本物語
第75号 2023.3.11
量子論でみる社会と経済 ⑥ 量子論のその先へ
吉成 正夫
量子論の課題
量子論には未解決の三つの課題があると考えます。
第一が「無限大問題」です。量子の特性の一つが「量子は運動量をもつが,内部構造をもたない」でした。つまり量子は長さも巾もない「点」粒子とされています。
一方で,物理学には遠く離れていても力が伝わる「遠隔力」を説明するため「場」という概念があります。磁気の力を伝える「磁場」,電気の力を伝える「電場」,併せて「電磁場」です。電磁場は発信する電子と受信する電子を区別しません。電磁場に働く力の強さは距離の二乗に反比例する(クーロンの法則),つまり電子から自分自身までの距離はゼロですから,発信した電子が感じる電磁場の強さは「無限大」になって物理学の常識に反します。
第二に,現在わかっている素粒子は17種類あります。最後は2012年に欧州原子核研究機構(CERN)の実験で発見された素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」です。素粒子はまだこれからも発見される可能性がありますが,数が多いのは理論として「美しくなく」別の解があるのではないか,との疑問です。
第三に,量子論は重力を無視して研究が進んでいます。自然界の四つの力を強さの順に並べますと「強い力(原子核内を結びつける力)>電磁力>弱い力(核子のアルファ崩壊の原因になる力)>重力」の順となります。
重力は極めて小さく,量子論で重力を無視しても支障がありませんでした。しかしマクロの宇宙を説明する一般相対性理論は重力の理論です。重力なしに「ミクロとマクロの統合理論」を達成できません。
「超弦理論」の登場
そこで研究されているのが,量子は「点」粒子ではなく,長さも幅もある「超弦(超ひも)」とする理論です(「超弦理論入門」大栗博司著、講談社、2013)
これによって「無限大」問題が解決されます。第二の素粒子の種類が多いという問題です。バイオリンの弦がその振動状態で様々な音色を奏でるように素粒子の弦にもさまざまな振動状態があって,電子になったり光子になったりすると考えられます。
第三は重力との関係です。1974年,北海道大学大学院生・米谷民明氏は,振動するある弦が閉じた弦を放出して別の弦がそれを吸収するとどんな現象が起きるのかを調べていたところ,質量の積に比例した引力が働くということを発見しました。量子論の課題にめどがつき統一理論に一歩近づいたことが理解できます。
欧州CERNの大型ハドロン衝突型加速器で発見したヒッグス粒子は1000京分の1メートル(10―19m)の分解能です。ミクロな世界に向かって玉ねぎの皮を剥いていくことで重力と量子力学の統合が必要となる世界までたどり着くと,そこでは空間や時間さえも量子力学的に揺らいでいる物質とは離れた世界であって最後にはブラックホールにつながります(同著、P59)。
私たちはみな宇宙につながっている
ここまで人間の体と心の問題を解明するためにミクロの世界を辿ってきました。
いつしか「体と心」「生命」「意識」から話は宇宙の世界に入り込んでしまいました。宇宙のすべてはビッグバンで作り出されてきたものです。その途方もないエネルギー,そして創造と破壊の中から人類文明まで生み出すまで進化してきました。ですからビッグバンのパワーは宇宙に満ち満ちていて,その一部を細胞膜で囲ったのが生命であるとするのはごく自然な考えではないでしょうか。つまり私たちはみな宇宙につながっており,私たちは体の中に宇宙を抱えた存在であるとも言えます。
本誌73号で「ハメロフの『原意識』」をご説明しました。つまり宇宙は「生命」や「意識」の原材料で満たされているということを理論化したと考えます。生命に意識が取り込まれるときに重力がかかわるという説もあるそうです。
その時の大きさは,10-40m。このとき時間と空間と重力が混然とした「量子もつれ」でミクロな世界は存在しないそうです(同書)。宇宙のパワーとつながるのは我々人間だけではありません。ウィルスやミドリムシなどの微生物から動物・植物などの生命も同じです。そのように考えますと昆虫や鳥たちの不思議な振舞いを理解しやすくなります。私たちの子供の教育も画一的ではなく,それぞれの個性に応じた教育をして宇宙のパワーを引き出すことが求められることになります。幸い人工知能(AI)が広く応用されるようになり個別管理しやすくなってきました。子供の個性・能力をフルに引き出すことで,豊かで活力ある社会が実現されましょう。
