本物語
第77号 2023.12.25
量子論でみる社会と経済 ⑧ 「量子論コンピュータ」は未来をつくる
吉成 正夫
自然界は不思議に満ちています。春になると花が咲きあふれ,鳥が囀り,つい一句ひねりたくなります。日本はとくに四季折々の変化が豊かで海外の観光客を惹きつけています。わたしが特に不思議に思いますのはハチドリです。世界最小の鳥ともいわれ色鮮やかな羽をホバリングして空中で停止して,嘴を花に突っ込んで蜜を吸うそうです。動物も植物も環境に適応しながら生きていきますが,最高の適応じゃないでしょうか。蜘蛛も自分の体から糸を繰り出して見事なネットを織り上げて獲物を捕らえます。こうした技はすべて所謂「量子コンピュータ」のなせる技だと考えています。
新聞記事に「量子コンピュータ」が登場したのは2016年です。当時,人工知能が囲碁のプロに勝つのは当分先のことだと言われていました。ところがその年の3月,人工知能のアルファ碁(グーグル・ディープマインド社開発)と世界最強の李九段プロ棋士が対決し,人工知能に軍配が上がり,にわかに人工知能が脚光を浴びました。その延長線上に「量子コンピュータ」の記事も掲載されるようになります。コンピュータと言いましても,それまでのコンピュータとは全く仕組みが違います。それまでのコンピュータは「0」と「1」の2進法で計算します。つまり「オン」と「オフ」で電流を流して高速計算されます。一方,「量子コンピュータ」は量子力学の特徴をいかして「0」と「1」の重ね合わせた状態をとる「量子ビット」を使って計算する装置です。従来のコンピュータの考え方に添って「量子ゲート方式」が研究されてきました。量子ゲート方式の問題は量子ビットが増えるにつれてエラーも増加するのでエラー対策が最大の課題になっています。
2011年に「量子アニーリング(焼きなまし)方式((注)」() )がD-Wave社によって商用化され、NASAとグーグルなどが導入しました。
(注)「量子コンピュータが人工知能を加速する」(西森秀稔、大関真之著、日経BP)より「金属を高温にしてからゆっ
くり冷やしていくと構造が安定するという「アニーリング(焼きなまし)」を借用したもの。これによって組み
合わせ最適化問題の近似値を得ることが出来る」
従来のコンピュータが様々な問題を解く汎用型であるのに対して,量子アニーリングは「組み合わせ最適問題」を解くとき,汎用コンピュータの1億倍の高速になりまグは「組み合わせ最適問題」を解くとき,汎用コンピュータの1億倍の高速になります。「組み合わせ最適問題」でよく事例に取り上げられるのは「巡回セールスマン問題」です。これは宅配便のドライバーがどのようなルートで回ると距離が最も短くなるか,という問題です。訪問する場所が25カ所に増えますと,ルートの組み合わせは1.6×1025通りとなりスーパーコンピュータでも49年かかります。これを量子アニーリングでは1億分の1の約150秒で解けることになります。
量子アニーリングは計算ではなく「自然現象を借用したアルゴリズム」(同上書)だそうです。
実は,量子コンピュータの構想を初めて提唱したのはリチャード・P・ファインマン((注)で() ),彼は「世の中のすべてのものは量子力学に従って動いているのだから,量子力学の原理をうまく使って動くコンピュータを作れば,いろいろなシミュレーションが効率よくできるはずだ」(同上書)と述べたそうです。
(注)リチャード・P・ファインマン(1918-1988):米物理学者,1965、ノーベル物理学賞受賞
ずばり大胆かつ柔軟な発想です。そこで本文の出だしのフレーズになるのです。そもそも「量子コンピュータ」という言葉に疑問をもちます。自然界は計算しません。光合成を例にとりますと,超微細な「つぶつぶ」の量子が高速で相互作用していると考えるのが自然です。ですから量子コンピュータは実は「自然の( こ)理(とわ)」(り )と表現するか,あるいは別の表現が相応しいのではないでしょうか。「量子ゲート方式」は従来のコンピュータのやり方の影響を受けているように感じます。
一方,「量子アニーリング方式」は組み合わせ最適化問題を解くのに適したアルゴリズムといわれています。自然界には「組み合わせ最適問題」で満ち満ちています。この方式によってこそ自然界の神秘にアプローチできるのではないでしょうか。
