはならない。日銀が株価を支えてい
る以上「経営がしっかりしていなくても株価が上昇する」弊害も配慮しなくてならない。日本の株式市場は3匹のクジラ,「外国人」「年金資金」「日銀」が暴れて高水準を保っている。日本はこの40年間でGDPが2.2倍に,しかし米国は7.5倍,英国は8.5倍,韓国は50倍,そして中国は200倍となっている。ジャパン アズ ナンバーワンなどとおだてられ浮かれている間にこうなってしまった。日銀は現在50兆円東証1部上場会社の約7%を占めている。MMTの信奉者である黒田総裁は「日銀の
法王」といわれた一万田尚登の在任期間を抜き8年6ヶ月となるが,国債の発行即ち借金はダントツ1位の237%(対GNP比)となっており,5位ギリシャ180%,13位アメリカ108%,19位フランス98%,31位イギリス85%,70位ドイツ59%,1位中国52%。如何に日本の債務が突出しているかが判る。その一方世界各国の平均賃金は日本27位428万円となっており,韓国466万円より少ない。
因みにMMT理論とは米ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授らが提唱した考え方で,「自国通貨建てで借金できる国は,過度のインフレにならない限り,どれだけ借金が膨れ上がっても問題ない」という考えだ。このMMT理論の信奉者である黒田総裁が引き起こした証券投資は未曽有の国債株式残高を招いている。もし金利が上昇し国債発行金利が2%になった場合,年間利払いは24兆円となり年間歳出の40%近くが利払いに追われ,すべての政策は破綻し,国はIMFの管理団体になってしまう。但し保有国債すべてが2%になるには10年のタイムラグがあるので,適切な政策が見出せるかが問題である。昭和49年ごろ8%国債が発行されていたことを考えると再現されることも十分にあり得ると思う。最近の物価状態は天然ガスが安値により10倍に。ガソリンは30%高,穀物は大幅な値上がりを示し,食品価格を押し上げている。正にアベノミクスすなわちMMT理論による政策崩壊の足音が聞こえている。
ともあれ…。その昔は年寄りの気持ちなどこれぽっちも判らず過ごしてきたが,自分が高齢者として疎んじられる存在になった今,なんとか上機嫌な生き方をしたいと思う。
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