☆東日本大震災私は忘れない
天災，人災，そして「権力災」
澤田 宏勝（千葉県松戸市）
東日本大震災は，言うまでもなく，地球上に起きた自然現象としての大地震と大津波で，予測できなかった天災であった。しかし，今だからこそ忘れることなく記憶し続けなければならないのは，あれほど安全で，低コストで，クリーンエネルギーだと，神話の如く豪語し続けてきた東京電力福島原発が，あの程度の津波の高さや強さは，3年も前から専門家会議や社内会議で予期され警告されていた～2008年，政府の地震調査研究推進本部の予測から，東京電力の社内で浸水高で最大15.7m.の大津波の発生の予見可能性を討議されていた（朝日新聞・2015.8.13朝刊「プロメテウスの罠」参照）～にもかかわらず，それに対応しなかったがために脆くも破壊されたことである。その結果として原子炉爆発メルトダウンや水素爆発で世界レベルの放射能汚染という大惨事を引き起こし，さらに5年半余を経た今なお深刻な難題が解決されぬまま，ますます混迷の度を深くしている。つまり，この原発事故は，疑いもなく“人災”だということである。そしてこの人類史上最悪の“人災”は福島はじめ他の被災者の人々を未だに苦しめ，命までも奪っている。
「天災は忘れたころにやってくる」とは寺田寅彦の名言であるが，最近の日本列島では，忘れないうちに次々と大災害が襲来し，日本中どこに居ても安全，安心な所はないという有様である。日本の災害史を顧みれば，石器時代や縄文の古（いにしえ）から，つい最近の九州熊本頻発地震や阿蘇山噴火まで，数え切れぬ程の大災害を潜り抜けて生き延びてきたのが，日本に住む人々である。だからある面，この災害列島に生きる以上，“天災”は運命と諦めて，せめて自分はその時に遭遇しないよう祈りながら生きるしかないのだ。そう考えることが精神衛生上賢明であると言ってよいだろう。
それにしても，“人災”としてこれほどの原発大事故を起こして，無数の人々の命や家，田畑，海山の自然を奪っておきながら，その責任を問われた人物が，今の今までひとりもいないばかりか，本来加害企業である東京電力に逃げ得を許してきた政府，検察当局は，被告人ら全員を不起訴処分という決定をした。更に検察審査会から「起訴相当」の議決を受けた捜査でも不起訴処分とした。しかし，あまりに見え透いたこうしたヤリ口に，福島原発訴訟団の再度の検査審への提訴で，2015年7月15日，「強制起訴」議決となった。つまり，東電元三役の3人は刑事訴訟で殺人罪の法廷に引き出されることになったのである。しかし，裁かれるべきはこの3人だけではないだろう。我々が忘れてならないのは事故前まで原発を推進してきて，今また再稼働を推し進めている歴代および現政権， 事故後少し鳴りをひそめていた原子力村といわれる勢力である。私は，こうした政権の動きや勢力が蠢きだしている今の状況になんとしても強制停止をかけなければならないと考える。
例えば，直近の新潟県知事選挙だ。泉田知事がなんとも不明瞭な不出馬を決めたため，「福島の事故の原因が究明されなければ、東電柏崎刈羽原発の再稼働は認められない」という知事の真っ当な姿勢を継承する候補者が危うい状況にあるという。また鹿児島県三反園知事が熊本地震の頻発に脅える県民や学者知識人の川内原発停止の声を代表して再三に亘り九州電力本社に申し入れているという現実もある。
しかし，東電や九電ばかりか原発を抱える電力各社は，再稼働を極めて強力に進めようとしている。各社は，表立っては原発立地の自治体とは事を構えず，裏の実働部隊の電気事業連合会という団体が電力各社から工作資金を受け取り，得意技のハニー・トラップから選挙応援など，労組も巻き込んで原発反対勢力をなし崩しにしているという。まさに「原発ムラ」恐るべしである。
その上，経産省の東電委員会で，東電は，原発再稼働をおゝっぴらに推進する政府の意向に悪乗りして，安全，安価，クリーンだとサンザン宣伝しておきながら，つい最近，自ら想定した原発事故時の賠償責任に上限を設けて，それを超えた分は税金や電気料金上乗せなど，国民負担で補う“有限責任”案や，新電力会社にも負担してもらうなどと，原子力委員会の専門部会に臆面もなく提出してきているのだ。原発事業で儲けた利益は自分たちのフトコロに入れ，いざ事故時には税金や電気料金で国民に負担させようというのだから，全く虫のいい話と言うほかない。それでなくとも福島原発事故で賠償，除染，廃炉費用など東電への国からの貸付，つまり我々の税金から既に9兆円余も投入され，これから先も汚染水の処理や核燃料ゴミ処理など，気の遠くなるほどの歳月と費用がかかってくるのは明白であるというのに。
原発。今廃止させずに，いつ廃止させるのか。ゴマカサレルなかれ，忘れるなかれ‼
そして自然による大災害は「人災」と「権力災」というものをもたらすことをも忘れてはならない。
合掌
天災，人災，そして「権力災」
