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本物語

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第76号 2023.8.25

傘寿の思い出 四国遍路に挑戦(その1)

藤澤 康裕

 昨年私の人生の総決算という積りで四国遍路に挑戦し四苦八苦ながら何とか通し打ち(一度の機会で1番~88番までを全て遍路すること)で満願を果たすことができた。2022年9月21日~11月6日に高野山にて満願。この挑戦の記録を纏めた。

1.遍路との出合い
○思春期○ 遍路に繋がるような精神的に苦しむようなことに興味を持ち始めたのが多分子供の頃,教科書か先生から聞いたことから始まったと思う。読書に興味を覚え片っ端から読んだ本の中に若い男女の清純な恋物語の本があった。題名も著者名も忘れてしまったがストーリーの中に清らかな初恋から哀しい離別のストーリーの中で,子供心にも悲しくて一人泣いてしまったことを鮮明に覚えている。こんな事は生まれて初めてのことであった。その主人公の男が亡くなってしまった彼女を想い,苦しみ悩んだ末に見つけた般若心経の中の色即是空,空即是色の言葉であり,そこに初恋と離別の苦しみを乗り越えた力があった。私はその時確か二十歳前後であったが般若信経って凄いな,精神的な苦痛を和らげてくれる大きな力があるということに興味を持ち,さらに宗教というものの力の一端を垣間見たような気がした。そして人間が宗教を求める気持ちが何となく分かったような気がした。そして般若心経の解説本を読んだが,何が何だか全く理解できなかった。
○己に克たねば○ また,私自身の一生を考えた時,今の自分のひ弱な精神状態が成長してどんな大人になるのであろうか,人間として大きく成長するためには何をしたら良いのか,ということを真面目に考えて苦しんだ時もあった。本も読んだ。倉田百三の「出家とその弟子」とか「超克」など難しい本を読んでも益々泥沼に沈んで行くだけのことであった。今私が取り組まなければならないのは,無知でひ弱な私が将来どのような人間になるにせよ,己に克つ強い精神力の強化が必須であると考えるようになった。強い精神力と利他の心を持つことが最も重要なことであると考え,色々なことに取り組んで行ったような気がする。しかしその基本的な考えは良いとしても,その基本を直ぐに忘れ去ってしまい,常に安易な方向に流されていく自分があった。希望と挫折を何度も繰り返しその度に自己嫌悪と戦う惨めな日々の中で解決策を見いだせないまま傘寿になるまで長い時間を浪費してしまった気持ちで一杯である。
○母の旅立ち○ 母が2013年に100歳で旅立った。この時に驚いたのが母が四国遍路の白衣を持っていたことであった。私の姉が生前に母から受け取っていたものであった。母はもしもの時はこれを着せてくれるようにと姉に頼んでいた。喪主である私には知らされていなかった。この時は大して気にしなかったが後になって大きな疑問が湧いてくると共に遍路に対する興味が湧いてきた。というのは母が日蓮宗の信者であって弘法大師とは関係が無いと思っていた。
○きっかけ○ また,現役時代から続く会社のランニング仲間のグループがあり,2018年3月多摩ロードレスマラソン大会に参加した。マラソンの後の恒例の懇親会で,グループのYさんが四国遍路に挑戦したという話を懇談の中で聞いてその時は記憶しただけであったが,2020年3月にYさんと会って懇切丁寧に四国遍路の体験談を聞くことができ,沢山の資料も頂いた。そしてYさんが経験したような苦難が私にもできるであろうかという不安が大いに芽生えた。Yさんの話で遍路の困難さが良く理解できた。Yさんから教えて頂いた多くのことが後で大いに役に立ったことは,
・遍路のバイブルともいうべき四国遍路ひとり歩き同行二人の本を紹介してくれた。
・足まめに十分注意しケアを充分すること。 ・携行品は合計10㎏程度が最適。
・靴は普段履いているものより1㎝くらい大きいものを選ぶ。防水型が良い。
・雨対策は傘よりポンチョが良い。 ・遍路標識が分かり辛い所が多々ある。道を誤った時の判断が重要。 ・山道は下りが転び易い。
などなど経験者のアドバイスが非常に役に立った。感謝!
 生半可な気持ちでは到底完歩することはできないということも分かった。一番困っ
たのは2019年から蔓延した新型コロナウイルスである。ワクチンもない時期であったため不安が新たに湧き上がってきた。Yさんとの話で私が傘寿を迎える前に挑戦してみるという話になったが四国在住の知人やへんろみち保存協会などに問い合わせた限りでは遍路をすることはできるようであるが四国の方々は遍路挑戦者を余り歓迎するような雰囲気ではないような話もあり2020年2021年の挑戦は諦め2023年私が傘寿を迎えた年に挑戦することに決め,そこから準備を始めた。  (次号に続く。)
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