有限会社 三九出版 - 《自由広場》    ただ一生懸命に目の前を生きる


















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                ただ一生懸命に目の前を生きる
                         鈴木 孝枝(東京都新宿区)

 私は,それまでの仕事を辞め,独立して4年目の夏を迎えました。現在は講演・研修講師の仕事を主に活動しています。毎日,世の中の厳しさと共にワクワクする仕事に携われることに,感謝しながら取り組ませていただいております。この仕事をしていると,沢山の方に出逢います。最近は,20代女性の相談話を聞くことが多いのですが,概ね28歳で大きく悩むような傾向にあるようです。
「このまま,この仕事を続けていいのか」
「この人と一緒になって幸せになれるのか」
「私は,このまま変化せずに年を取るのか」
 戦後の高度成長と共に,女性の社会進出も徐々に進み,晩婚化,少子化という社会的な問題がクローズアップされ続けています。その一端を担う女性たちの多くは,未だに「自分はどうしたいのか」選択出来ずにいるようにも見えます。グローバル化している時代にどう変化すれば後続によい影響が出るのか。女性の本能で敏感に,変化に伴うリスクを感じているのでしょうか。私はありがたいことに,この問題に直面する前に,ある一つの解決策に出会うことが出来ました。それは,たまたま26歳の時,福祉留学先のデンマークで教わった「自立」というものでした。社会福祉国家デンマークは女性の就業率は8割を超えています。デンマーク人女性の多くは自立=個人の人生を楽しんで生きているようです。この自立の意味ですが,私は肩パッドを沢山入れて男性と競り合うのではなく,女性は女性らしく,自分の得意分野でしっかりと心と頭を自立させること,と解釈しています。一方,ヨーロッパと日本の文化を比較してみると,個を生きる,という意味で,「自立」を体現している例は日本には少ないように思います。
 生意気な考えのようにも捉えられるかもしれませんが,このような考え方にいたったのには,やはり「師」との出遭いが深く関係しています。今まで出逢った多くの師に男性・女性という性別ではなく,「人」としてどうあるべきかを常に教えていただいたからです。
 私は幼いころから「師」という存在に恵まれておりました。メンターはメンティーを選ぶといいます。まるで,プラトンとアリストテレスのような関係はそんなに頻発しないと思いますが,私はとても運が良いようです。22歳のときに出逢った聖マリアンナ医科大学の医学哲学名誉教授坂本尭先生には,「人生は地道な努力と爆発だ」と教わり,都会の止まり木といわれたカウンセラー井原美代子先生には「あなたが知っていると思っていることは知らないに等しい」と教わりました。要するに,人生死ぬまで勉強ということだと思いますが,それを早いうちに教えていただけたがゆえに,20代半ばから「どのように選択すればよりよいか」ということに悩むことが多くなりました。しかし,そういう時にも新たな師が現れます。「人生決断は今か,先延ばしだ」と某会社社長U氏に教わり,「邂逅」を大切にすることを元M銀行S氏に学びました。
 そして「限られた知識と思考の中で,頭でいくら考えても結論が出ないものは出ない。それならば今目の前にあるものを一生懸命ワクワクしながら取り組もう」という気持ちに達したのです。
 こんなことを考えるようになったのは,小さいころからの教育が影響しているのかもしれません。私が10歳の時から所属しているNGO「子どもによる・未来のための・子どもの運動」という団体があります。そこでの夏休みの企画に「大使館めぐり」があり,当時の西ドイツ大使館へ遊びに行ったことがありました。その際に一等書記官から今でも私の「座右の銘」としていることを教わりました。その一等書記官・50歳半ばのシュルツさんは,少し小太りで丸眼鏡をかけていました。マホガニーの大きな机にどっしり座り,私の手帳にモンブランの万年筆で,ドイツ語でこう書いてくれたのです。「まかぬ種は生えぬ」と。私はこれを,昔は「何事もやらないと芽が出ない」と解釈していました。しかし最近は,「自分がまいた種が生えている。自分で刈り取り,いい種をまきながら生きなさい」と解釈しています。こう解釈するようになってからは,頭でのみ行っていた計算も,自分の心の使い方も随分と変化してきたように思います。
 私は今35歳。30代半ばという年齢は,働き,悩み,生活していくのに鍛錬の時と気づくようになりました。私は特に「失われた10年」世代に入ります。理不尽もよし,思いのままにならないのもよし,心のありようを練習しながら,世の中に役立つ40代を目指していきたいと思います。


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