有限会社 三九出版 - 「日本語」って不思議な言葉ですね!(その8)


















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☆《自由広場》   
   「日本語」って不思議な言葉ですね!(その8) 

           松井 洋治(東京都府中市) 

 最近は,とんと聞かなくなってしまったし,ある世代以上の方にしか通じない話かもしれないが,(いにしえ)の昔の武士の侍(さむらい),山の中なる山中で,馬から落ちて落馬して,女の婦人に笑われて,それが無念で残念で,赤い顔して赤面し,家へ帰って帰宅して,仏の前の仏前で,自分の妻の細君に,遺言めいた遺書を書き, 短い刀の短刀で,腹を切って切腹し,死んであの世へ行っちゃった。」という日本語特有の “言葉遊び” をなさった経験がおありの方も多いに違いない。
 私が最初に覚えたのは,多分,中学1~2年の頃だったと思うが,上記の約半分程度(太字部分だけ)であるが,その後,友人や兄たちから教えられたり,自分で加えたりした結果,ここまで増えてしまった。しかも,今からでも「山の中なる」の前に「暑い真夏の猛暑日に」とか「夕闇迫る日暮れ時」など,もっともっと増やせそうな気がする。スマホのゲームアプリでしか遊ばなく(遊べなく?)なった若者には「言葉遊びなんて,くだらない!」と一笑に付されるのかもしれないが,彼らにしても「今朝の朝刊」,「十日の日」,「後で後悔する」など,気づかずに使っているはず。「二重表現」とか「重ね言葉」とでもいうのであろうが,恐らく,昔の人が,手紙や書類などで「重複した意味の言葉を使わないよう」にと,「悪い見本として,面白おかしく並べた」ものなのかもしれない。その他にも,「元旦の朝」,「踊りを踊る」,「焼いた焼き魚」など,案外無意識で使われているようだ。
 また,これらとは多少ニュアンスが異なるが,ほとんど気にもせずに使っている言葉の中にもおかしな(不思議な)言い回しがある。「上に上がる」,「学校の学食」,「大豆豆(だいずまめ)」,「いちばん最初」,「排気ガス」など,日本語を学ぶ留学生に質問されたことがある。その時にも,この「上に上がる」,「いちばん最初」などは,より丁寧に,強調する表現だと解釈すれば,間違いとは言えないのではないかと答えた。ただ,「排気ガス」は,手元の国語辞典によれば,「熱機関などで,仕事をし終わって排出される不要の蒸気またはガス」とある。つまり,厳密に言えば「排気=ガス」なのだから「排気ガスという言い方はおかしい(間違っている)」ということになるのかもしれない。しかし,「地球温暖化」や,その主原因とされる「温室効果ガス」の議論では,何の抵抗もなく,必ず「自動車の排気ガス」が “やり玉” に挙げられる。
 ただ,最近は「排気ガス」ではなく「排出ガス」と言うケースが増えているのも事実だ。誰かが「おかしい,間違っている」と指摘したせいかもしれない。それにしても,自国語でありながら,日本語って本当に難しく,実に奥の深い言葉である。
 ところで,「重ね言葉」というと,一般的には,これまでにご紹介した「二重表現」的なものよりも,次にご紹介する「早口言葉」の例として使われるものが有名である。
 下記は,喜寿を迎えたこの歳まで,折に触れて書き溜めた「重ね言葉」の中から選んだ「お気に入りベスト10」である。是非とも,声に出して音読し(これも「重ね言葉」だが),日本語の美しさ,面白さを,体感なさっていただきたい。
・瓜(うり)売りが 瓜売りに来て 瓜売れず 売り売り帰る 瓜売りの声
・月々に 月見る月は多けれど 月見る月は この月の月
・桜咲く 桜の山の桜花 咲く桜あり 散る桜あり
・人多き 人の中にも人ぞなき 人になれ人 人になせ人
・人にして 人を知らざる人多し 人のことをば 学べ人びと
・心こそ 心迷わす心なれ 心に心 心許すな
・たたずむな 行くな戻るな 居すわるな 寝るな起きるな 立つな座るな
・さしかかる 来かかる足に 水かかる 足軽おこる お軽こわがる
・声黄色 かっぱは黒し 雪白し ここは赤坂 青山へ行く
・人の非は 非とぞ憎みて 非にすれど 吾が非は非とぞ 知れど非とせず
 考えてみれば,私は、浪人の1年も含めて,最低でも14年間は学んだはずの英語を筆頭に,外国語(特に「会話」)には全く疎いのだが,「俳句,和歌,どどいつ,回文,重ね言葉」など,自分の国の言葉で,これほどまでの「遊び」ができる言葉は,恐らく世界中のどこにも存在していないと信じているし,日本人に生まれたことを,本当に幸せだと感じている。
 いずれにせよ,今回は,日本語の美しさ,素晴らしさ,楽しさ,奥深さ等を,再認識していただきたく,これ以上余計なことを書くのは差し控えたい。
 それよりも,上記「枠」内の,私が選んだ「重ね言葉、早口言葉ベスト10」を,是非もう一度,声に出して読み返していただきたい。 

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