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                 後世のために繋げる

                           高橋 禮次郎(東京都小平市)

 人生七十半ば過ぎ,「もうお迎えが」と感じるときに,「男,七十代の使命」と問い質され,即座に『大辞林』を開き意味を知る。
 一 使者として受けた命令。使者としての務め。→「特別な―を帯びる」
 二 与えられた重大な務め。責任を持って果たさなければならない任務。→「教師の―」と。
 これにもう一つ付け加えるなら,命を使って行う事。その命を使って行う事とは何だろうと,ふと想像した。
 命を使っても果たさなければならない行いは何かと追求しても,何一つ見当たらぬ自分の無意識の中で哀れみを垣間見る時,此の世に生まれ来て生き永らえるだけに邁進して来た日々の中で,一時的にせよ国の繁栄に携わりながら歩き通し定年を迎え,安易な老後の生活に浸っている中で何もかもに愚痴を言い通して嘆いて生き永らえている七十代の我に,命を使ってまで行う事が本当に有るのだろうかと思い耽った時,此れまで何度も言葉にする「人其々」という言葉が襲い掛かって来る。人は此の世で其々の立場を得て暮らして生きている時に,先代の繋がりがある自営業とか,家系を絶やさぬ為に生き永らえている人達は其処に確かに与えられた使命を背負いながら生きていても,それらの使命は自分自身では納得しない使命だとしたとしても、無言の中で感じ取れる使命と言っても良いのでは。では一般人の使命とは何かと問う時,大半の人達は定年という人生最後の峠を登りきった時に,此れまでの社会的権威を剥ぎ取られ、同時に使命は果たしたと雄叫びを挙げながら,人生最後の楽園生活を夢見て快楽の老後生活に入り込んでいるのでは。其処に再度使命を感じ取り生き永らえる人は此の世にどれだけ存在するのだろうか。
 本来使命とは,生まれ去り逝くまで人に与えられた務めとしても,其れを納得して生き永らえる事がどれだけ難しく,又大切さを知っていながら,出来得ない現実で,人として生き逝くとした時,誰もが出来える使命はと思い浮かんだ事は,其々の人達が此れまで生き永らえて来た中で培われた知識を後世の為に繋ぎ尽くす事ではと,此れまで習得した事を後世にという意識を持つ事が誰しもが出来得る使命ではと。使命とは自分自身の為でなく後世の人の為にと思う気持ちを持ってこそ,紛れも無い使命だと痛感した。自分自身が出来得る如何なる事でも良い。人の為に,後世の為に繋ぐ意識を持って歩めば,自分自身は勿論,繋がれた人達も生まれ来て去り逝く意味を知るのでは。微笑む事でも,言葉掛ける事でも,見詰める事でも,文字にする事でも,歌う事でも,どんな小さな事でも良い,後世の為に繋げる意識に感謝の気持ちを添えて生き永らえ行く事が,人に与えられた本当の使命なのではないかと,遅まきながら今回痛烈に感じ取った次第です。



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