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本物語

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第75号 2023.3.11

「日本語」って不思議な言葉ですね!(その18)

松井 洋治

 2023年(令和5年)初めての寄稿(初荷?)だが,当「日本語・・・」シリーズもお蔭で「18回目」を迎えた。毎回,ご感想やお気づきになった点をご連絡下さる方の数も,幸いに増えており,大変有難く,心から感謝している。そんな方々へのお礼にもならないが,まずは,「ちょっと笑って戴ける日本語」からお読み戴こう。
 皆さんは「ぎなた読み」という言葉をご存じであろうか? この言葉を使った「岩波書店辞典編集部」によれば,「句読点が,一般的になったのは明治以後。読点がないと“弁慶が/なぎなたを持って”を“弁慶がな/ぎなたを持って”と読みかねない。」として,これを“ぎなた読み”と名づけ,例として「カネオクレタノム」(金送れ頼む)という電文を「金をくれた/飲む」とする有名な笑い話が紹介されている。実は私は、中学時代に,たまたま,炬燵に両親と3人で入りながら,本(徳冨蘆花の「自然と人生」だったと思う)を読んでいたが,余りにその文章の漢文調のリズムが気に入って,途中から,思わず声を出して読み進めていた時,「綺羅/星の如く」(きら/ほしのごとく)と読んだところ,父に「きら/ほし,ではなく,きらぼし(綺羅星)で一語だ」と言われた。と同時に,母からも「弁慶読みになってしまったのね」と笑いながら言われたのを覚えているし,後年,小・中学生の息子たち(現在は二人とも50歳代)に、「来た。名乗れ」(正しくは,「来たな,乗れ」),「赤字だ,早く消せ」(正しくは「あ,火事だ,早く消せ」),「パンツ食ったことある?」(正しくは「パン作ったことある?」)や「新宿は謎の神社」(正しくは「新宿花園神社」)などと言って笑わせたものだが,その都度,母に言われた通りに「弁慶読み」ということも教えて来た。しかし,岩波書店の「ぎなた読み」という言葉は,岩波以外の他社の辞書には出ていないし,母の言った「弁慶読み」も,残念ながら,手許のどの辞書にも見当たらない。
 それはともかく,外国語の知識が殆どないため,一概には断定できないが,上記のような「言葉遊び」は「日本語だからこそ出来る」ような気がする。日本語による「言葉遊び」の最たるものは,「たけやぶやけた」,「しんぶんし」のように「上から読んでも下から読んでも同音になる言葉」つまり「回文」であろう。十数年かけて集めた「回文」は数え切れないが,新年の「福袋?」として,その中でもレベルのかなり高いものを幾つかご紹介したい。わざと「振り仮名」を付けないで列記させて戴くので,じっくりとお楽しみ願いたい!
・談志が死んだ ・快晴盛夏 ・余談だよ ・新幹線沿線監視 ・済んだらふらふらフラダンス ・いかした歯科医 ・車は丸く ・軽い機敏な子猫何匹いるか ・対話に沸いた ・故郷より来た器量良き娘(こ) ・宇津井健氏は神経痛 ・力士手で塩なめ直し出て仕切り ・試しに澱粉で煮しめた ・冴えた答さ ・田舎、行かない
・黄いちご保護地域 ・新活字改正成果実感し ・読む声低く冷え込む夜 ・仇は来たか ・家内の憩いの田舎 ・予想株価嘘よ ・私待ちましたわ ・私負けましたわ
・毛皮敷きモデル寝る、でも岸は崖 ・役人に知り合いありしニンニク屋
 以上で25件の回文をご紹介したが,まだ収集した10%にもならない。残りは,いずれ改めてご紹介させて戴くことにして,次に,最近やっと自分なりに納得した「ごきげんよう」という「挨拶」についてお読み戴きたい。私の知人で数名だけだが,久し振りに出会った際に「ごきげんよう」と言う人がいる。全て女性であるが,「ごきげんよう(御機嫌よう)(「よう」は形容詞「良い」の連用形)という言葉は,毎朝6時半からのNHKラジオ体操の最後に「今日も一日お元気で,ごきげんよう!」という大きく元気な声を聴いていることでもあり,何の疑いもなく「別れる時の挨拶」で,逆に出会った時は,午前中ならば「おはようございます」で,午後は「こんにちは」,夕方以降は「こんばんは」,そして「久し振りにお会いした方」には,「お久しぶりです」,「ご無沙汰致しておりました」,「お元気でしたか?」等だと思っていたが,上記の数名の方々は,いつお会いしても直ぐに「ごきげんよう」と言われる。頭の中では「えっ,もう,さようならなの?」と思い続けていた。ところが,先般、たまたま手許の国語辞典「大辞林」(三省堂)で「ごきげんよう」を調べてみて驚いた。何と「(相手の健康を祈り祝する意をこめて)人に会った時,または別れる時に言う挨拶の言葉」と書かれており,「別れる時だけでなく,人に会った時にも使われる」ことを,自分で確認できたのである。最後に,今回寄稿するに当たり上記の通り「大辞林」(三省堂)を利用したが,ついでに,今回冒頭で触れた「綺羅星」の項を調べ,実は“大発見”をした。「綺羅星」(きらぼし)の説明文が,何と、『「綺羅、星の如し」という言い方から、誤ってできた語』と書かれている。すぐさま,亡き父に報告した次第である。
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