本物語
第77号 2023.12.25
〈花物語〉 桔 梗
小櫃 蒼平
桔梗は花びらの輪郭と青紫の色が美しい。文学者の杉本秀太郎が『花 ごよみ』の中で, 「花の姿も、色も、きりりとしていてしかも色気がある」といっているが,まさしく鮮やかな輪郭と青紫の彩りが「きりり」とした姿形となってあらわれるのだろう。以前は野山の日当たりのよい場所で見ることができたが,わたしの住んでいるあたりでは,ほとんど
見られなくなった。星形の花を咲かせ,色は青紫が多いが,白色や桃色のものある。根は生薬として用いられている。秋の季語。
桔梗といえば,明智光秀の家紋として知られている。光秀の前半生についてはよくわからない。最後の室町幕府の将軍,足利義昭に仕え,織田信長と義昭の仲介を果たしたが,ふたりの関係が終わったあと,義昭を見限り信長に仕えた。有職故実に明るく,公家たちとの交流もあり,当初信長の光秀に対する信頼は篤かったが,よく知られる本能寺の変を
起こし,その一生を終える。実務家としては領地の治水工事や,税の扱いなど,善政をおこなったといわれ,武将としてものちの豊臣秀吉と並び,かなりすぐれた手腕があったようである。
わたしは光秀の研究者ではないので,ドラマや小説から情緒的に光秀像を想像するのだが,たとえば秀吉などに比べると,要領の悪さはあるが,陰に陽に頑ななまでにおのれを保持するその有り様に,桔梗の「きりり」とした姿形に重なるものをみる。光秀と家紋の由来はわからないが桔梗紋は光秀によく似合っている。 「きりきりしやんとしてさく桔梗
かな」(一茶) 「紫のふっとふくらむ桔梗かな」(子規)
※「桔梗」(杉本秀太郎『花ごよみ』平凡社)
※「きりきり……」「紫の……」(山本健吉『基本季語五〇〇選』(講談社学術文庫
見られなくなった。星形の花を咲かせ,色は青紫が多いが,白色や桃色のものある。根は生薬として用いられている。秋の季語。
桔梗といえば,明智光秀の家紋として知られている。光秀の前半生についてはよくわからない。最後の室町幕府の将軍,足利義昭に仕え,織田信長と義昭の仲介を果たしたが,ふたりの関係が終わったあと,義昭を見限り信長に仕えた。有職故実に明るく,公家たちとの交流もあり,当初信長の光秀に対する信頼は篤かったが,よく知られる本能寺の変を
起こし,その一生を終える。実務家としては領地の治水工事や,税の扱いなど,善政をおこなったといわれ,武将としてものちの豊臣秀吉と並び,かなりすぐれた手腕があったようである。
わたしは光秀の研究者ではないので,ドラマや小説から情緒的に光秀像を想像するのだが,たとえば秀吉などに比べると,要領の悪さはあるが,陰に陽に頑ななまでにおのれを保持するその有り様に,桔梗の「きりり」とした姿形に重なるものをみる。光秀と家紋の由来はわからないが桔梗紋は光秀によく似合っている。 「きりきりしやんとしてさく桔梗
かな」(一茶) 「紫のふっとふくらむ桔梗かな」(子規)
※「桔梗」(杉本秀太郎『花ごよみ』平凡社)
※「きりきり……」「紫の……」(山本健吉『基本季語五〇〇選』(講談社学術文庫