本物語
第83号 2025.11.30
「日本語」って不思議な言葉ですね!(その26)
松井 洋治
この原稿を書き始めようとした日に,「懲罰自転車」という言葉をラジオのニュース番組で初めて知った。日本郵便では,従来から,配達員が勤務中に「車両(車やバイク)で事故を起こした場合,「再発防止の研修」の一環として「自転車や徒歩による配達」を命じているケースがあり「懲罰自転車」と呼ばれていたが,猛暑・酷暑の中での自転車や徒歩による配達は「熱中症」で倒れてもおかしくない状況であったという。このニュースを聞きながら,そういえば,昔は配達の皆さんは「徒歩」だったことを思い出した。また,妹を含めた女の子たちが「郵便屋さん急がんせ。もうかれこれ12時だ。1時,2時…」と歌いながら「縄跳び」に興じていた情景が浮かんだ。と同時に,そういえば最近,この歌詞にある「かれこれ」という表現を,殆ど聞かなく(聞けなく?)なったことに気付いた。「あれこれ」ではなく「かれこれ」は,手元の「古語辞典」並びに「国語辞典」で調べてみると,漢字では,いずれの辞書も「彼是」ではなく「彼此」の字が当てられ,「①あれとこれ、何やかや ②やがて、そろそろ、おっつけ」等の解説が付いていた。そういえば,17年前に95歳で亡くなった母は「かれこれ3時でしょ?」と言いながら「おやつ」を準備してくれていた。また,脱線するが,「おやつ」は「八つ時」(午後2時~4時)から出来た言葉である。「食べ物に関する言葉」,それも「オノマトペ」(擬声語)を集めたことがあり,今回は,それをご紹介させて戴こう。きっかけは,今から10数年前,学生時代(昭和36年~40年)に下宿していた場所を訪ねた際,元・下宿近くに開店したばかりの「とんかつ屋」の名前が「がっつり」。初めて見る(聞く)日本語である。あれこれ調べてみると,北海道の方言らしく「しっかり、たくさん食べる」時に若者たちの間で多く使われている表現だと分かった。更にこの言葉は元々「薩摩言葉」(鹿児島弁)で,明治維新後に「屯田兵」として北海道に送り込まれた人達が使っていたらしいことも知った。この「がっつり」がきっかけで,「食」に関する面白い表現を,思い出したり,見聞きするたびにメモっておき,図書館その他で調べたノートから,いくつかご紹介したい。料理番組などで耳にする「しんなり」は,「野菜の固い芯がなくなって,しかもクタクタにならない内(まだ弾力があって「撓う(しなう)内」に鍋から出す時に使われる。朝食は「こんがり焼いたパン(トースト)」に決めている方も多いだろうが,「こんがり」はパンに
限らずホットケーキやグラタン,ベーコン,そして焼き芋など、香ばしく食欲をそそるものだ。私は「餅(もち)」が好きだが「もちもち」という表現が,最近は餅以外のものに使われるケースが増えた気がする。パンやロールケーキ等でも「もちもち感」にこだわったものがある。一方,聞いただけで「京ことば」だと感じられるのが「ほっこり」である。辞書で「ほっこり」を引くと「ほかほかと暖かいさま」と出ており「ふかし芋」を「ほっこり芋」ということまで紹介されている。実は,ここ数年来「慢性腎臓病」と診断され,医師から「バナナその他の果物や生野菜」等「カリウム」を多く含んだ物の摂取を控えるように言われている身として,今一番聞きたい「食事」に関する音といえば,「しゃきしゃき」である。新鮮な生野菜を「シャキシャキ」と音をたてながら,夫々の野菜の植物繊維を,思いっきり嚙み切ってみたい。昨今は「オーガニック栽培」で「要冷凍」と書かれた袋入りの「ブロッコリー」を電子レンジで数分暖め,器に溜まった汁は全て捨てて,「シャキシャキ」どころか「無音でむしゃむしゃ」と噛んでいる。「オノマトペ」ノートには,「つるつる,しこしこ,ことこと,ほくほく,さらさら,ぱくぱく,かりかり,ばりばり,こりこり」等の他に「ぐびぐび,がぶがぶ」等の「飲み物」まで含めれば,まだまだ沢山の言葉が残っているが,人間にとって欠かせない「飲食」に関する言葉だけに,「オノマトペ」だけではなく,「料理名」の起源や由来なども含めれば,きっとそれなりの楽しい本が出来上がるに違いない気もするが,昨今のスマホの急速な普及や各種情報源の多様化も含め,若者だけでなく,小学生や高齢者までが「読書」をしなくなり,そのため,全国各地で,本屋の規模縮小,閉店,廃業が話題になっていることや,義務教育の小中学校でも,紙の教材ではなく,生徒各人に持たせたタブレットの画面に教材が出るだけではなく,教科書迄も紙のものが廃止される傾向にあることを考え併せると,上記のような本を書いても,あまり売れそうにもなく,打算的かもしれない,チャレンジする気も何故か起きない。これも歳のせいか?
