有限会社 三九出版 - 巨大災害への備えは心である


















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☆東日本大震災私は忘れない

            巨大災害への備えは心である

            鈴木 重範(静岡県清水町)

あの「3.11」から5年の歳月が近づいている平成28年新春,私の夢枕に「国破山河在 城春草木深 感時花濺涙 恨別…」が,そして朦朧とした記憶の風景の中で先祖を尋ねている自分? そこは故郷でも,自分の行ったことのある街でもない場所が現れた。「春望」の一節が想い出の如く初夢となったのは何か意味があるのだろうか。
静岡県内の小さな町で「災害ボランティアコーディネーター(以下VC)活動」に関わり,8年目となる新年を迎えた。この災害VC活動は,静岡県が10年前から,各市町村の災害時にあってボランティアセンター運営をするコーディネーターの養成を続けているもので,現在では各市町村単位に災害VC団体が組織されている。最近では県・町等行政との支援連携を機動的にするために各種の行事があり,防災に関する講演会,防災訓練等が頻繁に行われている。昨年は東日本大震災の被災地から被災した方々で「語り部」の活動をされている人達の実体験,教訓などを聞き,それを共有する機会を多数持つことができた。また9月には被災地の現状と復興の状況を実際に視察する研修会にも参加した。石巻市,女川町,南相馬市等の現場の様子を自分の五感で体験したことで,この大震災が自然の力の膨大な事実を知らしめられた。そして人類が創造した原子力放射能の脅威を目の当たりにした。いろいろ考えさせられた昨年であったが,この新春の初夢はその所為でもあったのか。何とはなしに正夢かも…
静岡県は,平成24年8月,内閣府「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の報告を受けて,平成25年6月「静岡県第4次地震被害想定(第一次報告)」を策定した。新たな想定である。この想定は南海トラフ巨大地震の想定震源域について対象地震を,レベル1の地震・津波とレベル2の地震・津波に区分したことで,それぞれの被害想定を詳細にしたものである。この「第4次」を基に各市町村は地域防災計画を早急に策定して,減災目標を立案し,地震・津波対策アクションプログラムとして想定される犠牲者を今後10年間(平成34年度まで)で8割減少させることを目指す,としている。私たちの災害VC活動に於いても上記第4次想定による町の防災計画と共有する行動計画によるボランティア活動の方策を会員各々で学習している。
今年は,阪神淡路大震災21年,東日本大震災5年となる。この歳月の経過は,被災地や被災者が抱える問題に対する意識を希薄にする傾向がある。被災地の復興への取り組みが新聞等のメディアに取り上げられることが少なくなっているのも事実である。人々も,東日本大震災は過去の災害であるとして,忘れ去ったかのような日常が続いている。一方,プレートテクトニクス(プレート理論)によると,今日,日本列島は大変危険な時期に入ってきていると,地震専門の学者が声を上げている。地震,噴火,洪水,竜巻等の自然災害は日常生活の中でいつ発生するか解らない。
こうした中で,大規模災害に対応する訓練や講演会が身近に存在するボランティア活動は必ずや役立つものと思っている。訓練や講演によりこの危機的な環境下にあることを意識する。このことが防災の第一の心構えである。また,災害発生に遭遇した時は「自分の命は自分で守る(自助)」が最初の行動でなければならない。これができるかどうかは命の行方に関わってしまうのだが,これを頭で理解していても咄嗟の時には行動に移すことができない人が多い。それで常日頃からその訓練をしておくことが必要不可欠なのである。――常日頃からの訓練,これは絶対に忘れてはならない。
ここで,私たちボランティアが被災地を視察した際に被災者の方たちから感じたことを,後日採ったアンケートから抜粋して紹介したい。
◌女川,南相馬の津波・原発被害の悲しさを目の当たりにし,まだまだ復興は遠く,大変な思いの中での生活を余儀なくされていることに深く考えさせられた。
◌被災者の「生の声」から,今時点での叫び,思いを知って大きな衝撃を受けると同時に,強く生きる力,負けない心,前向きに取り組む姿に感動した。
◌被災した現場の復興の取り組みは,これから何十年も続ける必要があり,日本国民全体で復興を支援し続けることだ。
その他,異口同音であるが,被災地現場での体験は被災者の立場に共感するものばかりである。最後に私が女川町観光協会のOさん(30歳)から聞いた私たち視察者に期待したいことというのを記したい。「義援金より,女川町を見に来てください。そして全国の人たちが現地の様子を知って下さい。できればこの町のお土産品を買ってください。こうした声を近隣の人たちに伝えて欲しい。」
今年こそは復興がより進展することを願望すると同時に,大災害に対応する心身の研鑽に励みながらボランティア活動を続けたいと思っている。
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