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【隠居のたわごと】
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                            小櫃 蒼平(神奈川県相模原市)

善公 おや,ご隠居。朝から浮かない顔をなさってますね。
隠居 だれかとおもえば善さんか。いやね,またお上が困ったことをしでかしたのでね。いつものことだといえばいつものことだが……。
善公 またゴマメの歯軋りですかい。
隠居 まあそうだが,歯軋りだってみんなが一斉にやってごらんよ。隣で暢気に寝ている人間を起こさないともかぎらない。
善公 その歯軋りの元はなんです?
隠居 先日国会(衆議院)で可決された「特定秘密保護法4党修正案」です。朝日新聞で全文(2013.11.27)を読みましたが,これが素人には珍紛漢紛。それに「第7章 罰則」や「別表」に,やたらと「その他の」という文言が出てきます。
善公 たとえば「その他」ってのはどんなもんです?
隠居 「その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為……」 「その他の安全保障に関する重要なもの……」 ,あるいは「その他の外交の用に供する暗号」などといったものですが,この「その他」という言葉はつねに恣意的な解釈がひとり歩きをはじめる危険があります。それに「国旗・国歌」の制定のとき,当時の政府は,それを決めたからといって強制する気はない,といっていたのに,学校行事で国歌を歌わなかったという理由で,教師が処分されたではありませんか。
善公 でも国が「秘密」を守ろうとするのは必要なことじゃありませんか。あっしのところだってひとさまに秘密にしていることはありますぜ。
隠居 国として守らなければならない秘密はあるでしょう。だから必要な防御策はとらなけりゃなりません。でもね,識者の多くは,いまある法律をきちんと運用していけば充分に対処できるといっています。屋上屋を架すような,しかも緊急のこととしてこうした法律をつくるには何か特別なねらいがあると勘ぐりたくなる。沖縄返還のときもアメリカとの間に密約がありましたね。今度の「特定秘密保護法」もどこかの国への義理立てという噂もあります。
善公 国益のためではない?
隠居 ほんとうに必要なものなら国民が制限を受けてもやむを得ないが,行政機関が恣意的 ― 例の「その他」にかかわる ― に秘密指定し,国民の知る権利を制約するとなると問題です。その危惧がさまざまな媒体でいわれています。
 ところで、小説家の円城塔さんが,朝日新聞の「今こそ政治を話そう/好きな子の名前は秘密」(2013.11.21)でおもしろいことをいっています。「秘密という言葉はどこか間が抜けており、子供だましっぽいところがある。……秘密を持っているのだと宣言した時点でもう大半が台無しだ」 ,「本当に何かを隠したままにしておきたいなら、まずその何かが存在することさえ他人に知られてはいけない」と。それにしたがえば,政府が「特定秘密保護法」を国会に上程したことは完全に失敗です。なぜなら政府が「秘密」にしようとすれば,国民は「知る権利」を行使するからです。すでにその闘いがはじまっています。円城さんはいいます
 ― 「秘密とは何なのか自体が秘密」なので,「秘密は存在するではないかと反論しても無駄」。なぜなら「「秘密が存在しないという理由が秘密でも構わない理由も秘密」という答えが返ってくるに決まっている」からだと。この絶望的な繰り返しがこれからわれわれを苦しめることになります。「「秘密」を具体的な文章に展開したときに「秘密」の語がまた出てこないのが重要である」ともいっていますが,しかしもう時期を失したかもしれません。円城さんの文章は「特定秘密保護法」に対する直接的な批判ではありませんが,法案の根幹にある「秘密」という言葉の微妙ないかがわしさが瞭かにされたようでおもしろかった。
善公 でも便利な言葉ですね,「秘密」ってのは。
隠居 ほんとうに。でもなぜ政府は「特別秘密保護法」の成立を急ぐのだろう? 法案担当閣僚の森雅子氏は「さらなる改善を今後も、法案成立後も尽くしていく努力もしたい」(「朝日新聞/社説」2013.11.16)と,「さらなる改善」の必要があることを認めているのに……。それに法案反対が42%,範囲拡大「不安」が68%(「朝日新聞」2013.11.12)もあるというのに……。まったく不可解。
善公 そもそも安倍さんのいう,「強い日本を取り戻す」がわからない。「強い日本」て何? だれから「取り戻す」というの? 考えてみればそんなひとを選んだあっしたちの責任ということじゃないですかね。
隠居 おまえさんもいいことを言うね。 「ねじれ解消」なんていう言葉にだまされて
 ― もっとも民主党にもうんざりでしたがね ― 「強い自民党」なんてのをつくっちゃったのが間違いだったのさ。ほんとうはねじれていてよかったんだよ。それが歯止めになるのだから……。さて,ここらでお茶を一服としましょうか。





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