本物語
第73号 2022.7.20
量子論でみる社会と経済 ④ 意識は,どこからどこへ
吉成 正夫
私たちは日常何気なく見たり聞いたり会話をしたりしています。どうしてこんなことが普通にできるのか考えてみると実に不思議です。そこで今回は「意識はどこからきて,どこへいくのか」,量子論の視点で考えてみました。
立花隆は自ら「勉強屋」というくらいに知的欲求が強く,あらゆる分野の問題に取り組みました。2007年の暮,膀胱がんを宣告されて手術を受けましたが自らの病気をも研究対象にしました。また臨死体験,生と死,魂の存在などにも関心を示しました。昨年4月に亡くなったとき「人間の肉体は死ねば単なるゴミだ」と結論し,葬式なし,墓なし,遺体はゴミとして処理し,猫ビルの蔵書5万冊を売り払うよう遺言したそうです。まことに潔い人生の締めくくりでした。一周忌に「見えた 何が 永遠が 立花隆 最後の旅」と題してNHKスペシャルで放映されました。最後に「人間は死すべき運命にある。それを自覚したとき、それを乗り越えることができる。自分は他の人たちに支えられて生きてこられた。最後に『ありがとう』と言って生命の連環体の一部として永遠の中に戻る」と締めくくりました。
「人間は何処からきて,何処へ行くのか」永遠のテーマです。
量子脳理論
「心と意識の科学的基礎」を求めた科学者は,英国の数学者,数理物理学者のロジャー・ペンローズ(1931~)が有名です。彼はスティーブン・ホーキングと共に,「ブラックホールの形成が一般相対理論の強力な裏付けであることの発見」により2020年のノーベル物理学賞を受賞しています。また著書には「ペンローズの<量子脳>理論」(筑摩書房,2006)があります。量子脳理論の系統ではスチュワード・ハメロフ(アリゾナ大学「意識研究センター」所長)がいます。
ペンローズの解説はあまりに科学的ですので私の理解でご説明いたします。
量子力学はまだ進化の途上にあります。これまで量子力学は重力を無視してきました。次のステップである「超ひも理論」によりますと量子を突き詰めた先には「時間・空間・重力」が混然一体となった状態を想定しています。このときマクロの相対性理論と矛盾のない統一理論が完成されます。
「量子脳理論」によりますと宇宙にはとても微小な「原意識」(ハメロフ)ないしは「素粒子に付随する意識の基本的単位」(ペンローズ)が宇宙に満ちています。
このとき宇宙の「原意識」が生物誕生に際して意識が入るには重力が大変重要な役割を果たすと考えます。なお生物サイドの神経系の中で,人間では脳の中のマイクロチューブㇽ(微小管)の中で,量子力学的な重ね合わせ状態がある閾値に達したときに瞬間的な波動関数の収縮(波から粒子への収縮)が起きることで意識が発生します。
私たち人間や生物の意識を含む「輝き」(ペンローズ)は宇宙の自然法則と深く関わっていますが,現在の物理学ではその一端を垣間見るのみです。
臨死体験
では意識は何処へ行くのでしょうか。これには臨死体験の研究があります。
ケネス・リング教授(米,コネチカット大学)は,死にかかって蘇生した102人を対象にインタビューをしたところ,49人(48%)が臨死体験していることが分かりました。以下は主要体験の体験率です(出所:立花隆著「臨死体験」/文藝春秋)。
①安らぎに満ちた気持ちよさ(60%)
②体外離脱(37%)
③暗闇(トンネル)の中に入る(23%)
④光を見る(16%), ⑤ 光の世界に入る(10%)
⑥人生回顧(12%)
⑦超越的存在との出会い(20%), ⑧ 死んだ親族・知人との出会い(8%)
量子脳理論では,「脳で生まれる意識は素粒子より小さな物質で,通常は脳の中に納まっていますが体験者の心臓が止まると意識は脳から出て拡散します。体験者が蘇生した場合は意識が脳に戻り,蘇生しなければ意識情報は宇宙にあり続ける」と考えます。量子力学にはまず「量子の二重性」つまり「波動性」(粒子から波へ)と粒子性(波から粒子へ)の特性があります。これが意識も肉体と宇宙を交流する考えに通じているようです。第二に,「量子もつれ」があって,「いったん関係しあった粒子はどれほど遠くに離れても関係性を保つ」という特性があります。量子もつれの特性は,人の「想い」や「祈り」の意義を想起させます。科学的な証明はできなくても「供養」や「先祖の霊を祀る」お盆を無下にできないことを量子理論が示唆しているのかもしれません。