私は,23年前に94歳で他界した明治生まれの父の真似をして,社会人になって直ぐに「蔵書印」を注文し今でも購入した本には必ず押しているが,今や蔵書が増えることは自慢でも何でもなく,どうやら「ホンを読む 死ねば焼かれる本を積む」だけのようだ。
限らずホットケーキやグラタン,ベーコン,そして焼き芋など、香ばしく食欲をそそるものだ。私は「餅(もち)」が好きだが「もちもち」という表現が,最近は餅以外のものに使われるケースが増えた気がする。パンやロールケーキ等でも「もちもち感」にこだわったものがある。一方,聞いただけで「京ことば」だと感じられるのが「ほっこり」である。辞書で「ほっこり」を引くと「ほかほかと暖かいさま」と出ており「ふかし芋」を「ほっこり芋」ということまで紹介されている。実は,ここ数年来「慢性腎臓病」と診断され,医師から「バナナその他の果物や生野菜」等「カリウム」を多く含んだ物の摂取を控えるように言われている身として,今一番聞きたい「食事」に関する音といえば,「しゃきしゃき」である。新鮮な生野菜を「シャキシャキ」と音をたてながら,夫々の野菜の植物繊維を,思いっきり嚙み切ってみたい。昨今は「オーガニック栽培」で「要冷凍」と書かれた袋入りの「ブロッコリー」を電子レンジで数分暖め,器に溜まった汁は全て捨てて,「シャキシャキ」どころか「無音でむしゃむしゃ」と噛んでいる。「オノマトペ」ノートには,「つるつる,しこしこ,ことこと,ほくほく,さらさら,ぱくぱく,かりかり,ばりばり,こりこり」等の他に「ぐびぐび,がぶがぶ」等の「飲み物」まで含めれば,まだまだ沢山の言葉が残っているが,人間にとって欠かせない「飲食」に関する言葉だけに,「オノマトペ」だけではなく,「料理名」の起源や由来なども含めれば,きっとそれなりの楽しい本が出来上がるに違いない気もするが,昨今のスマホの急速な普及や各種情報源の多様化も含め,若者だけでなく,小学生や高齢者までが「読書」をしなくなり,そのため,全国各地で,本屋の規模縮小,閉店,廃業が話題になっていることや,義務教育の小中学校でも,紙の教材ではなく,生徒各人に持たせたタブレットの画面に教材が出るだけではなく,教科書迄も紙のものが廃止される傾向にあることを考え併せると,上記のような本を書いても,あまり売れそうにもなく,打算的かもしれない,チャレンジする気も何故か起きない。これも歳のせいか?
私は,23年前に94歳で他界した明治生まれの父の真似をして,社会人になって直ぐに「蔵書印」を注文し今でも購入した本には必ず押しているが,今や蔵書が増えることは自慢でも何でもなく,どうやら「ホンを読む 死ねば焼かれる本を積む」だけのようだ。