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世界の人々を見る目
福原 卓彦(千葉県我孫子市)

今この歳になって,自分史を振り返ってみると,自己の意思に因らずに影響を受けた,大きなターニングポイントは2つあったように思う。一つは幼少時に足首骨折による生涯にわたるハンデをもったこと,二つ目はそのことが根底にあって性格も行動も内向的,消極的になって,ごくごく狭い世界の中だけで高校時代までを終わってしまったが,大学に入り,海外経験豊富な教授陣の授業を受け,また近所に住んでいたイギリスの宣教師との接触から,海外への関心が強まり,外国での仕事に強い憧れを持って会社に入ってからの,都合13年にわたる海外生活は,自分の性格や生き方を,大きく変えた二つ目の要因になっている。

最初のニューヨークでは部門責任者だったせいもあり,激しい競争社会で必死に英語に取り組んだが,全世界の英語がそれぞれの特徴をもったまま生きていることを実感し,下手な英語に自信を持つと同時に,アメリカでの生活では,国土の広さもさることながら,社会との関わりの多様さ,人間の思考マインドの自由さに驚かされた。
次のブラジルでは,“明日のことを思い患わず”というラテン気質の真っただ中で,本気で喧嘩する必要のない,人間性の本質のようなものを感じて,競争社会の持っている危うさを否定する人々の生き方に,共感することが多かった。
第三のノルウェーでは,厳しい自然の掟に逆らうことなく,動植物の自然の移り変わりに順応して,人間と調和させながら,毎日の生活を送る生き方は,科学技術の発展ばかりを追い求める自分達に,一石を投じた生き方ではないかと感心させられた。
その他短期長期の出張では中国,東南アジア諸国,中近東,ヨーロッパを回っているが,ある意味では,すっかり日本人離れの感覚となってしまっているため,どの国に行っても違和感を持つこともなく,すぐ愛着を覚え,この国に住んでみたいなとの思いを抱いてしまうのであった。

しかしながら,今も日本に住み,地域社会や同窓会の集まりにどっぷりと浸かり,まめに顔を出しているのは,古い日本人の殻を破りきれない自分と,やはり女房の存在があることは否めない。
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