立花隆は自ら「勉強屋」というくらいに知的欲求が強く,あらゆる分野の問題に取り組みました。2007年の暮,膀胱がんを宣告されて手術を受けましたが自らの病気をも研究対象にしました。また臨死体験,生と死,魂の存在などにも関心を示しました。昨年4月に亡くなったとき「人間の肉体は死ねば単なるゴミだ」と結論し,葬式なし,墓なし,遺体はゴミとして処理し,猫ビルの蔵書5万冊を売り払うよう遺言したそうです。まことに潔い人生の締めくくりでした。一周忌に「見えた 何が 永遠が 立花隆 最後の旅」と題してNHKスペシャルで放映されました。最後に「人間は死すべき運命にある。それを自覚したとき、それを乗り越えることができる。自分は他の人たちに支えられて生きてこられた。最後に『ありがとう』と言って生命の連環体の一部として永遠の中に戻る」と締めくくりました。
「人間は何処からきて,何処へ行くのか」永遠のテーマです。
量子脳理論
「心と意識の科学的基礎」を求めた科学者は,英国の数学者,数理物理学者のロジャー・ペンローズ(1931~)が有名です。彼はスティーブン・ホーキングと共に,「ブラックホールの形成が一般相対理論の強力な裏付けであることの発見」により2020年のノーベル物理学賞を受賞しています。また著書には「ペンローズの<量子脳>理論」(筑摩書房,2006)があります。量子脳理論の系統ではスチュワード・ハメロフ(アリゾナ大学「意識研究センター」所長)がいます。
ペンローズの解説はあまりに科学的ですので私の理解でご説明いたします。
量子力学はまだ進化の途上にあります。これまで量子力学は重力を無視してきました。次のステップである「超ひも理論」によりますと量子を突き詰めた先には「時間・空間・重力」が混然一体となった状態を想定しています。このときマクロの相対性理論と矛盾のない統一理論が完成されます。
「量子脳理論」によりますと宇宙にはとても微小な「原意識」(ハメロフ)ないしは「素粒子に付随する意識の基本的単位」(ペンローズ)が宇宙に満ちています。
このとき宇宙の「原意識」が生物誕生に際して意識が入るには重力が大変重要な役割を果たすと考えます。なお生物サイドの神経系の中で,人間では脳の中のマイクロチューブㇽ(微小管)の中で,量子力学的な重ね合わせ状態がある閾値に達したときに瞬間的な波動関数の収縮(波から粒子への収縮)が起きることで意識が発生します。
私たち人間や生物の意識を含む「輝き」(ペンローズ)は宇宙の自然法則と深く関わっていますが,現在の物理学ではその一端を垣間見るのみです。
臨死体験
では意識は何処へ行くのでしょうか。これには臨死体験の研究があります。
ケネス・リング教授(米,コネチカット大学)は,死にかかって蘇生した102人を対象にインタビューをしたところ,49人(48%)が臨死体験していることが分かりました。以下は主要体験の体験率です(出所:立花隆著「臨死体験」/文藝春秋)。
①安らぎに満ちた気持ちよさ(60%)
②体外離脱(37%)
③暗闇(トンネル)の中に入る(23%)
④光を見る(16%), ⑤ 光の世界に入る(10%)
⑥人生回顧(12%)
⑦超越的存在との出会い(20%), ⑧ 死んだ親族・知人との出会い(8%)
量子脳理論では,「脳で生まれる意識は素粒子より小さな物質で,通常は脳の中に納まっていますが体験者の心臓が止まると意識は脳から出て拡散します。体験者が蘇生した場合は意識が脳に戻り,蘇生しなければ意識情報は宇宙にあり続ける」と考えます。量子力学にはまず「量子の二重性」つまり「波動性」(粒子から波へ)と粒子性(波から粒子へ)の特性があります。これが意識も肉体と宇宙を交流する考えに通じているようです。第二に,「量子もつれ」があって,「いったん関係しあった粒子はどれほど遠くに離れても関係性を保つ」という特性があります。量子もつれの特性は,人の「想い」や「祈り」の意義を想起させます。科学的な証明はできなくても「供養」や「先祖の霊を祀る」お盆を無下にできないことを量子理論が示唆しているのかもしれません。