有限会社 三九出版 - 《自由広場》 ハングルへの再挑戦


















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           ハングルへの再挑戦

          伊藤 卓雄(埼玉県所沢市)


 2020年は,新種コロナウイルスの流行が世界中に拡散して,とどまるところを知らない。1年前の春,元号が「令和」に改まり,世界の平和と安寧を祈念したことが夢のようだ。
 当時すでに,世界的には激動の兆しがあったが,顕著に表れた事例の一つが,米国・北朝鮮の両首脳の板門店会談だ。この際に両首脳が並んでDMZ(非軍事境界線)を越えたときの報道写真は,世界に衝撃を与えた。この時,ハングルに再挑戦しようという思いが芽生えてきた。
 近年,日韓関係の悪化の過程で,TVニュース等で伝えられる写真を見るたびに,写真のコメントや群衆が掲げるプラカードや横断幕の言葉を全く理解できないことが何とも残念だった。雰囲気からある程度は推測できても,貴重な資料を目前にしつつ,民衆の叫びが理解できないことは歯がゆかった。同時期の香港発の報道写真中の,漢字交じりで書かれたプラカード類とは,対照的だった。歴史的な場面が,ハングルへの再挑戦への刺激となったのだ。
 そして,齧りかけたままの朝鮮語学習用の新書本や,意を決して買い込んだものの死蔵していた「朝鮮語辞典(小学館発行)」を取り出して眺めたり,興味の赴くままに,インターネットの韓国語のサイトを検索した。
 ある時,「カナダラ順」(カナダラ表)という,日本語の「アイウエオ順」(五十音表)に相当するものがあり,韓国の辞書辞典類がこれに沿って編集されていることを知った。さらに,表音文字であるハングル(正確には,「表素文字」(音素記号で構成され,広く朝鮮民族に用いられる特別の文字))による表記の言葉に,かなりの割合で「漢字語」が潜んでいることを知り,それまで無味乾燥に見えていた文字列が宝の山のように思えてきた。
 このころ詠んだ愚作が次の2首である。
● 謎解きの チャレンジ誘う 記号群 漢字語基本と 知れば尚更
● ハングルの 謎めく記号の 連なりも 基底の漢字語 知れば親しき
 やがて,我々はいつのまにか韓国語に触れていることも分かってきた。例えば,「有難うございます」という時に使う「カンサハムニダ」という言葉だ。表音文字であるハングルを日本語で表記するのは難しいので,ハングル表記の部分を「片仮名」に置き換えてみても,日本語の音が並ぶだけで分かりにくい。これに「漢字語」を交えると「感謝ハムニダ」となる。「カンサ」が語幹で「感謝」を,「ハムニダ」は「いたします」を意味する。この部分は変化して,過去形などが表現される。これなら分かりやすい。
 さらに,文章の構成を見ると,韓国語の場合,主語と動詞などの語順が,幸いにも日本語の場合と同じであるから,文章は,頭から読み下していけばよい。欧文の場合に,頭の中で,語順をひっくり返して,文意を辿るのに苦労するのにくらべると,余程気が楽。勿論,漢字語以外の固有表現もあるので要注意だが,名詞などの語幹部分が漢字語で理解できる分,日本語力が利点になる。
 次に,助詞(単語や文節に続いてそれらと他の語句の関係を示す)が分かれば,文意がかなり推測できるようになる。その助詞は,日本語と同様,数が多く,使い方も微妙なので,難しいことには変わりないが,これには慣れるしかないようだ。それでも,日本語の「へ」(発音は「え」)などのように,同じ感覚で使える語もあるので,助けになる。例えば,ご存知「釜山港へ帰れ」の「へ」(日本語)は,ハングル表記の「エ」にあたり,分かりやすい。
 あとは,多くの言葉・単語に触れるしかないと,日本語の感を頼りに,インターネット上の諸情報に当たり,今は,次の資料を重宝している。
(1)「Kpedia」(辞典) (2)「excite」(翻訳ソフト) (3)東亜日報日本語版(韓国紙)などだが,これらでは,聴く力はつかない。
 そこで,有用なのが,上記東亜日報の記事右上部の「表示」の活用だ。「語版変更」用の表示(「ハングゴ」)をクリックすると,ハングル版の紙面に変わり,さらに,同所にある音響印をクリックすると,原語で読み上げてくれる。わが国の新聞紙上にはない。何とも有り難い機能だ。また,マイクロソフトの読み上げソフト「Text To Wav」で,テキスト情報を読ませるとリスリングにも役立つ。
 挨拶用語である「アンニョン(安寧)ハセヨ」という表現は,日本語で「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」などと言う場面でよく使われるらしいが,この言葉を気軽に使える日が来ることを夢見ながら,暫くは奮闘してみようと思っているところである。最後までお読みくださり,「カンサハムニダ」。
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