本物語
第78号 2024.3.31
量子論でみる社会と経済 ⑨ ボーアの相補性と量子論(その1)
吉成 正夫
「量子論の育ての親」ニールス・ボーア(1885~1962)はデンマークのコペンハーゲンで,世界中から集まった若き俊秀を指導して量子論を完成させました。彼は「量子論が示す物質観・自然観の特徴を「相補性」という言葉で説明しました。即ち「相反するものが補い合って一つの事物や世界を形成しているのです」((注1)) (注1)「図解 量子論がみるみるわかる本」(佐藤勝彦監修,PHP研究所,2009)
東洋では昔から陰と陽という相対立する「気」が絡み合い相互作用が行われることで,すべての自然現象や人間活動が決まるとする「陰陽思想」があります。これが量子論の描く世界像と一致します。ボーアはデンマーク政府から勲章を受けた際に作成 した自分の紋章のデザインに「太極図」を採用しました。「太極図」とは「易」の「陰陽思想」,つまり「陰極まれば陽を生み出し,陽極まれば陰を生み出す」ように陰と陽はお互いに依存しているという思想です。
ニュートン力学では、ある時点の物質,例えば大砲の弾の位置と運動量が決まればそのあと,どこに着弾するかが決まります。ですから物理学を「決定論」として考えてきました。しかし,原子以下のミクロの世界では、マックス・プランク(1858~1947)は, 光など自然界は“飛び飛び”で波になったり粒子になったりしていることを発見しました。大きさは,6.626×10-34ジュール・秒((注)で(2)),10-34は1兆分の1の1兆分の1の100億分の1です。その小さな量子が一定の確率の範囲に波になったり粒子になったりして動いているのです。「位置」を決めたり「運動量」を決めたりするのは無理というものです。原子以下のミクロの物質には決定論が通用しません。(注2)光のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数。量子論を特徴づける基本定数。プランク定数ともいう。ハイゼンベルグ(1901~1976)は,電子などの量子は,「位置」と「速度」を同時に示すことが出来ないことを示しました。これと「陰陽思想」が重なり合うのです。ボーアは物理学者ですから,相補性を「不確定性原理」や「量子もつれ」で説明しています。
私たちの世界で考えますと,「男と女」「光と影」「善と悪」「物質と精神」などがあります。相補論を私たちの住む社会に応用しますと、思考の枠組みが広がります。
日経平均株価は,1989年以来の高値38,915円を35年ぶりに抜い たところです。35年という期間は一世代交替する期間です。いま「強気と弱気」「売りと買い」が交錯しています。これも、「相補性」の一種になるのでしょう。
わたしは50年以上をマーケットの中で過ごしてきました。「バブル」も「バブル崩壊」も「失われた30年」もすべて経験してきました。その中で,経済理論や投資
理論がマーケットの実態を適切に表現し解明していないと疑問に思っていました。それが量子論に魅了された理由です。私たちの成人の身体は約60兆個の細胞で形成されています。一つひとつの細胞は一体何個の量子があるのでしょうか。おそらく「兆」という単位では数えきれないくらいの量子があるのでしょう。 ですから私たちの生命,行動,思考がこの変幻自在で不思議極まりない「量子の特性」の影響を受けることはごく自然なことです。一昨年,「チャットGPT」が公表されて,昨年の株式市場のスターは生成AIむけの半導体GPUを製造する会社の「エヌビデア (NVIDIA)」となり,相場全体を牽引しました。しかしいまの最先端の半導体であっても2ナノⅿ(ナノは1億分の1)で,原子に近くなりましたが原子以上の大きさです。量子論が扱う世界は「原子以下のミクロ」の世界です。原子より大きい「大きな世界」は古典的物理学(ニュートン力学)が扱う世界であり,原子以下は量子論(量子力学)であって,扱う世界が全く違います。わたしたちは「量子コンピュータ」の世界を覗き見て,はじめて「自然界」を動かしている「理(ことわり)」の「入口」に立ったところです。これからは過去の情報・理論・システムなどはAIを用いて効率化していくならば,社会の生産性は飛躍的に高まるはずです。長い目で見て,株式の水準をさらに引き上げ,労働時間の短縮につながるのが理想です。
