☆《自由広場》
私の量子ものがたり ①
量子はわたしの「青い鳥」
吉成 正夫(東京都練馬区)
そもそも「量子」とはいったい何でしょうか。物理オンチの私が理解している範囲での話です。量子に関心をもったのは,先に「本物語」に連載した「経済の不確実性」に深く関係しているのではないかとの「発見」からです。あくまでも文系である「わたし」が感じたままの「量子」の「ものがたり」とご理解ください。「わたしの量子ものがたり」と題した所以です。
ところで,本欄の「量子」はパソコン,携帯電話,テレビなどに,「相対性理論」はカーナビやスマホなどのGPSに応用されている技術で,決して絵空事ではなく,わたしたちの日常生活に密接に関連しているお話です
「量子」は物理量の最小単位と定義されています。原子,原子核,素粒子などですが,これには「光」も入ります。「単位」というからには「つぶつぶ」になっているということで光も「光子」という「つぶつぶ」の単位です。また2015年に梶田隆章教授がノーベル賞を受賞したスーパーカミオカンデの「ニュートリノ」も量子です。原子より大きい「マクロ」の世界は,アインシュタインの相対性理論が支配していますが,原子以下の「ミクロ」の世界は,マクロとは異なる物理法則が支配しています。
マクロの物理理論である相対性理論は一人の天才,アインシュタインが構想したもので,特殊相対性理論が1905年,一般相対性理論は1916年に完成しました。
ニュートン力学が「時間と空間は不変で絶対的」としたのに対して,アインシュタインは「時間と空間は相対的」であって,物質の周りの重力場と時空の歪みを関連づけます。そのお蔭で,人工衛星から地上の位置を正確に測定できるようになりました。
一方,量子論ですが,ドイツ生まれのマックス・プランク(1858~1947)が,1900年に,物理学に「とびとび」という考え方を持ち込みました。それまでは物理的事象は連続的に変化するのが当然とされていました。この「とびとび」が量子のはじまりですから,プランクは「量子の父」と言われています。しかし彼自身は,物理量を不連続なものと捉えることになじめなかったそうです。 アインシュタインは, プランクのエネルギー量子仮説にヒントを得て,光は波であると同時に粒子であるとして,1905年に「光量子仮説」を発表しました。 量子理論の先鞭をつけたのはアインシュタインだったのです。この功績でアインシュタインはノーベル物理学賞を受賞しました。
デンマーク生まれのニールス・ボーアは,コペンハーゲン理論物理学研究所の初代所長となり,ハイゼンベルグ,パウリ,ディラックなどの多くの俊英を集め,1920年
に量子論を完成しました。そこで得られた量子の理論は,それまでの物理法則とはまったく異なるルールに支配されていたことが明らかになりました。
このように20世紀の二大物理学のピラミッドは,20世紀の初めに天才が相互に関係しあってつくり上げたものです。アインシュタインは量子力学の端緒を開いたにもかかわらず,その後発展した量子力学の「あいまい」な部分を嫌い,なにか別の説明変数が隠れているに違いないと考えていたようです。量子などミクロの物質が「波」であるのは認めても,物質の未来は「確率的」に決まるということについては,量子論の俊秀学者たちも侃々諤々,大騒ぎです。特にアインシュタインは, 「神はサイコロ遊びを好まない」という有名な言葉で量子論を批判しました。
また,観測される前はさまざまな状態の「重ね合わせ」になっていて,観測された途端に,波が収縮して「粒」になる(コペンハーゲン解釈)とは,わたしたち素人は勿論,物理学者でさえ想定を超えた理論です。こうした理論に,どのように折り合いをつけていくのか, 宇宙レベルでは, 私たちの四次元世界ではなく, 多次元世界があるとか,多世界に分岐していくパラレルワールドがあるなどの解釈もあるようです(「図説 量子論がみるみるわかる本」佐藤勝彦編著,PHP研究所,2009年)。
7月13日放映のNHK BSプレミアム「コズミックフロント」では宇宙の構造の理由を,人間の存在に求める「人間原理」の考え方を紹介していました。
ここまでくると,わたしなどは「立ち入り禁止」のロープを張って,これ以上の議論に背伸びしてついていくのは自制した方がよいと考えてしまいます。ただ少なくとも,ここまでの量子論は厳密な実験と数学の検証の中で事実と認められていることは確かです。アインシュタインも量子論そのものは認めていました。電子などの素粒子が変幻自在に動き回り,「いい加減さこそが自然の本質」と説明されています(同上)。わたしたちの世界を構成している超微小物質が「不確定原理」や「あいまいさ」が支配しているということは,「不確実性の経済」を考えるうえで大いに参考になりそうです。経済などの人間行動を解明する「カギ」を最新物理学の中に見つけたのかもしれません。「やあ,わたしの青い鳥,ここにいたのか」と嬉しくなってしまうのです。
私の量子ものがたり ①
量子はわたしの「青い鳥」