澤田 宏勝（千葉県松戸市）
東日本大震災は，言うまでもなく，地球上に起きた自然現象としての大地震と大津波で，予測できなかった天災であった。しかし，今だからこそ忘れることなく記憶し続けなければならないのは，あれほど安全で，低コストで，クリーンエネルギーだと，神話の如く豪語し続けてきた東京電力福島原発が，あの程度の津波の高さや強さは，3年も前から専門家会議や社内会議で予期され警告されていた～2008年，政府の地震調査研究推進本部の予測から，東京電力の社内で浸水高で最大15.7m.の大津波の発生の予見可能性を討議されていた（朝日新聞・2015.8.13朝刊「プロメテウスの罠」参照）～にもかかわらず，それに対応しなかったがために脆くも破壊されたことである。その結果として原子炉爆発メルトダウンや水素爆発で世界レベルの放射能汚染という大惨事を引き起こし，さらに5年半余を経た今なお深刻な難題が解決されぬまま，ますます混迷の度を深くしている。つまり，この原発事故は，疑いもなく“人災”だということである。そしてこの人類史上最悪の“人災”は福島はじめ他の被災者の人々を未だに苦しめ，命までも奪っている。
「天災は忘れたころにやってくる」とは寺田寅彦の名言であるが，最近の日本列島では，忘れないうちに次々と大災害が襲来し，日本中どこに居ても安全，安心な所はないという有様である。日本の災害史を顧みれば，石器時代や縄文の古（いにしえ）から，つい最近の九州熊本頻発地震や阿蘇山噴火まで，数え切れぬ程の大災害を潜り抜けて生き延びてきたのが，日本に住む人々である。だからある面，この災害列島に生きる以上，“天災”は運命と諦めて，せめて自分はその時に遭遇しないよう祈りながら生きるしかないのだ。そう考えることが精神衛生上賢明であると言ってよいだろう。
それにしても，“人災”としてこれほどの原発大事故を起こして，無数の人々の命や家，田畑，海山の自然を奪っておきながら，その責任を問われた人物が，今の今までひとりもいないばかりか，本来加害企業である東京電力に逃げ得を許してきた政府，検察当局は，被告人ら全員を不起訴処分という決定をした。更に検察審査会から「起訴相当」の議決を受けた捜査でも不起訴処分とした。しかし，あまりに見え透いたこうしたヤリ口に，福島原発訴訟団の再度の検査審への提訴で，2015年7月15日，「強制起訴」議決となった。つまり，東電元三役の3人は刑事訴訟で殺人罪の法廷に引き出されることになったのである。しかし，裁かれるべきはこの3人だけではないだろう。我々が忘れてならないのは事故前まで原発を推進してきて，今また再稼働を推し進めている歴代および現政権， 事故後少し鳴りをひそめていた原子力村といわれる勢力である。私は，こうした政権の動きや勢力が蠢きだしている今の状況になんとしても強制停止をかけなければならないと考える。
例えば，直近の新潟県知事選挙だ。泉田知事がなんとも不明瞭な不出馬を決めたため，「福島の事故の原因が究明されなければ、東電柏崎刈羽原発の再稼働は認められない」という知事の真っ当な姿勢を継承する候補者が危うい状況にあるという。また鹿児島県三反園知事が熊本地震の頻発に脅える県民や学者知識人の川内原発停止の声を代表して再三に亘り九州電力本社に申し入れているという現実もある。
しかし，東電や九電ばかりか原発を抱える電力各社は，再稼働を極めて強力に進めようとしている。各社は，表立っては原発立地の自治体とは事を構えず，裏の実働部隊の電気事業連合会という団体が電力各社から工作資金を受け取り，得意技のハニー・トラップから選挙応援など，労組も巻き込んで原発反対勢力をなし崩しにしているという。まさに「原発ムラ」恐るべしである。
その上，経産省の東電委員会で，東電は，原発再稼働をおゝっぴらに推進する政府の意向に悪乗りして，安全，安価，クリーンだとサンザン宣伝しておきながら，つい最近，自ら想定した原発事故時の賠償責任に上限を設けて，それを超えた分は税金や電気料金上乗せなど，国民負担で補う“有限責任”案や，新電力会社にも負担してもらうなどと，原子力委員会の専門部会に臆面もなく提出してきているのだ。原発事業で儲けた利益は自分たちのフトコロに入れ，いざ事故時には税金や電気料金で国民に負担させようというのだから，全く虫のいい話と言うほかない。それでなくとも福島原発事故で賠償，除染，廃炉費用など東電への国からの貸付，つまり我々の税金から既に9兆円余も投入され，これから先も汚染水の処理や核燃料ゴミ処理など，気の遠くなるほどの歳月と費用がかかってくるのは明白であるというのに。
原発。今廃止させずに，いつ廃止させるのか。ゴマカサレルなかれ，忘れるなかれ‼
そして自然による大災害は「人災」と「権力災」というものをもたらすことをも忘れてはならない。
合掌
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