有限会社 三九出版 - 〔新作●現代ことわざ〕 百聞は実験に如かず


















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         百聞は実験に如かずその②

              笹氣 光祚(宮城県仙台市)

 大学受験のとき,1年間の予備校通いをしていた。というのも,高校時代は,バスケットボールに夢中で,全国大会でベスト16に入る成績の実力があり,2つの大学の先輩から誘われていた。けれども父の印刷会社を継承しなければならない,という使命感をもっていたので,地元の国立大学工学部を希望していた。同時に,父が見つけてきたK大学工学部の新しい学科を受験したが,そんなにうまくいくわけもなく,見事に「浪人」を経験することになった。
 その予備校の数学の先生が,当時の希望大学の数学の教授。最初の授業で,黒板に「灰色」(当時は受験生活は灰色とされていた)と書き,赤いチョークで脇に「バライロ」と書いた。理由は,これほど集中的に勉強するのは,予備校通いするときだ,ということ。その先生が,問題を解くときに,常に「百聞は実験に如かず」と宣う。知識を結集して取り敢えず解いてみる。ダメなら別の方法を駆使する。「一見」ではなく問題へ挑戦しろということだと解釈した。さらにその後,別の数学教授の下に週に1度通い,問題集から10題を解いて指導をもらうことを繰り返した。お陰で,2年目のK大工学部を受験したとき,1題あたり20分の難問に立ち向かうことができ,合格率16倍の難関を突破して入学できた。
 卒業後,印刷業に携わり,新工場への全面移転や,活版を主としている印刷技術が電子化の波に吞まれていく歴史的過程を体験し,一段落した頃,全く畑違いのスポーツクラブ経営に手を染めてきた。その間,様々な問題が生じるたびに,「百聞は実験に如かず」と,悩むより先に問題に積極的に立ち向かうことを考えて,行動の指針としてきた。
 時には,行動後に,失敗したと思うこともあったが,結果は大した問題ではなく,無難に問題を乗り越えてしまっている。
 後期高齢者になった現在も,周囲に起こる問題には,あれこれ悩まずに,取り敢えず積極的に立ち向かう姿勢で「実験に如かず」を実行している。
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