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本物語

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第74号 2022.12.10

許すまじ!ロシアのウクライナ侵攻(2)

成田 攻

 ウクライナ侵攻の大義についてプーチンはウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」を述べてきた。非軍事化とはNATO(北大西洋条約機構)の拡大阻止。紛争最中のウクライナの即時加盟は実現しないものの,長年中立を守ってきたフィンランドとスウェーデンがここでそろって加盟へ走ったので,プーチンの思惑は3倍返しの裏目に出ることとなった。もう一つの「非ナチ化」とは,ウクライナの東部地区に住むロシア系住民に排他的差別を加えている民族主義者たちを成敗するということらしい。ソ連が第二次大戦の末期にドイツと激しい消耗戦を戦った時期,独ソの狭間でソ連からの独立を求めて抵抗運動を続けていたウクライナのバンデラ一派をナチの協力者と見なしたことに由来しているらしい。そうと分かれば,あえて「ナチの残党狩り」呼ばわりするのはこの侵攻を国内外に正義の戦いと思わせるトリック以外の何ものでもない。
 緒戦から大きく見通しを誤ったロシアは3月末にはターゲットを東・南部地区に絞らざるを得なくなった。南部マリウポリでは,ロシアはアゾフ聯隊と女子供市民を含む約1000人をアゾフスタリ製鉄所の地下に追い詰め,製鉄所ごと完全封鎖して兵糧攻めに持ち込んだ。このアゾフ聯隊こそプーチンが「ナチ」と呼ぶ象徴的標的であったので,見かねた国連は介入して人道回路を設けさせた。ところが,地下から這い出てきた人々をロシア軍は国連と国際赤十字の目の前で用意したバスに乗せて検問キャンプへ運び,そのほとんどをロシアへ連行してしまった。いったい国連は何をしているのだ?無為無策,無責任と無気力。平和ボケの役立たず!
 5月末以降,ロシアが東部ハリコフ,ドンバス地方でも優勢の内に侵攻を進めているらしいとの見方が広がり,ウクライナを支援する西側諸国の間に「ウクライナ疲れ」が広がった。対ロシア経済制裁の自国経済への影響やウクライナからの尽きることのない武器供与の要求にうんざりという気分が鬱積し,7月には支援はアメリカ以外からゼロを記録した。ロシアでも既に6月末でルーブル国債償還がデフォルトに陥り,経済制裁の影響で多くの国内産業の操業が困難に陥り外国企業の撤退も続いて(世銀は本年度経済成長を少なくもマイナス4.5%と予想),プーチンの失政は決定的となった。ことここ至ってプーチンは「我々は何も失っていない」「我々はまだ一度も本気を出していない」と強弁して世界の顰蹙を買った。

 ロシアによる東部2州の制圧は7月末にほぼ確定的となり,攻勢はさらに南部へルソン,ザポリージャ州にも広がり,アゾフ海と黒海沿いゾーン(ウクライナ全土の約15%)を占領する野望が明らかとなった。と,9/9ウクライナ軍がロシアの支配下にあった東部ハリコフ州を急襲して奪還したニュースが世界を巡った。ロシアが重要なイジューム兵站基地を失ったことは致命的な痛手と解説され,「戦局の大きな転換点」,「世界の戦争史に残る勝利」とも。数日後またぞろ森の中で400人を越す女子供を含むウクライナ市民が惨殺され埋められた痕が発見された。国連性暴力担当代表はこれをロシアの「意図的な戦略」と指弾したが,スターリンがベルリンを陥落した前線の兵士たちに「今ベルリンは君たちのもの。略奪暴行、何でも好きなようにし給え」と祝電を送ったのは有名な話。何とも忌まわしいあの国の伝統。ロシアよ、恥を知れ!
 9月以降,状況は目まぐるしく変わる。9/21プーチンが国民30万人の動員を宣言するや,ロシアの38都市で市民デモが勃発し国民が自分に迫るリスクを初めて認識する事態となった。2週間後には20万人が召集,一部が前線に投入され,その間に数十万人の若者が国外に逃避した。ロシアは急遽ウクライナの東部2州と南部2州で怪しげな住民投票を強行し,それを根拠に10/5にロシアへの併合を一方的に宣言する挙に出た。国連は特別臨時総会を開きロシアによる4州併合を無効とする決議を採択したが,プーチンは「(併合地が攻撃を受けた場合には)ロシア領土への攻撃と見なし核兵器で反撃する権利がある」と開き直り。ウクライナは動じずドネツク州の要衝リマンを奪還し,へルソン州でも州都に急迫。10/8ロシアからの基幹補給路クリミア橋が爆破されると、ロシアは報復にウクライナ全土に84発のミサイル弾を撃ち込み生活インフラを破壊し多くの死傷者を出した。10/20プーチンは併合4州に戒厳令を発令。すると,ロシア軍はへルソン西部から不可解な撤退の動き。兵士の士気喪失と武器弾薬の枯渇が伝わる中,ダムを決壊させて大洪水を起こす工作の噂も。続けてウクライナがダーティボム(放射能をばら撒く爆弾)を準備中と世界中に喧伝(11/3国際原子力機関:IAEAは「その形跡なし」と査察結果を公表)。ロシアの常套“偽旗作戦”は見破られた形だが,いよいよ戦術核を使用するための口実作りが始まったかと世界は戦々恐々。戦場に冬迫る,さて冬将軍はどちらに味方するのか!【2022.11.4現在】
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