量子論には未解決の三つの課題があると考えます。
第一が「無限大問題」です。量子の特性の一つが「量子は運動量をもつが,内部構造をもたない」でした。つまり量子は長さも巾もない「点」粒子とされています。
一方で,物理学には遠く離れていても力が伝わる「遠隔力」を説明するため「場」という概念があります。磁気の力を伝える「磁場」,電気の力を伝える「電場」,併せて「電磁場」です。電磁場は発信する電子と受信する電子を区別しません。電磁場に働く力の強さは距離の二乗に反比例する(クーロンの法則),つまり電子から自分自身までの距離はゼロですから,発信した電子が感じる電磁場の強さは「無限大」になって物理学の常識に反します。
第二に,現在わかっている素粒子は17種類あります。最後は2012年に欧州原子核研究機構(CERN)の実験で発見された素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」です。素粒子はまだこれからも発見される可能性がありますが,数が多いのは理論として「美しくなく」別の解があるのではないか,との疑問です。
第三に,量子論は重力を無視して研究が進んでいます。自然界の四つの力を強さの順に並べますと「強い力(原子核内を結びつける力)>電磁力>弱い力(核子のアルファ崩壊の原因になる力)>重力」の順となります。
重力は極めて小さく,量子論で重力を無視しても支障がありませんでした。しかしマクロの宇宙を説明する一般相対性理論は重力の理論です。重力なしに「ミクロとマクロの統合理論」を達成できません。
「超弦理論」の登場
そこで研究されているのが,量子は「点」粒子ではなく,長さも幅もある「超弦(超ひも)」とする理論です(「超弦理論入門」大栗博司著、講談社、2013)
これによって「無限大」問題が解決されます。第二の素粒子の種類が多いという問題です。バイオリンの弦がその振動状態で様々な音色を奏でるように素粒子の弦にもさまざまな振動状態があって,電子になったり光子になったりすると考えられます。
第三は重力との関係です。1974年,北海道大学大学院生・米谷民明氏は,振動するある弦が閉じた弦を放出して別の弦がそれを吸収するとどんな現象が起きるのかを調べていたところ,質量の積に比例した引力が働くということを発見しました。量子論の課題にめどがつき統一理論に一歩近づいたことが理解できます。
欧州CERNの大型ハドロン衝突型加速器で発見したヒッグス粒子は1000京分の1メートル(10―19m)の分解能です。ミクロな世界に向かって玉ねぎの皮を剥いていくことで重力と量子力学の統合が必要となる世界までたどり着くと,そこでは空間や時間さえも量子力学的に揺らいでいる物質とは離れた世界であって最後にはブラックホールにつながります(同著、P59)。
私たちはみな宇宙につながっている
ここまで人間の体と心の問題を解明するためにミクロの世界を辿ってきました。
いつしか「体と心」「生命」「意識」から話は宇宙の世界に入り込んでしまいました。宇宙のすべてはビッグバンで作り出されてきたものです。その途方もないエネルギー,そして創造と破壊の中から人類文明まで生み出すまで進化してきました。ですからビッグバンのパワーは宇宙に満ち満ちていて,その一部を細胞膜で囲ったのが生命であるとするのはごく自然な考えではないでしょうか。つまり私たちはみな宇宙につながっており,私たちは体の中に宇宙を抱えた存在であるとも言えます。
本誌73号で「ハメロフの『原意識』」をご説明しました。つまり宇宙は「生命」や「意識」の原材料で満たされているということを理論化したと考えます。生命に意識が取り込まれるときに重力がかかわるという説もあるそうです。
その時の大きさは,10-40m。このとき時間と空間と重力が混然とした「量子もつれ」でミクロな世界は存在しないそうです(同書)。宇宙のパワーとつながるのは我々人間だけではありません。ウィルスやミドリムシなどの微生物から動物・植物などの生命も同じです。そのように考えますと昆虫や鳥たちの不思議な振舞いを理解しやすくなります。私たちの子供の教育も画一的ではなく,それぞれの個性に応じた教育をして宇宙のパワーを引き出すことが求められることになります。幸い人工知能(AI)が広く応用されるようになり個別管理しやすくなってきました。子供の個性・能力をフルに引き出すことで,豊かで活力ある社会が実現されましょう。