有限会社 三九出版 - 冬来りなば…


















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               冬来りなば…

                三九出版

❁「てえへんだー、てえへんだー!!」  
正月早々江戸っ子よろしく飛び込んできたのはKでありました。  
「 駅前書店が潰れたぞー!」  
“何!俺がミポリン写真集を買ったあの青春の駅前書店がか!?”  
「俺が“檸檬”を置いた駅前書店が!」  
…そうだった。俺は中山好きでKは梶井好きだった。教科書に載っていた梶井の写真を見てKの奴が言ったもんだ。  
“お前,梶井に似てるなぁ。羨ましい”  
―こら,誰があんなゴリラ顔じゃい!ってかお前,本当に檸檬を置いたのか?あの漫画と雑誌だらけの文学の香り薄き駅前書店に。  
「俺が置いた檸檬のせいで駅前書店が潰れてしまったあー!」
…安心しろ。お前が30年前に置いた檸檬なぞ,その日のうちに処分されとるわ。
○“出版不況”と言われて久しいですが,実に全国の書店数は1999年の22,296店から2014年には13,943店にまで減少しており(アルメディア),書籍の売上げは1996年をピークに31%の減少,雑誌の売上げは97年をピークに45.5%の減少(出版科学研究所)なんだそうですありゃま。   
しかし紙の書籍と電子書籍を合わせた売上げの数字は,2012年9343億円から2013年の9366億円に微増(インプレス総研)という統計もあり,出版社の直販やアマゾンの販売が統計からもれていること,更にネットでの情報が格段に増えていることを考慮するならば,少なくとも人々が“読む量”は確実に増えているとも言えるわけです。
◇無論,量が増えればいいというわけではなく,むしろ“量が増えたから問題なんだ”という面すらあるでしょう。好ましい方向に向かっているとは思えない現状は確かにあります。   
ただ“読む”ことに対する需要そのものは些かも失われてはいない,それも確かなことではないでしょうか。 ❁「ああ~!次は駅前蒲団店が潰れてしまう!」 
――お,お前,まさか…「俺が匂いを嗅ぎまくった蒲団店が!」
…… 縁を切りたい……      (G)
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