有限会社 三九出版 - miniミニJIBUNSHI    老後は地方中核都市へ住もう


















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                  老後は地方中核都市へ住もう
                          小松 亮二郎(新潟県新潟市)

 去年古希を過ぎ人生の最終コーナーに差し掛かってきた。
 23歳で証券会社に勤め,最後は勤め先の証券会社が自主廃業,破産という道を辿ったので,最後の4年間は証券業務ではなく破産整理の残務処理で費やした。
 生まれ故郷の仙台市を大学卒業まで一歩も出たことがなく,その間東京には2度程行ったことがある程度の全くの田舎者,就職先には「男子志を立て峡間を出る」の心境で仙台駅を出発したのを覚えている。
 爾来東京で三ケ月の研修の後,名古屋→広島→新宿→福島→兵庫西宮→秋田→新潟→東京本社と,本州の北から南,太平洋側と日本海側の支店を渡り歩いた。
 妻と男子2人の子供を常に帯同しての転勤生活で,自分の家を持つことも儘ならず,また何処の地で転勤生活を終えるのか判らず,最後まで持ち家を持つこともなく赴任地先々での社宅生活を続けた。
 東京本社への転勤命令が出て,結果的には支店勤務は新潟が最後となったが,子供2人は新潟市の中学・高校生だったので本社には単身赴任を余儀なくされた。
 その後,次男が高校を卒業したのを機に新潟の社宅を引き払い,東京で下宿生活を送っていた長男を同居させて家族で杉並区での社宅生活を送った。
 それから3年後に会社が自主廃業となり東京の社宅を二ケ月以内に明け渡すことになり,急遽住まいを探さなければならなくなった。定年後は何処に住もうか(何処に家を持とうか)と薄々と考えている矢先のことだったので,慌ただしい中だったが案外粛々と家探しを進めた。
 新潟での社宅生活は単身赴任の期間も含め7年以上に及んだが,東京で同居していた2人の子供は青春時代を新潟で送った関係上,2人とも卒業後はUターンして新潟市に就職先を見つけ,夫々に部屋を借りて生活をしていた。
 何処かの地に住み着くことも考えたが時間的制約もあり,結局新潟市に家を求めようと決め,子供に適当な物件を探すよう依頼,一ケ月後には購入を決定した。
 会社は自主廃業から破産に向かうことになった。私は現役時代の経験から財産処分の担当としてその任に当たることになり,その処理には4〜5年掛かるだろうと思われたので,購入した新潟の家には妻を行かせて子供達と同居を復活させ,私は復も東京新宿にアパートを借り単身生活に戻った。
 4年を超える二度目の単身生活を終えて新潟市の自宅に戻ったのが7年前である。実際に新潟という地方中核都市に永住してみると,移住時に危惧した大都会の持つ交通の便利さや文化・娯楽施設の豊富さなどを失うことには,全くの杞憂だったことが判った。
 交通事情も最寄りのJR線駅には徒歩で20分,乗車6分で新潟駅に到着する。例えば電機器具を買うにしても大都会のように大型専門店が沢山並んでいないが,その内の大型専門店の1店を切り取ってきたぐらいの大型店は何箇所かあり,車で15分も行けば行き着けるし,デパートも複数あり,中規模スーパーは徒歩圏にある。テレビも東京と略同じ局数があり,病院も網羅されている(しかも何処でも大型駐車場完備)。東京副都心近くに住んでいた頃よりは大幅に生活が便利になった。
 趣味のゴルフも2〜3日後の天気予報を見て仲間を集め,コースを予約。車で30〜40分でゴルフ場到着。しかも格安という便利さは東京暮らしの頃は考えられなかった。
 そんなに良い事ばかりかと言うと,確かに不便と言うか気に入らないこともある。日本海側は天気が悪い日が多く,特に冬は曇天の日が大部分で,太平洋側の生活が長かった私にはからりと晴れる日等は滅多に無いのが気に入らない(尤も新潟市内は降雪量は大したことがなく,積雪量も巷間言われる様な事ではない。旧市内であれば前夜降った雪は道路等では翌日の午前中には解けてしまっている)。
 また,運転免許(自動車)を持たない人は地方都市での生活は不便だと思う。道路網が整備されているので行動範囲が極端に小さくなる。バス路線は張り巡らされているのだが,運行間隔が長く短いものでも20分以上間隔があるのが普通だ。
 巷間曰く,大都会での生活水準維持費用に対し地方中核都市でのそれは90%というのが常識らしい。大都会に居て終生の住処を考えている人は(今自家を所有している方,今就業中の方は別にして)地方都市で出来れば県庁所在地の中核都市をお勧めする。地価は大体大都会の4割程度で当然家賃も安くなる。友達と離れる不安もあるだろうが,7年間住んだ経験から申し上げるなら,地域に溶け込む努力を怠らなければ友達は直ぐに出来てきます。…年金を有効にそして充実して使おうではありませんか。


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