有限会社 三九出版 - 東日本大震災3.11を忘れるな!


















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☆東日本大震災私は忘れない 

            東日本大震災3.11を忘れるな! 

             吉岡 昌昭(埼玉県さいたま市) 

天災は忘れた頃にやってくる。2011年3月11日午後2時46分,私は住居の近くJR大宮駅西口の喫茶店でコーヒーを飲んでいたが突然の揺れに驚き慌てて表へ出た。3月初めの午後,そこで目にしたのは12~3階建てのビルが大きく揺れ動くのと,人々の慌てた行動だった。夕方帰宅し,TVで事態を知ったが被災地はもとより首都圏では交通機関がストップ,通勤者は帰宅困難で大混乱。しかし悲劇はここからだった。津波が陸地に襲いかかり逃げ惑う住民,それは正に極限状態で,かつて見たことのない大惨事で,死者,行方不明者合わせて2万人を超えた。昔から三陸地域は多くの震災を経験し,それぞれ対策に力を入れ,人々はしかるべく避難訓練を行っている。今回の被災地も古くから何度も被害に遭っており,17世紀以降も慶長三陸地震(1611年),明治三陸地震(1896年),昭和三陸地震1933年3月3日があり,その78年後の2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生したのである。住民は地震・津波で被害を受けるたびに力強く立ち上がり,復興に努力し,新しい生活基盤を築き今日に至っている。
しかし,今回は違った。地震・津波が福島県の海岸線も襲ったのである。そこには東京電力福島第一原子力発電所,第二発電所があり,第一に6基,第二に4基,計10基の原子炉があり,ここでトラブルが発生した。炉は地震で緊急停止すると炉心の余熱で燃料棒が溶けてどんどん温度が上がる。だから容器内を水で冷やさないと炉心が溶けて炉心溶融(メルトダウン)が起こり圧力容器,格納容器を壊し重大な事故となる。原子炉はいったん事故が起こると手がつけられない。対策は「止める。冷やす。閉じ込める。」しかない。この日,東電福島第一,第二原発では地震・津波の影響で全交流電源喪失,冷却機機能が停止,かつ非常用電源も動かず全く制御不能という事態に陥っていた。吉田昌郎所長によると,このままだと2号機はメルトダウンを起こし,事故はチェルノブイリの10倍となると言い,班目原子力委員長の話では日本は3分割,東日本には人が住めなくなるというものであった。政府が住民避難を決めたのはこのような事情があり,放射線漏れが生じ極めて危険な状態だったからである。

2017年3月11日,政府主催の東日本大震災6年の追悼式が国立劇場で行われ,同
時に各被災地でも追悼行事が営まれた。被災後,政府の集中復興期間の5年が過ぎたが,東電福島の原電事故で避難勧告を受け他の土地で住む人達を含め,被災者は約12万人が未だ全国各地で避難生活をしている。若し,地震・津波が東電福島原発を襲わなかったら,また,東京電力が原子炉を守る体制としっかりした事故対策が出来ていたら事情は全く変わっていた。すべては東電福島原子力発電所の事故に起因した。
日本列島は地震列島である。平成14年7月,政府の地震調査推進研究本部では,長期的に三陸北部から房総沖の日本海溝でマグニチュード8級の津波地震が30年以内に20%の確率で発生すると推定した。しかし,東京電力サイドでは“具体的な根拠なし”としてこれを放置していた。だが,実際に地震は起きた。
さて、3.11といえば東日本大震災であるが,私はこれを一歩進め,「3.11は福島原電事故の日」として記憶すべきと考えている。国は昭和31年,原子力3法案制定以来,原子力の平和利用を掲げ原子力発電を国策として進めてきたがその道のりは険しく,また最大の問題は使用済み燃料棒の処理だった。原子力発電の歴史は事故の歴史である。政府,電力会社,学会,メーカーは事故が起こるたびにこれを隠蔽し安全神話を作ってきた。3.11で露呈されたのは,政府,東電,原子力関係者の頼りなさだった。3.11後,日本にある16の原子力発電所はすべて運転を停止したが,現在動いているのは四国電力・伊方で1基,九州電力・川内で2基,そして近く関西電力・高浜で2基の稼働が見込まれている。
世間で「原発は悪か?」という声があるが,この問いに簡単に答えが出る訳はない。他方,原電運転差し止め訴訟が各地で起きており審理する裁判官も大変である。裁判官は「原告勝訴」の判決を矛盾なく書くことも可能だし,また,「要求却下」の判決を理路整然と下すこともできる。しかし,停止中を含め54基ある原子炉が,若し地震・津波で事故が起こればメルトダウン,水素爆発の危険がある。この対策は,常時冷却装置が動き,事が起これば炉を確実に冷やせるように二重,三重と幾重もの対策を講じ安全を図ることである。この装置は機械だけに頼るのではなく,常に人間の目と手で設備を日々点検,安全対策に万全を期すよう関係者は肝に銘じておくべきである。
原子力発電は基本的に危険を内在していることを忘れてはならない。 
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