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本物語

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第85号 2026.7.25

〔俳句を遊ぶ 5〕「人事界の現象」を詠む

菅原 薫
東京都小金井市

 私が初めて俳句の本を読んだのは中学2年の時で,高浜虚子著「花鳥諷詠」でした。虚子は美しい「自然界の現象」を客観的に詠むことを重視しましたが,私はそれでは飽き足りず, 「人事界の現象」を重視するべきだと思いました。大虚子への小さな抵抗です。
  径(みち)に出し 筍(たけのこ)二つ 如何(いか)にせん  虚子
  藪(やぶ)を出て 生(お)ひし竹の子 盗み茹(ゆ)で  香風
 その思いは,米寿を越えても変わりません。自然詠の中に,人間の日常生活や情意の一端を盛り込みたい。軽く,平明に,ユーモラスに。
 現在は,少年の日をなつかしんだり,老年の今を嘆いたりしています。
  餓鬼三人(みたり) 夕日へ草矢 放ちたり
  馬跳びの 小馬つぶれて 息白し
  ヴィオロンを 背( し)負(ょ )って少女や 初つばめ
  ぢい孫の 金ピカチューと 端居かな
  ぢいひとり 竹の子御飯 炊いてみる
  ひげ剃らず マスクし春の 銀座行く
  青田売って 万博を見に ぢいひとり
  初恋の 女(ひと)も猫背に 針供養
  ぢい病んで 卯の花腐(くた)し 我れ腐し
  秋の夜や 昔の酒豪 今一合
  頻尿の ぢい寒の日々 生き急ぎ
  友死すの ぢいにメールや 花ふぶき
  あれ,我れは 最長老ぢゃ 花の宴
  孫を釣る 餡蜜(あんみつ)買ひて ぢいや笑む  香風
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