本物語
第75号 2023.3.11
許すまじ!ロシアのウクライナ侵攻(3)
成田 攻
プーチンが始めた「特別軍事作戦」は,第2次世界大戦後最大の戦争(死傷兵員約30万人,市民2~4万人,難民数百万人,排気ガス約1億トン)となってしまった。ロシアが一方的にウクライナ東/南部4州の併合を宣言した昨年10月以降,占領地支配を確立したいロシアと奪還に挑むウクライナの攻防は消耗戦の熾烈を極めている。加えて,ロシアはウクライナ全土の生活/エネルギー・インフラを集中的に爆撃して市民生活の徹底破壊に乗り出し,零下20度にもなる冬期には人の生存権をも脅かすジェノサイドの様相を呈するに至った。また,バフムトの激しい攻防を巡りワグネルなる民間軍事会社の存在に世界は仰天した。免罪符をかざして傭兵した囚人たちを戦場で盾代わりに使いひるむ者は背後から督戦隊が撃つというスターリン時代の伝統を踏襲し,現代ロシアのおぞましい暗黒の闇を世界に晒した。冬が明けたら大攻勢が始まるというプロパガンダは昨年来流布されてきたが,両軍共に兵站を立て直す4~5月頃にまなじりを決す大攻防戦が予想される事態となっている。
一説にはその大規模攻防戦の果てに停戦和平の契機が訪れるという期待があるらしい。ゼレンスキーは和平の条件として1)領土一体性の回復,2)国連憲章の尊重,3)戦争で被った全ての損失への賠償,4)全ての戦争犯罪への罰,5)侵略が繰り返されないことの保証,を挙げている。これに「頑なすぎる」「欲張りすぎ」という声があるらしいが,元凶はロシアなのだから“痛み分け”などという裁定はあってはならない。2014年のロシアによるクリミア攻略を世界がうやむやに黙認した結果がこれだったことを忘れてはいけない。今度こそロシアの侵略は明確に罰されなければならない。ウクライナは当然の賠償を堂々と要求し,世界は一丸となってそれを後押ししてロシアにつぐないの重荷を背負わせることが大事だ。さもなくば,プーチンは次の矛先を日本へ向けるかも知れない(事実あの国は1945年8月に対日参戦の見返りに北海道の半分を要求している)し,領土的野心を抱く国はまた侵略の愚を犯しかねない。ボルヌ仏首相(女性)は「戦争の代償はロシアにとって堪えがたいものになる」と述べているが,是非そうあって欲しい。今度こそ世界が侵攻は自国自身の破滅を招くということを肝に銘じなければ人類に進歩はない。2/21の年次教書演説の中でプーチンは「今はウクライナと呼ぶ我が領土」と言い放ったが,彼の大祖国復活妄想は旧ソ連邦に止まらず18世紀ロシア帝国まで広がっている可能性も否定できない。プーチンがピョードル大帝を自分のロールモデルと言っていることを冗談と思わない方がいい。
停戦和平は世界世論に立脚する公正中立な“機関”が,議論をリードしその経緯と合意を世界に公表し,後々のフォローアップを(場合によっては監査、管理、強制執行も)していく必要がある。それは国連をおいて他にはない。第二大戦後の平和維持機構だったはずの国連が今回全く役に立たっていないのは,常任理事国ロシアが拒否権を行使して安保理を機能不全に陥れているからだ。これにこんなアイデアはどうだろうか?仮に、企業の取締役会が特定役員の問題行動に対応を決めなければならない場合,本人に釈明の機会を与えた上で,議論や決定の場からは本人を外すのは当たり前のことだろう。議事規定に明示がなくても議長権限の内と考えられる。今年から2年間安保理の非常任理事国を務める日本は,議長を務める次の機会には勇気をもってロシアを議場から退席させその拒否権行使を封じて決定を下す先例を是非作って欲しい。国連総会は2/24,ロシアのウクライナからの完全撤退を求める決議を圧倒的多数で採択したのだから,安保理はそれを背負って動かなければならないはずだ。
とまれ,万一ロシアが切羽詰まって核の使用に踏み切ったら世界は未曾有の混乱に陥る。プーチンの胸一つ,私にはおぼろげながらある心証がある。2014年6/6に仏ノルマンディーの海岸で70年前のこの日ナチス・ドイツ占領下のこの地に連合軍が上陸したことを記念する式典が行われた。その光景を私はテレビで見た。大戦収束のハイライトをまとめた映像が屋外の巨大スクリーンに映され,18か国の首脳たちがテントの中から見入っていた。広島へ原子爆弾が投下されキノコ雲が吹き上がるシーンがスクリーンに映し出された時,カメラはプーチンの表情をズームで捉えた。その瞬間私は確かに,彼が,彼だけが頭を垂れ胸で十字を切るのを目撃した。意外や意外,冷酷非情なプーチンが実は核に対しては人一倍恐れを抱いていることを私は知ってしまった。今となっては少々自信はないが,是非そうであって欲しいと願うばかりである。
