有限会社 三九出版 - 墓地改葬と墓じまいと納骨堂


















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☆《自由広場》 

           墓地改葬と墓じまいと納骨堂 

             佐藤 芳博(宮城県多賀城市) 

 墓じまいを考える時,原発被災地で放射能に汚染された先祖の遺骨を残さざるを得ない福島の人々の無念,大津波で墓石も遺骨も流された人々の姿,北海道胆振東部地震で墓じまいを考える人々のことが脳裏に浮かびます。我が家の菩提寺は仙台市若林区新寺にあり,墓地は青葉区葛岡に移転する際に,300年は持つと移転事業者の仙台市から説明があったそうですが,大震災後に修復せざるを得ない状況になりました。
 お墓の維持で子孫に負担を掛けたくないと思う人々は,経済の長期低迷と共に増え,高度成長期に,都会に働きに出てきた世代が,都市近郊に住居を構え,退職後に故郷に戻ろうとしても,集落崩壊,バス路線廃止で,高齢者や病院通いを欠かせない人々は住めなく,居住地に近い墓地に,先祖の遺骨を改葬する人が年々増えています。
 改葬する際に,住職から反対され必要もない書類を要求されたとの相談が増えています。人口が減り,檀家が減少し,無縁墓が増え,墓地が減少すれば,僧侶にとっては死活問題で,そのような地域で職を求めることも困難で,包括法人としての本山が対策をとり,縁ある人々が解決策を考えなければ,仏教への批判が増えるだけです。
 信者の納骨に携わっている宗教法人職員が,「墓地は,公営か,檀家・信徒のための範囲で宗教法人が造成することが望まれ,事実上の行政指導も行われ,衛生上の規制も厳しくなっている」と証言しています。さらに,墓地埋葬法が出来る前の,歴史的に古い墓地の整理をしなければならない事例も少なくないとのことです。
 墓地の使用者は,改葬しようとする時,遺骨を埋葬または預けてある寺などの所在地の区市役所・町村役場に申請しなければなりません。公営墓地,農耕地の一角,集落の中や自宅の敷地内に墓地があり,檀家にならなくても済む場合もありますが,先祖伝来の墓地を,故郷から現在住んでいる場所の近くに改葬する場合には,墓地等の管理者の証明印が押された改葬許可申請書が必要になります。
神奈川県から世田谷区に墓地を改葬しようとして改葬許可申請書に菩提寺の証明印をお願いしたところ離檀料500万円を要求され, 新たな墓地の永代使用料500万円,先祖の墓地整理と墓石処理費,新墓地の墓石の購入費用を考え断念されたそうです。 先祖の供養に熱心で, 東京の古刹に親族の遺言で永代供養墓を建てた方によると,「東京23区内は,寺院墓地の永代使用料500万円が多い」とのことです。歴史的に金品を贈与された檀越が,緑豊かで文化財が豊富な神社仏閣を残すことに貢献し,明治以降,お布施で現世にお返ししていく人々が,墓地維持に寄与しています。
 ところで,最近,離檀料という言葉が,頻繁に出てきますが,墓地移転を含め宗教に関する相談に応じている窓口の担当者が,「離檀料」を知らず,相談者に問い返されたこともあるとのことです。菩提寺から改葬する際に,読経をして頂き気持ちとしてのお布施をするのは,常識の範疇です。驚くことに,墓地に埋葬されている先祖が7柱なので,1柱100万円で,合計700万円の離檀料を請求された方がおられます。
 このように,不法,不当な金額の要求をされた場合は,墓地を所管する自治体,無料法律相談,菩提寺の本山の寺務所に相談されることをお勧めします。弁護士が間に入って解決した事例もあります。お布施は,あくまでも善意の喜捨金の志納です。
 少子化の中で,長年お参りが無かった墓地に孫・曾孫などが来ることもあるので,護寺会費の納入が無くなっても墓地をそのままにしているご住職さんもおられます。縁者が継承して,お寺との関係が復活するのを待つ方が,教えに沿うと語る寺院役員もおられます。御仏は,お賽銭を望んでいるのではないのでと仰ってお賽銭箱を置かない名僧もおられ,安堵感を覚え合掌する人々が多いことも忘れてはならないです。
 納骨堂の宣伝に接し見学に行き,「親族の墓に入りにくいLGBTのお二人が亡くなられて一緒に納骨されて,一定の年月が経つまで友人知人がお参りできる様にしています」とのことを聞きました。小生の親友知己には,樹木葬,海洋散骨の契約をされた方もいます。常日頃,仏壇に手を合わせることが無くても,入学試験,結婚の際に,神社仏閣を巡り,先祖の地にお墓参りに行く人もいます。宗教施設の維持管理に永続性があるかも考えて,納骨の場をどこにするか決めて,子孫や縁者が,合掌する場が残っていないと悩まれることが無いようにする配慮も必要だと思います。
 伊達政宗は,仙台市の青葉神社で神様,瑞鳳殿で御仏になり,松島町の瑞巌寺と京都市妙心寺塔頭の蟠桃院に位牌が安置してあり,高野山に奥州仙台伊達政宗及び殉死者供養塔があります。それらの場所を巡り,自宅の仏壇や先祖の写真にお供えし合掌することで,お墓参りは都合のつく時にする様にして,墓地改葬に伴う巨額の出費を避け先祖の地との縁を保つことを選択するのも,一つの慰霊のあり方と考えています。 


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