有限会社 三九出版 - 「お父さんが羨ましい」と言わせよう


















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                 「お父さんが羨ましい」と言わせよう

                           川村 昭二郎(滋賀県彦根市)

 苦難の会社生活で工場長を拝命中に工場閉鎖,売却を命ぜられ,労組との死闘,従業員の解雇,土地売却,在庫品の処分とその後に,私の解雇となりました。超過酷な体験でした。
 自由な身になってハローワークの職業訓練事業に参加して,職業訓練校6ヶ月コースに入学し,生産工学科「無接点回路」に挑戦しました。受講生はすべて失業保険受給者で,レベル差は天と地ほどの中で遅れまいと頑張り,卒業できました。文系の私は物理・電子など初めての体験でした。卒業後,校長先生が「諸君は自分の置かれている環境をよく考え,決して宮本武蔵のように三千石の禄を譲らないと言って,仕官できなかった如きことをしないこと。今の世の中では,例えば賃金はどうあれ,公務員の臨時職員はよいのではないか?」とおっしゃった通り職安の臨職に入り,5年間雇っていただきました。そして規定の期間後にシルバー人材センターに加入しました。
 ところが,民主党政府はご存知「事業仕分け」なるもので自民党時代のムダを削るということで,シルバー人材センターも俎板の上に乗せて切り刻んだのです。
 シルバー人材センター発足の原点は,高齢者の生き甲斐と健康維持と共働共助の精神です。提唱者は昭和三十年代に東京大学総長をされた経済学者の大河内一男先生です。一般社会の私的企業の経営を妨害せずに,老人でも出来る軽作業を市民のために有料でお手伝いするものなのです。作業の分野としては家庭の植木の剪定,草取り,大工仕事,公報配布,小学校での児童見守り,食事作り,買い物等,工場での派遣労働,スーパーのカート整理,駐車場・駐輪場管理,介護等,多方面に亘ります。私はシルバー人材センター臨職5年間の中で〈剪定講習〉を受け,剪定技能を習得して剪定会員に入りました。その会員900名のうち50名ばかりが剪定の仕事でお得意様があり,1500件ほど,年間就労しています。平均単価は30,000円弱ですが,全体から言えば売上げの10パーセント程になっています。
 70歳を過ぎても汗を流して喜んで頂ける労働の出来ることに感謝していますし,表題の如く,息子に「お父さんの人生が羨ましい」と言わせたことに喜びを感じております。妻には毎日弁当を作らせていますが,「夫は元気で留守がいい」と妻も喜んでいます。私自身は,長い間ストレスと接待宴会の酒,美食が原因で痛風となり,薬の世話になっていましたが,真夏の酷暑の中で大汗をかく生活によって,主治医から「労働することによって快方に向かっているし,痛みとお別れできている」との診断を受けました。健康になれて,収入が得られて,お客様に喜ばれて,家族も満足なら「三方良し」です。
 70歳の使命とは,社会と共に生き,よき仲間と共働し,家族が円満に行くように努めることだと思います。そうすれば,国の医療費負担や生活保護も必要がなくなります。病気や体の弱い人は無理にしても,出来るだけ多くの皆さんが国や地域を支える側に回るべきと考えます。

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