いま私たちは「自然の( こ)理(とわ)」(り )のとば口に立っています。現在,量子コンピュータで応用が期待されているのは,物流の改善,創薬,新素材,などが挙げられています。量子コンピュータは,もともと生命の科学です。かなり将来のことでしょうけれども,資源と人類が調和を保って共存できる「システム」となるのではないかと夢見るのです。自然界のように金利もインフレも存在しない調和のとれた世界です。
新聞記事に「量子コンピュータ」が登場したのは2016年です。当時,人工知能が囲碁のプロに勝つのは当分先のことだと言われていました。ところがその年の3月,人工知能のアルファ碁(グーグル・ディープマインド社開発)と世界最強の李九段プロ棋士が対決し,人工知能に軍配が上がり,にわかに人工知能が脚光を浴びました。その延長線上に「量子コンピュータ」の記事も掲載されるようになります。コンピュータと言いましても,それまでのコンピュータとは全く仕組みが違います。それまでのコンピュータは「0」と「1」の2進法で計算します。つまり「オン」と「オフ」で電流を流して高速計算されます。一方,「量子コンピュータ」は量子力学の特徴をいかして「0」と「1」の重ね合わせた状態をとる「量子ビット」を使って計算する装置です。従来のコンピュータの考え方に添って「量子ゲート方式」が研究されてきました。量子ゲート方式の問題は量子ビットが増えるにつれてエラーも増加するのでエラー対策が最大の課題になっています。
2011年に「量子アニーリング(焼きなまし)方式((注)」() )がD-Wave社によって商用化され、NASAとグーグルなどが導入しました。
(注)「量子コンピュータが人工知能を加速する」(西森秀稔、大関真之著、日経BP)より「金属を高温にしてからゆっ
くり冷やしていくと構造が安定するという「アニーリング(焼きなまし)」を借用したもの。これによって組み
合わせ最適化問題の近似値を得ることが出来る」
従来のコンピュータが様々な問題を解く汎用型であるのに対して,量子アニーリングは「組み合わせ最適問題」を解くとき,汎用コンピュータの1億倍の高速になりまグは「組み合わせ最適問題」を解くとき,汎用コンピュータの1億倍の高速になります。「組み合わせ最適問題」でよく事例に取り上げられるのは「巡回セールスマン問題」です。これは宅配便のドライバーがどのようなルートで回ると距離が最も短くなるか,という問題です。訪問する場所が25カ所に増えますと,ルートの組み合わせは1.6×1025通りとなりスーパーコンピュータでも49年かかります。これを量子アニーリングでは1億分の1の約150秒で解けることになります。
量子アニーリングは計算ではなく「自然現象を借用したアルゴリズム」(同上書)だそうです。
実は,量子コンピュータの構想を初めて提唱したのはリチャード・P・ファインマン((注)で() ),彼は「世の中のすべてのものは量子力学に従って動いているのだから,量子力学の原理をうまく使って動くコンピュータを作れば,いろいろなシミュレーションが効率よくできるはずだ」(同上書)と述べたそうです。
(注)リチャード・P・ファインマン(1918-1988):米物理学者,1965、ノーベル物理学賞受賞
ずばり大胆かつ柔軟な発想です。そこで本文の出だしのフレーズになるのです。そもそも「量子コンピュータ」という言葉に疑問をもちます。自然界は計算しません。光合成を例にとりますと,超微細な「つぶつぶ」の量子が高速で相互作用していると考えるのが自然です。ですから量子コンピュータは実は「自然の( こ)理(とわ)」(り )と表現するか,あるいは別の表現が相応しいのではないでしょうか。「量子ゲート方式」は従来のコンピュータのやり方の影響を受けているように感じます。
一方,「量子アニーリング方式」は組み合わせ最適化問題を解くのに適したアルゴリズムといわれています。自然界には「組み合わせ最適問題」で満ち満ちています。この方式によってこそ自然界の神秘にアプローチできるのではないでしょうか。
いま私たちは「自然の( こ)理(とわ)」(り )のとば口に立っています。現在,量子コンピュータで応用が期待されているのは,物流の改善,創薬,新素材,などが挙げられています。量子コンピュータは,もともと生命の科学です。かなり将来のことでしょうけれども,資源と人類が調和を保って共存できる「システム」となるのではないかと夢見るのです。自然界のように金利もインフレも存在しない調和のとれた世界です。