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米寿の祖母(ばあば)は、はにや狂

水澤葉子 著

米寿の祖母

著者は、超難解と言われる『死霊』を読み続けて三十年。埴谷の世界へご案内します。

祖母が孫娘とその友人二人を相手に『死霊』全九章を月に一章ずつ、対話形式で講義。 難解な箇所は斜め読みして、気になる章節は四人で話し合って、『死霊』を完読します。

  • 四六判・236ページ・上製本・本文1色
  • 定価 2,750円(税込)+送料210円

著者紹介

1955年 宮城県立岩ケ崎高等学校卒。和文タイピスト、軽印刷業、喫茶店、寮母など。

1995年 埴谷雄高の『死霊』に出合い、以降三十年、著者の風貌と、一作に懸ける執念に惹かれて、 何遍となく読み返す。『死霊』の虜を自認。

本文紹介(抜粋)

第一章 癲狂院にて――

「最近の記録には嘗て存在しなかったといわれるほどの激しい、不気味な暑気がつづき、 そのため、自然的にも社会的にも不吉な事件が相次いで起った或る夏も終りの或る曇った、 蒸暑い日の午前、瘋癲病院の古風な正門を、一人の瘠せぎすな長身の青年が通り過ぎた」

と、この『死霊』の書き出しが、埴谷雄高の文体でもあります。 三人が大きくうなずく。

第四章 霧のなかで――

奈緒が右手を肩まで上げた。「乳白色の霧のなかを行く三輪与志の姿から書き出され、 どこかから時を敲つ響きが聞こえ、今朝がたの瘋癲病院の時計台を連想させ、 それが七つを数えた、とありますから、第四章にしてまだ第一日目なんだと、 まずびっくりしました」

「そうなんですね。この『霧のなかで』最終ページの文面に、 どこか遠いところから時を敲つ響きが数時間前と同じように、 霧の微粒の層を透して伝わってきた、と書いてますから、 四章が終わった時点で、なおこの小説は第一日目ということですね」

第九章 《虚体》論――大宇宙の夢――

「最初わたしね、とてもドキドキしたのは、最後にやって来た黒川建吉の肩に担がれた、 重そうな、円筒形の奇妙な物体。これは一体何なのって?」

「そうなんです。で、もう二十数年にもなる話だけれど、 わたしもこの円筒形の金属が何なのか、とても気になってしょうがなかった。 それで、埴谷雄高論で一家言お持ちで、数多い埴谷評論家の中でも、 わたしの主観では人間的に熱そうな川西政明氏に、 文書で『祝いの席に持ち込まれた、あの円筒形の金属は何でしょうか』と問い合わせました。 返事はすぐにハガキで届いたわね。ダイナマイトです、って」

『死霊』について

『死霊』は、超難解とされる、埴谷雄高の形而上小説であり、妄想小説です。 この小説一作に、埴谷は50年の歳月を捧げています。

その『死霊』を、私は仲間を集めて30年間読み続けてきました。 この度著した『米寿の祖母は、はにや狂』は、特異な埴谷の世界への案内書です。

『死霊』の舞台は1934年(昭和9年)と言われます。 三輪与志と津田安寿子の純愛を縦軸に、 当時の青年たちの思想や行動が描かれます。

時には埴谷自身の体験も挿入した、 時代の犠牲になった先達への、深い鎮魂の書でもあります。

『死霊』は1946年に発表され、その後長い中断を経て、 1975年に続編が発表され、1995年まで連載されました。

埴谷雄高はドストエフスキーから影響を受け、 『カラマーゾフの兄弟』を下敷きに、 個性の強い人物たちを登場させています。

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