有限会社 三九出版 - “みそひともじ”に出会って


















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“みそひともじ”に出会って
坂元 恵子(埼玉県越谷市)


私が,“みそひともじ”に出会ったのは十代の頃。入江泰吉氏の「万葉大和路の風景」に心動かされ,写真と一体化された以前教科書で学んだ歌が,全く異なる歌となって飛び込んできたのでした。“みそひともじ”の何とも言えない心地好いリズムと奥深い情景の捉え方,素直な表現力,そしてある不思議な言葉の力を感じ 若い私は吸い込まれるように夜更けまで読み漁り,暗記,暗唱の楽しさも加わり,いつしか万葉集の虜になっていたのでした。かと言って万葉集について専門に勉漁 研究しようとは思いませんでした。古代の人々と自分なりに会話を楽しめることに癒しを感じていたのだと思います。
その頃,初めての独り旅に選んだ地は奈良,飛鳥。正に万葉の舞台であり,多くの素晴らしい歌が詠まれています。何か深い縁(えにし)を感じながらの旅をして,万葉人の作品に触れるだけでなく,自分自身の生きている証を書き記すことの機会をいただいたのでした。乏しい表現力でも心素直に,“みそひともじ”という言葉をかりて残すことで,たわいの無い日常の事までも,一首ごとに凝縮されて記録となります。ときには,日記のようであり,また作品として外に出ることもあります。
今回,我が家で約二十年間,家族として共に暮らした雌の柴犬との思い出を纏(まと)めるにあたり,長文ではなく,三十一文字で,愛犬の一生を表現することに決め,出逢いから数多くの出来事を鮮明に思い出し,書き留め、それを一冊の本として上梓することができました。その過程で,三十一文字ということで,字数が少ない分,わかりやすく表現できることにも気付きました。少々,言葉を選ぶことはありますが。その時の情景や様子,交した言葉までが,文字にすることによって残っていきます。後々の人にも伝えることが出来ます。万葉人のように優雅で独特の言い回しはできないけれど,有りっ丈の心を“みそひともじ”に託して日々の忙(せわ)しない自身の心が癒されるように詠み続けていこうと思います。
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