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本物語

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第76号 2023.8.25

「日本語」って不思議な言葉ですね!(その19)

松井 洋治

 「梅雨」といえば,「雨がじめじめと降り続く季節」を連想するが,その「じめじめ」を,別の言葉で言い換えてみようとしたが,結局,これしかないことに気付かされた。 
 考えてみれば,日本語の副詞や形容詞には,語を重ねて,その情景をイメージしやすくするものが,結構ある。例えば,ア行だけでも,直ぐに「あつあつ」,「いそいそ」,「うろうろ」,「えんえん」,「おずおず」などが浮かんでくる。冬場に「あったかい焼き芋」というより「あつあつの焼き芋」と言った方が,何だか,芋もしっかり焼けて,食べると身体の芯まで暖かくなりそうに感じるから不思議だ。「言葉の力」は大きい。
 上記「ア行」に続けて,思いつくままに,「カ行」から順に列挙してみよう。
・「カ行」:かさかさ,かたかた,かちかち,がちがち,かりかり,がりがり,きこきこ,きしきし,ぎしぎし,きちき   
      ち,きときと,ぎとぎと,くたくた,ぐつぐつ,けらけら,こきこき,ごしごし,ごそごそ,ごたごた,ご 
      ちゃごちゃ,こつこつ,ごつごつ,ごてごて,ことこと,ごとごと,こまごま,こりこり,こりごり,ころ
      ころ,ごろごろ,ごわごわ
・「サ行」:さくさく,さめざめ,さらさら,さやさや,しくしく,しこしこ,しとしと,じとじと,しばしば,しぶし
      ぶ,しめしめ,じろじろ,すいすい,すかすか,すきずき,すくすく,すたすた,すみずみ,すらすら,す
      やすや
・「タ行」:たかだか,たまたま,ちまちま,ちらちら,ちりぢり,ちろちろ,つらつら,つるつる,つやつや,てかて
      か,てくてく,とくとく,とげとげ
・「ナ行」:なかなか、なみなみ、なよなよ、にこにこ、にたにた、にやにや、にょきにょき、ぬくぬく、ぬけぬけ、ぬ
      るぬる、ねちねち、ねばねば、のろのろ
・「ハ行」:はいはい,はきはき,ひさびさ,ひしひし,ひりひり,ふかふか,ふさふさ,ふらふら,ふりふり,へらへ
      ら,ほかほか,ほのぼの,ほろほろ
・「マ行」;まじまじ,ますます,まずまず,またまた,まちまち,みすみす,むしゃくしゃ,むずむず,めそめそ,も
      そもそ,もたもた,もりもり,もんもん
・「ヤ行」:やすやす,やまやま,ゆらゆら,よちよち,よぼよぼ,よろよろ
・「ラ行」:らくらく,らんらん,りんりん,るいるい,るんるん
・「ワ行」」わいわい,わくわく,わざわざ,わなわな,わんわん
 浮かんだ分だけの列挙だが,「あれあれ」,「おやおや」,「まあまあ」などの感嘆詞,
感動詞を入れなくても,かなりの数になる。しかも,列挙しながら気づいたことだが,
海外駐在中の愚息夫婦にでも是非一度訊いてみたくなったのは,「病気の時の痛みの
表現」である。例えば、日本では(胃が)「むかむかする」,「しくしく痛む」,「きりきり痛む」などと言えば,ある程度は,医師に「痛みの程度」が伝わると思うのだが,英語やスペイン語,ロシア語などでも,こんな微妙な差を伝える表現が出来るのだろうか?言語学者ではないため,これ以上の探求は,その手段や方法すらも分からず諦めるしかないが,これは,言葉そのものの違いというより,四季がはっきりと別れており,その上,教育程度も含めた「民度の差」から来る日本人特有の鋭く,優れた「感性」から生まれ,育ってきた表現ではないだろうか。素晴らしいことに違いない。
 また,最近気になって仕方がないのが,「方言」を余り聞けなくなってしまったことだ。テレビで全国各地の色々な話題が紹介されるのは,有難く嬉しいのだが,現地でのインタビューに登場する人々の言葉に「訛り」や「独特のアクセント」が感じられなくなってしまった。テレビや通信機能の多様化だけでなく,全国的に人の交流が活発になった証拠であろうが,寂しい限りである。全国どこに泊まっても,画一的な「いらっしゃいませ」ばかり。「おこしやす」,「ようきんしゃったのう」,「えぐきたなぁ」,「おいでませ」,「おじゃったもんせ」,「めんそーれ」などを直接聞きたくて行くのに。もっと腹が立っているのが,地方によってそれぞれ多様性があった「料理」まで,均一化してしまっていること。その地域でしか食せない魚や野菜をどうして使わないのか? しかも,夫々の地域で(本來は夫々の家で)味が異なっていた「味噌」や「漬け物」が,どこに行っても甘く,「旅の楽しみの半分は,その土地でしか味わえない地元料理(と地酒)」だと信じて生きて来たのに,どこへ行っても似たり寄ったりの言葉と料理では,「外国人客」は増えても、肝心の日本人客は減る一方だという極めて厳しい現実を,観光業界,特に宿泊産業界の経営者は,今こそ,真剣に見つめ直すべきであろう。数年前〈2008年〉の「SARS(重症性急性呼吸器症候群)ウイルス騒ぎ」の際,せっかく学び,経験したことを活かせず,今回の「コロナ禍」で倒産,廃業に追い込まれたホテル・旅館が多かったことも,決して忘れてはなるまい。
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