<私は昔,国連の一専門機関に関わったこともあって,ロシアの暴挙に怒り心頭,うっ憤を綴ってきたが,所詮は退役老人の遠吠え,己の無力を知るだけに終った。ウクライナの人々に神のご加護があるよう祈らずにはいられない。> 【2023.2.25 完】
――〔お詫び〕前号・「許すまじ~(2)」の1行目:「大儀」は「大義」の誤り(入力・校正)でした。(三九出版)
一説にはその大規模攻防戦の果てに停戦和平の契機が訪れるという期待があるらしい。ゼレンスキーは和平の条件として1)領土一体性の回復,2)国連憲章の尊重,3)戦争で被った全ての損失への賠償,4)全ての戦争犯罪への罰,5)侵略が繰り返されないことの保証,を挙げている。これに「頑なすぎる」「欲張りすぎ」という声があるらしいが,元凶はロシアなのだから“痛み分け”などという裁定はあってはならない。2014年のロシアによるクリミア攻略を世界がうやむやに黙認した結果がこれだったことを忘れてはいけない。今度こそロシアの侵略は明確に罰されなければならない。ウクライナは当然の賠償を堂々と要求し,世界は一丸となってそれを後押ししてロシアにつぐないの重荷を背負わせることが大事だ。さもなくば,プーチンは次の矛先を日本へ向けるかも知れない(事実あの国は1945年8月に対日参戦の見返りに北海道の半分を要求している)し,領土的野心を抱く国はまた侵略の愚を犯しかねない。ボルヌ仏首相(女性)は「戦争の代償はロシアにとって堪えがたいものになる」と述べているが,是非そうあって欲しい。今度こそ世界が侵攻は自国自身の破滅を招くということを肝に銘じなければ人類に進歩はない。2/21の年次教書演説の中でプーチンは「今はウクライナと呼ぶ我が領土」と言い放ったが,彼の大祖国復活妄想は旧ソ連邦に止まらず18世紀ロシア帝国まで広がっている可能性も否定できない。プーチンがピョードル大帝を自分のロールモデルと言っていることを冗談と思わない方がいい。
停戦和平は世界世論に立脚する公正中立な“機関”が,議論をリードしその経緯と合意を世界に公表し,後々のフォローアップを(場合によっては監査、管理、強制執行も)していく必要がある。それは国連をおいて他にはない。第二大戦後の平和維持機構だったはずの国連が今回全く役に立たっていないのは,常任理事国ロシアが拒否権を行使して安保理を機能不全に陥れているからだ。これにこんなアイデアはどうだろうか?仮に、企業の取締役会が特定役員の問題行動に対応を決めなければならない場合,本人に釈明の機会を与えた上で,議論や決定の場からは本人を外すのは当たり前のことだろう。議事規定に明示がなくても議長権限の内と考えられる。今年から2年間安保理の非常任理事国を務める日本は,議長を務める次の機会には勇気をもってロシアを議場から退席させその拒否権行使を封じて決定を下す先例を是非作って欲しい。国連総会は2/24,ロシアのウクライナからの完全撤退を求める決議を圧倒的多数で採択したのだから,安保理はそれを背負って動かなければならないはずだ。
とまれ,万一ロシアが切羽詰まって核の使用に踏み切ったら世界は未曾有の混乱に陥る。プーチンの胸一つ,私にはおぼろげながらある心証がある。2014年6/6に仏ノルマンディーの海岸で70年前のこの日ナチス・ドイツ占領下のこの地に連合軍が上陸したことを記念する式典が行われた。その光景を私はテレビで見た。大戦収束のハイライトをまとめた映像が屋外の巨大スクリーンに映され,18か国の首脳たちがテントの中から見入っていた。広島へ原子爆弾が投下されキノコ雲が吹き上がるシーンがスクリーンに映し出された時,カメラはプーチンの表情をズームで捉えた。その瞬間私は確かに,彼が,彼だけが頭を垂れ胸で十字を切るのを目撃した。意外や意外,冷酷非情なプーチンが実は核に対しては人一倍恐れを抱いていることを私は知ってしまった。今となっては少々自信はないが,是非そうであって欲しいと願うばかりである。
<私は昔,国連の一専門機関に関わったこともあって,ロシアの暴挙に怒り心頭,うっ憤を綴ってきたが,所詮は退役老人の遠吠え,己の無力を知るだけに終った。ウクライナの人々に神のご加護があるよう祈らずにはいられない。> 【2023.2.25 完】
――〔お詫び〕前号・「許すまじ~(2)」の1行目:「大儀」は「大義」の誤り(入力・校正)でした。(三九出版)