有限会社 三九出版 - 「日本語」って不思議な言葉ですね!(その6)


















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☆《自由広場》 
   「日本語」って不思議な言葉ですね! (その6) 

           松井 洋治(東京都府中市) 

 いつの間にか,この連載も(その6)になったが,拙文をお読み戴くたびにご感想やコメントをくださる「日本語学」ご専攻のG教授から,(その4)で取り上げた「聞きなし」の「ホトトギス」の「てっぺんかけたか」は関西地方での言い方で,「“特許許可局”の方が,東京アクセントには合致する」と教えられた。また,前号の「やっぱし・やっぱ」については,「外国人から日本語の“やはり、やっぱり”などの内,どれが正しいかを訊かれた日本人が「やっぱ,それは“やはり”じゃないですか,やっぱし」と答えたところ,外国人が「????」となってしまう四コマ漫画があったそうで,私には,勿体なくも,文字通り「貴重」で「有難く,得難い」読者である。
 ところで,本稿を書き始める今日は,「平成」最後の正月も半ばを過ぎてしまったが,「新年」に関して思い浮かぶ「日本語」について,あれこれ取り上げてみたい。
 先ずは「年賀状」。これは毎年,暮れの郵便局窓口で聞かれる言葉であるが「年賀状を50枚ください」はおかしい。言うまでもなく,「新年の挨拶を書いた手紙」が年賀状で,売られているのは「年賀はがき」である。一方,今年の賀状にも数通あったが,「新年明けましておめでとうございます」という挨拶,これは間違いである。「新年、」と新年の次に「、」(読点)を入れれば,まだ許されるが,「明けまして」で「明けた」のは「新年」ではなく「旧年,前年,昨年」なのだ。つまり「明ける=開ける」ではなく「終わる」という意味。「夜明け」は「夜が明けた(終わった)朝」,「休み明け」は「休日が終わった翌日」であることを知っていれば,「新年になりましたね。旧年が無事に明けまして,おめでとうございます」が正しいことに気づくであろう。
 また,ここ数年増えたのが,パソコンでの「年賀メール」である。当連載(その2)で触れた「アケオメ、コトヨロ」(明けましておめでとう! ことしもよろしく!)にも驚かされるが,意外と気づていないのが,同じ内容のメールを「BCC」(ブラインド・カーボン・コピー。受信者には同じメールが誰に送られたかが分からない送信方法)で送る際,「各位殿」と書かれているケースが非常に多い。しかし「各位」だけで「皆様,皆様方」の意であり,「殿」を付けるのは「皆様殿」となる。しかも,パソコンでの「年賀メール」は,「印刷したければ,そちらで印刷しなさい」的な手抜き感が
感じられて,私には馴染まない。印刷だけで,手書きの寸言が添えられていない賀状も,書きたくても手が震えて書けない方の分は別として,余り嬉しくない。
 私が子供の頃の正月の遊びといえば, 屋外では,男の子は「凧揚げ」か「こま回し」,女の子は「羽根つき」,屋内では「カルタ」か「福笑い」「すごろく」と決まっていた。   
 その中の「カルタ」について,少し触れてみたい。「カルタ」と「カタカナ表示」にしたのには訳がある。この言葉は,元々は「日本語ではなくラテン語」だったからだ。紙は中国の蔡倫という人によって発明され,中世になってアラビアを経由してヨーロッパに伝わった。紙(パピルス,ペーパー)を表すギリシャ語の「カルテース」という言葉が,ラテン語,ポルトガル語では「カルタ」となって,日本にも伝えられ,「歌留多」の字が当てられ,平安時代からの「歌合わせ」の遊びを示すようになったようだ。既にご存知の方も多いに違いないし,勘のいい方は気づかれたと思うが,この「カルタ」が,ドイツ語では「カルテ」と呼ばれ,医者が患者の病状を記すのに用いる紙を表すようになった。英語では「カード」と言われ,現在でも「キャッシュ・カード」,「ポイントカード」など盛んに使われている。因みにフランス語では「カルト」で,フランス料理で,コース料理ではなく,「ア・ラ・カルト」と呼ばれるのが,1品ずつを書いた献立表(カルト=メニュー・カード)の中から,「自分の好みで選べる一品料理」のことになったのである。
 料理ついでに「おせち料理」に触れておこう。単に「おせち」とも言われるが「御節料理」,即ち,本来は「季節の変わり目ごとに(「節会(せちえ)」の度に),神に供える節句料理」のことで,後に正月のものだけを「おせち」というようになった。
いずれも「縁起」を担いだ意味合いを持ち,例えば「黒豆」は「マメに暮らせるように」願い,「数の子」は「子孫繁栄」を祈り,「田作り」は「五万米」(ごまめ)ともいい「豊作」を願うもの。「昆布」は「喜ぶ」,「鯛」は「めでたい」など「日本語」だからこそ通じる「しゃれ」の「そろい踏み」である。また「雑煮」は,「年神様(としがみさま)に供えた食材を雑多に煮たもの」の意で,古来,人々は,神様の食事(供え物)と同じ物をいただくことで,神様の力を自分の中に取り入れようとしたのであろう。新年特集(?)の最後は「ぽち袋」。折り畳んだ紙幣や硬貨を入れて渡す小さな祝儀袋。この「ぽち」は上方言葉で「小さいもの、可愛いもの」のことらしい。 
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