つい横道にそれてしまいました。ボーアの独特の理論である「相補性」は排除の理論ではなく包摂的な理論です。つまり「原子より大きい世界については,どうぞニュートン力学でやってください。しかし原子より小さい世界については,量子論に任せて,口出しをしないでください」と宣言したことになります。次回以降は,社会の事例をいくつか「相補論」で考えて参ります。
東洋では昔から陰と陽という相対立する「気」が絡み合い相互作用が行われることで,すべての自然現象や人間活動が決まるとする「陰陽思想」があります。これが量子論の描く世界像と一致します。ボーアはデンマーク政府から勲章を受けた際に作成 した自分の紋章のデザインに「太極図」を採用しました。「太極図」とは「易」の「陰陽思想」,つまり「陰極まれば陽を生み出し,陽極まれば陰を生み出す」ように陰と陽はお互いに依存しているという思想です。
ニュートン力学では、ある時点の物質,例えば大砲の弾の位置と運動量が決まればそのあと,どこに着弾するかが決まります。ですから物理学を「決定論」として考えてきました。しかし,原子以下のミクロの世界では、マックス・プランク(1858~1947)は, 光など自然界は“飛び飛び”で波になったり粒子になったりしていることを発見しました。大きさは,6.626×10-34ジュール・秒((注)で(2)),10-34は1兆分の1の1兆分の1の100億分の1です。その小さな量子が一定の確率の範囲に波になったり粒子になったりして動いているのです。「位置」を決めたり「運動量」を決めたりするのは無理というものです。原子以下のミクロの物質には決定論が通用しません。(注2)光のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数。量子論を特徴づける基本定数。プランク定数ともいう。ハイゼンベルグ(1901~1976)は,電子などの量子は,「位置」と「速度」を同時に示すことが出来ないことを示しました。これと「陰陽思想」が重なり合うのです。ボーアは物理学者ですから,相補性を「不確定性原理」や「量子もつれ」で説明しています。
私たちの世界で考えますと,「男と女」「光と影」「善と悪」「物質と精神」などがあります。相補論を私たちの住む社会に応用しますと、思考の枠組みが広がります。
日経平均株価は,1989年以来の高値38,915円を35年ぶりに抜い たところです。35年という期間は一世代交替する期間です。いま「強気と弱気」「売りと買い」が交錯しています。これも、「相補性」の一種になるのでしょう。
わたしは50年以上をマーケットの中で過ごしてきました。「バブル」も「バブル崩壊」も「失われた30年」もすべて経験してきました。その中で,経済理論や投資
理論がマーケットの実態を適切に表現し解明していないと疑問に思っていました。それが量子論に魅了された理由です。私たちの成人の身体は約60兆個の細胞で形成されています。一つひとつの細胞は一体何個の量子があるのでしょうか。おそらく「兆」という単位では数えきれないくらいの量子があるのでしょう。 ですから私たちの生命,行動,思考がこの変幻自在で不思議極まりない「量子の特性」の影響を受けることはごく自然なことです。一昨年,「チャットGPT」が公表されて,昨年の株式市場のスターは生成AIむけの半導体GPUを製造する会社の「エヌビデア (NVIDIA)」となり,相場全体を牽引しました。しかしいまの最先端の半導体であっても2ナノⅿ(ナノは1億分の1)で,原子に近くなりましたが原子以上の大きさです。量子論が扱う世界は「原子以下のミクロ」の世界です。原子より大きい「大きな世界」は古典的物理学(ニュートン力学)が扱う世界であり,原子以下は量子論(量子力学)であって,扱う世界が全く違います。わたしたちは「量子コンピュータ」の世界を覗き見て,はじめて「自然界」を動かしている「理(ことわり)」の「入口」に立ったところです。これからは過去の情報・理論・システムなどはAIを用いて効率化していくならば,社会の生産性は飛躍的に高まるはずです。長い目で見て,株式の水準をさらに引き上げ,労働時間の短縮につながるのが理想です。
つい横道にそれてしまいました。ボーアの独特の理論である「相補性」は排除の理論ではなく包摂的な理論です。つまり「原子より大きい世界については,どうぞニュートン力学でやってください。しかし原子より小さい世界については,量子論に任せて,口出しをしないでください」と宣言したことになります。次回以降は,社会の事例をいくつか「相補論」で考えて参ります。