吉成 正夫(東京都練馬区)
そもそも「量子」とはいったい何でしょうか。物理オンチの私が理解している範囲での話です。量子に関心をもったのは,先に「本物語」に連載した「経済の不確実性」に深く関係しているのではないかとの「発見」からです。あくまでも文系である「わたし」が感じたままの「量子」の「ものがたり」とご理解ください。「わたしの量子ものがたり」と題した所以です。
ところで,本欄の「量子」はパソコン,携帯電話,テレビなどに,「相対性理論」はカーナビやスマホなどのGPSに応用されている技術で,決して絵空事ではなく,わたしたちの日常生活に密接に関連しているお話です
「量子」は物理量の最小単位と定義されています。原子,原子核,素粒子などですが,これには「光」も入ります。「単位」というからには「つぶつぶ」になっているということで光も「光子」という「つぶつぶ」の単位です。また2015年に梶田隆章教授がノーベル賞を受賞したスーパーカミオカンデの「ニュートリノ」も量子です。原子より大きい「マクロ」の世界は,アインシュタインの相対性理論が支配していますが,原子以下の「ミクロ」の世界は,マクロとは異なる物理法則が支配しています。
マクロの物理理論である相対性理論は一人の天才,アインシュタインが構想したもので,特殊相対性理論が1905年,一般相対性理論は1916年に完成しました。
ニュートン力学が「時間と空間は不変で絶対的」としたのに対して,アインシュタインは「時間と空間は相対的」であって,物質の周りの重力場と時空の歪みを関連づけます。そのお蔭で,人工衛星から地上の位置を正確に測定できるようになりました。
一方,量子論ですが,ドイツ生まれのマックス・プランク(1858~1947)が,1900年に,物理学に「とびとび」という考え方を持ち込みました。それまでは物理的事象は連続的に変化するのが当然とされていました。この「とびとび」が量子のはじまりですから,プランクは「量子の父」と言われています。しかし彼自身は,物理量を不連続なものと捉えることになじめなかったそうです。 アインシュタインは, プランクのエネルギー量子仮説にヒントを得て,光は波であると同時に粒子であるとして,1905年に「光量子仮説」を発表しました。 量子理論の先鞭をつけたのはアインシュタインだったのです。この功績でアインシュタインはノーベル物理学賞を受賞しました。
デンマーク生まれのニールス・ボーアは,コペンハーゲン理論物理学研究所の初代所長となり,ハイゼンベルグ,パウリ,ディラックなどの多くの俊英を集め,1920年
に量子論を完成しました。そこで得られた量子の理論は,それまでの物理法則とはまったく異なるルールに支配されていたことが明らかになりました。
このように20世紀の二大物理学のピラミッドは,20世紀の初めに天才が相互に関係しあってつくり上げたものです。アインシュタインは量子力学の端緒を開いたにもかかわらず,その後発展した量子力学の「あいまい」な部分を嫌い,なにか別の説明変数が隠れているに違いないと考えていたようです。量子などミクロの物質が「波」であるのは認めても,物質の未来は「確率的」に決まるということについては,量子論の俊秀学者たちも侃々諤々,大騒ぎです。特にアインシュタインは, 「神はサイコロ遊びを好まない」という有名な言葉で量子論を批判しました。
また,観測される前はさまざまな状態の「重ね合わせ」になっていて,観測された途端に,波が収縮して「粒」になる(コペンハーゲン解釈)とは,わたしたち素人は勿論,物理学者でさえ想定を超えた理論です。こうした理論に,どのように折り合いをつけていくのか, 宇宙レベルでは, 私たちの四次元世界ではなく, 多次元世界があるとか,多世界に分岐していくパラレルワールドがあるなどの解釈もあるようです(「図説 量子論がみるみるわかる本」佐藤勝彦編著,PHP研究所,2009年)。
7月13日放映のNHK BSプレミアム「コズミックフロント」では宇宙の構造の理由を,人間の存在に求める「人間原理」の考え方を紹介していました。
ここまでくると,わたしなどは「立ち入り禁止」のロープを張って,これ以上の議論に背伸びしてついていくのは自制した方がよいと考えてしまいます。ただ少なくとも,ここまでの量子論は厳密な実験と数学の検証の中で事実と認められていることは確かです。アインシュタインも量子論そのものは認めていました。電子などの素粒子が変幻自在に動き回り,「いい加減さこそが自然の本質」と説明されています(同上)。わたしたちの世界を構成している超微小物質が「不確定原理」や「あいまいさ」が支配しているということは,「不確実性の経済」を考えるうえで大いに参考になりそうです。経済などの人間行動を解明する「カギ」を最新物理学の中に見つけたのかもしれません。「やあ,わたしの青い鳥,ここにいたのか」と嬉しくなってしまうのです。
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